新刊書紹介

新刊書紹介

特許・実用新案の法律相談Ⅰ・Ⅱ

編著 小松陽一郎,伊原友己 編
出版元 青林書院 A5判 624p・644p
発行年月日・価格 2019年5月発行 各7,500円(税別)
 最初に手にしたとき,私は本書を完全に実務書として位置付けていた。事実,帯にも「実務 の到達点」と明示しているくらいである。これはもう間違いなく,かなり実務経験を積んだ熟練者にターゲットを絞った内容の濃い実務書であろうと。ところが,実際本書のページをめくり目次を俯瞰したとたん「あれ?」と思った。 いわゆる熟練者向けの堅苦しく仰々しい重たさをほとんど感じず,想定していたよりもとても平易な印象を受けたからだ。そして,本編を読み進めていくにつれて私の当初の予想は見事に覆された。もちろん,プラスの方向で,である。 結論から言おう。本書は,知財に関わる者すべての傍に置いておいてほしいバイブルである。 本書は,実務に長けた学者,弁護士等が設問ごとに執筆している。各設問は,Q(問題文)&A(回答要旨)と解説から構成されるスタイルである。私は旧版を読んだことがないが,このスタイルはどうやら旧版から踏襲されているようである。設問は,幅広いレベルやバックグラウンドを持つ者からのものを想定している。 従って,一見,極めて初歩的なものから,実務的,研究的なものまで広く取り上げられている。 そして,問題文が具体的でとても分かりやすい。これは初学者を意識した平易な,という意味ではない。実務担当者が日々感じている疑問を直感的に当てはめやすい,という意味での分かりやすさである。

 さらには,取り上げている裁判例の豊富さも本書のメリットの一つといえよう。直近の事件,例えばマキサカルシトール事件だけでなく,平成30年代の裁判例も収録している。このことは,自身で知識を深掘りする際,軸となる基本書的 機能も有していることを意味する。極めて私見であるが,平易性と専門性を兼ね備えた法学書,特に知財分野の書籍は稀有であると考えていた。ところが,本書は,見事に双方の性質を具備している。

 …恥ずかしながら自身の経験が浅いテーマ,例えば仲裁や審決取消訴訟等の設問に関しては,どうしても関心が低くなってしまい飛ばし読みしてしまったが,いざというときに本書を以て初動体制がとれると考える。

 共著であるせいか,設問間の繋がりに違和感を覚えたことは否定できない。ただそんな形式面は本書の長所に比べれば余裕で霞む。私は,本書を企業の知財担当者,弁理士をはじめとする特許事務所スタッフ,大学で知財法を学ぶ学生を含む多くの知財関係者に一読していただきたい。そしてさらには,弁理士試験を目指す者にとって有効な参考書でもあることを付言しておきたい。

(紹介者 会誌広報委員 K.N)

米国連邦商標出願ガイドライン

編著 井手 久美子 著
出版元 経済産業調査会 A5判 270p
発行年月日・価格 2019年9月12日発行 3,000円(税別)
 米国商標制度では,日本国内の制度や手続きと異なる点が多々あり,日本国内で問題ないとされる商標であっても,米国では登録出来ない場合がある。このとき,米国で使用する商標の変更を迫られ大きな負担となってしまうが,そ のような事態を避けるためには予め米国商標制度を把握しておく必要がある。本書では,米国連邦商標制度における出願手続き等の全体像がわかりやすくまとめられている。その中でも特に注意すべき,日本国にない制度が,以下のように解説されている。
 日本国にはない制度の代表例として,使用証明の提出が求められることが挙げられる。湿呂任六藩兢斂誓度が詳細に説明されており,その中でも,提出した使用証明についてどのような審査がされるか,という点は出願人は把握しておきたい。他にも,使用証明として提出可能なものが,具体例を交えて解説されている点も参考になる。
 また,他に挙げられるものとして,米国特許商標庁に提出する出願書面に記載すべき情報がある。出願日の獲得には必須ではないものの,登録を得るために必要な情報の例として,商標の意味,出願根拠,宣誓書があり,主に詐呂撚鮴發気譴討い襦
 商標の意味とは,その文字がどのような意味を持つかを説明するものであり,例えば「NASUBI」が「EGGPLANT」を意味するといったものである。また,造語の場合は,米国外において意味を持たない旨,説明を記載する。ただし,出 願時から記載した場合,不要な情報で審査官が困惑することもあり得るため,オフィスアクションが提出されてから対応した方が良いかもしれない,と解説されている。
 出願根拠については,Ⅵ〜Ⅶ章で解説されている。出願根拠とされるものは,商標の使用や使用予定に基づく出願,米国外の商標出願や商標登録に基づく出願,マドリッド協定議定書に基づく出願,というように複数あり,米国商標 出願がこのうちどれに基づくものかを特定する必要がある。本書では,出願根拠によって提出すべき必要書類や手続きが異なる点も解説されており,出願人は把握しておきたい。
 また,宣誓書も米国ならではの制度である。 これに署名して提出することで,提出書類に記載されている内容は真実であると信じている旨,宣誓することになる。署名者は誰でもよいわけではなく,出願人を代表して署名する権限を有する者等である必要がある点,注意されたい。 以上は一例であるが,他にも出願手続きのおおまかな流れや審査における類否判断等,出願人ならば把握すべきことがまとめられている。 本書のみでも非常に役立つ内容となっているが,日本国の制度と比較しながら読み進めることで,より理解が深まるであろう。

(紹介者 会誌広報委員 T.O)

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