役員談話室

興味本位の濫読・雑読

2008年06月09日

当社では、毎月、部下のみなさんから報告をもらっています。報告をもらっているお返しに、リーダーからも活動報告をしようと考え、「事業部長レポート」なるものを、毎月発行し始めました。
「レポート」の最後に、付録として、Books情報とGourmet情報を付録としてつけています。
宗定専務理事に、お見せしたら、Coffee Breakに掲載せよとのこと。恥ずかしながら、まずはBooks情報を、全国に公開します。偏見がかなり入っていますし、ジャンルに偏りがありますので、その点、ご勘弁ください。

(4月号)

  • 石原慎太郎「オンリー・イエスタディ」幻冬舎
    新銀行東京で苦戦している石原慎太郎の書き下ろしである。彼が青年期・壮年期に出会った大物人物を紹介している。大物らは、みな、感性豊かであり、自分流をしっかりと持っていると感じた。人格を形成する上で、先輩、同輩がとても重要なんだなあと改めて思わせてくれた。また、書き出しの部分がすばらしいと思った。何歳になっても仕事を続け、仕事を通じての他者と関わり、それによって男として磨かれ成熟していくことが重要だという。最近、小生も、そう思うようになってきた。
  • 若林亜紀「公務員の異常な世界−給料・手当・官舎・休暇−」幻冬舎新書
    以前、近くのTSUTAYAで「独身手当」という本を手にしたことがある。「家族手当」をもらえない独身には「独身手当」が用意されているという、噴飯ものの公務員の世界を書いた本である。そのときには買わなかったが、この本は買った。手にしてみると、著者が「独身手当」のそれと一緒であることにびっくり。美人ジャーナリスト若林亜紀さんが著者なのであった。この本は、公務員の絶望的な(納税者にとって)搾取状況を暴いている。中国の公務員もひどいが、日本の公務員もひどい。組織が腐れば、どこまでも腐るということを証明してくれている。でも、なんとかして欲しい。高額納税者は、本当に、そう思っているのだ(我が家は3人で構成されているが、全員独立しており、3人とも納税者なのである)。
  • 知的生活推進班編「一流の客といわれる技術」青春出版社
    読んでいるところを見られたくない本である。靴の選び方、スーツのあつらえ方、レストランでのマナー、バーテンダーとの会話の仕方など、とても参考になる。大人の時間を充実させるためには、必要なことである。一読をお奨めする。¥500。

(3月号)

  • 藤本隆宏「ものづくり経営学」光文社新書
    野中郁次郎氏と同じ歩調をたどる東京大学の方である。日本企業の強みを分析、ものづくりの強さの源泉を追求している。B to Bの「インテグラル(摺り合わせ)」が日本企業の強みであるというのが結論のようであるが、ちと、過去のことになっているような気がしないでもない。でも、勇気が出てくる本なので、一読をお勧めする。
  • 柘植久慶「断末魔の中国−粉飾決算国家の終末−」学研新書
    北京のスモッグを経験してから、急に中国に興味が湧き、手にした本。柘植さんは、1942年生まれのベテランジャーナリスト。長い間、中国を見てきている。地方官僚の汚職が第一の問題であるという。工場の環境汚染も、事故も、工場経営者が地方官僚に金を握らせれば隠蔽されてしまう。官僚が太り、農民がやせ衰える。その結果、環境汚染は深刻。とくに河川と河口はひどく、食物は毒だらけ。北京の水道水は絶対に飲めない。ペットボトルで済まそうとすると、その半分がニセモノだという(水道水を詰めただけ)。極端な「拝金主義」と大きな「格差」。マナーの悪さ。北京オリンピックを開く資格はない、と柘植さんはいう。
  • 歴史の謎を探る会編「江戸の食卓」河出書房新社
    江戸の食文化が詳しく記載されている。ひき割り納豆は、江戸時代に生まれたらしい。江戸時代、納豆は味噌汁に入れていたので、味がよく汁になじむようにひき割りにしたとか。「鰻の蒲焼丼」が生まれたきっかけとか。「くさや」がなぜ生まれたのかとか(塩不足による)。薀蓄が好きな人にお奨めである。

(2月号)

  • 勝間和代「お金は銀行に預けるな」光文社新書
    「自分の資産は自分で守る」というスタイルで書いた本。前に紹介した森永卓郎「年金崩壊」とよく似ているが、本書の方が、理論的できっちりしている。「お金を銀行に預けてると、高いリターンを得るという機会を逃している」というのが著者のいいたいところだと思うが、その原因を、日本人のワークスタイルから説き起こしているところが新鮮である。とっつきやすい参考書として是非お奨め。お勧めは、とくに若い世代の人。20歳代からですよ。
  • 石渡嶺司「最高学府はバカだらけ」光文社新書
    最近の大学生のアホバカぶりを痛快に描いている。日本大学で非常勤講師として講義を行なった小生には、とても身近に感じられ、「そうだ、ソウダ!」と言いたくなる本である。でも、著者が言いたいのは、「大学職員のバカさ加減」。特殊な環境に住む人類の傲慢さ、あわれさを紹介している。日本の大学は、東大、京大、早稲田、慶応を含めて、駄目だね。教授になんかなるもんじゃないよ、皆さん。

(新年号)

  • 児玉光雄「イチロー思考vs松坂思考」幻冬舎
    一流の人間が、一流をキープするには、どのようなことを行なっているかを学ぶことができます。繊細で内的志向の強いイチローと「リベンジ」に象徴される対人志向が強い松坂との対比が面白く読めます。常に変わろうとしている二人、問題を見つけ克服しようとする努力。会社の経営と同じに感じました。またひとりのプロとして如何に生きるべきか、知財のメンバーでも同じだと思います。常に考えていないと取り残されますね。
  • 椎名誠「玉ねぎフライパン作戦」角川書店
    夕刊フジに連載されていたものを本にしたものです。2004年6月から2006年9月までの2年間の食事記録が記載されているようなものですが、実に多くのものを食べてきたんですね。毎日毎日の食事がいかに重要かがわかります。自宅で簡単にできる料理が数多く紹介されていますので、退職後、自宅での地位確保の必要性が生じたときの「重要参考書」になりそうです。

(12月号)

  • 森永卓郎「年収崩壊」角川新書
    ひとことで言うと、資産運用の本です。公的年金があてにならないので、自分を守るために投資をしようと呼びかけています。ぜんぜん難しくないので、退職金の運用をはじめようとしている方に、お奨めです。
  • 小笹芳央「会社の品格」幻冬舎
    「国家の品格」がベストセラーになったので、それにあやかって「・・の品格」という本が、やたらに出ています。これもその流れに乗ったものですが、けっこういいことが書かれてあります。経営層、リーダー層には、ちょっと襟を正したい気持ちにさせる本です。

(10月号)

  • 池上彰「そうだったのか中国」集英社
    著者は元NHK報道記者で、1950年生まれ。ほぼ同世代である。同世代の仲間が、我等が生きてきた時代を振り返り、歴史的事実として種々の出来事を紹介している。小学校時代、中・高校生時代、大学生時代、若き社会人時代。すべての時代に、「中国はこうだったのか」と回想でき、とても楽しい。「難しく思われがちな社会の出来事を、なるべくわかりやすく噛み砕く」というスタンスの著者の真骨頂が現れている。同世代の方に、お奨め。
  • 中島美代子「らも 中島らもとの三十五年」集英社
    これも同世代を生きた仲間の本である。「中島らも」は変な奴で、気にはなっていたが著作を読んだことはなかった。先日、テレビに、らもの妻である著者が出てきて、「へぇ〜、面白い夫婦だったんだなぁ」と思っていた。その本がでた。尋常な夫婦とはまったく異なる「飛んでいる夫婦」である。こんな生き方もいいなぁと思った。中島美代子さんは1951年生まれ。

(9月号)

  • 椎名誠「たき火をかこんだ、がらがらどん」小学館
    著者とは、かれこれ25年近くの付き合いになる。出逢って以来、5歳年上の同氏は、我が人生の兄貴であり、よき先輩であった。入社して以来、小生が書いた論文原稿のすべてを、全部書き改め、「どうだ、すごいだろう」と勝ち誇る上司の影響で、すっかり「書けない症候群」に陥っていた小生を救ってくれたのが同氏である。こんな文章があるのか!(昭和軽薄体)と目からウロコが落ちた。「ニタリノフの便座」がその書であったが、以来、目が覚めたように、文章が書けるようになった。また、子育てでリードしてもらったのも同氏の名著「岳物語」であった。息子の育て方を書から学び、「個」を尊重して育てあげた自負がある(変な子だと世間はいうが)。旅や食べ物でも多くを学んだ。そんな椎名誠氏が、人生の終盤に差し掛かって回想エッセイを集めはじめた。そのひとつが、この本である。同氏には、最後まで、ご指導願いたいものである。

(8月号)

  • 浅井隆「2010年の衝撃」第二海援隊
    著者は日本の「国家破産」が必ず来るというのを売りにしている人物である。あまり信じたくないが、自己資産のリスクマネジメントを行うために、読んでおいてもいい本である。「資産を円のみでもつのは危険。外貨保有高を増やせ」との著者ご推薦である。
  • マーク・B・フラー/ジョン・C・ベック「サムライ人材論」ダイヤモンド社
    上記の本とは正反対の内容。かならず再生する日本、その理由はなにか、を説いている。副題に「アメリカがうらやむ日本企業の強み」とあるとおり、アメリカから見たら、日本人はすばらしい人たちに見えるらしい。日本人の中には、いまだに「武士道」が底流にながれているという。でも、いまの十代、二十代、三十代をみていると、「武士道」を感じることはできない。ああ、こんなことを言うとは、オレも年老いてきたのだなあ。
  • パコ・ムーロ「なぜ、エグゼクティブはゴルフをするのか?」ゴマブックス
    本屋に横積みにされている話題の本。表題に惹かれ、思わず買ってしまったが、とても後悔している。表題の部分は、たったの5ページ。不当表示で訴えたいくらいである。本レポートの読者諸兄は、十分中身を確かめた上で、購入を判断すべし。

(6月号)

  • 早坂隆「世界の日本人ジョーク集」中公新書
    日本人に関するジョークのみならず、世界の国々の人がでてきます。とても面白く、読んでいながら、ニヤっとしてしまいます。ひとつだけ例をあげます。 (世界で最高の生活)「イギリスの家に住み、アメリカで給料をもらい、中国人のコックを雇い、日本人の妻をめとること」。 (世界で最低の生活)「日本の家に住み、中国で給料をもらい、イギリス人のコックを雇い、アメリカ人の妻をめとること」。
  • 志村幸雄「誰が本当の発明者か」ブルーバックス・講談社
    白熱電球は、エジソンだけが考えたわけではない。エジソンの前に、20人もの電球発明者がいる。綿々たる人間の技術開発の流れの中で発明は生まれたものであり、急に出てくるものではないんだと。先行技術があってこそ、発明が生まれる。先行技術を重視せよ、そして、後日、大発明家といわれる人間は、事業に成功した実業家なんだと。
  • 渡辺淳一「鈍感力」集英社
    面白いけど、こんなものかな。でも、あの人に読ませたくなるなあ。「あの人」って誰かって?それは言えません。

(5月号)

  • 野中郁次郎ほか「イノベーションの本質」新潮社
    マツダのロードスターやサントリーの伊衛門の成功のプロセス・本質が、わかりやすく書かれています。野中ファンなので小職の偏見があるかも。
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鈴木 元昭(日本知的財産協会 副理事長)

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