新刊書紹介

新刊書紹介

「ルール」徹底活用型ビジネスモデル入門−SDGs対応を強みに変える−

編著 市川 芳明 著
出版元 第一法規 四六判 176p
発行年月日・価格 2018年12月14日発行 2,500円(税別)
 本書は,国連などにおける国際的な合意事項,法規制,国際標準などの,いわゆる「ルール」を利用したビジネスに関するものであり,特にゲームチェンジャーによる「ルール形成型標準」 に焦点を当てて,新しい時代のエコシステム型ビジネスモデルの有効性と具体的な活用について述べている。企業においてCSR,ISOといったものは,かつてはビジネスのコストを上げ,不要な手間を増やすだけの「嫌われ者」と思われていた。いや,今もそのように思っている日本企業は多いのではないだろうか。しかし,マ イケル・ポーターがCSR活動と営利活動を一体化するというアプローチであるCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)を提唱してから,多くのグローバル企業が環境問題やCSRへの取り組みを変えてきている。なぜか。それは,そこに大きなビジネスチャンスがあるからである。このCSVで欠かせないのが合意された枠組みである「ルール」をどのように自社ビジネスに活用するかという視点である。

 3章で欧米を中心にグローバルに展開されている様々な規制についてビジネスに大きな影響を与えているものをいくつか取り上げている。 これらの規制が具体的にどのようにビジネスに関連するのか,ビジネスチャンスとリスクの両面から,事例を交えながら解説している。環境規制,化学物質規制,エコデザイン(省エネルギー)規制,紛争鉱物規制などを挙げて,これらの基礎的な解説をした上でビジネスがどう関わっているのか,事例を交えて述べられている。その中で最近の話題として,欧州発の政策である「サーキュラー・エコノミー(CE)」が紹介されている。「循環型経済」について以前から日本でも取り組まれているが,欧州では2015年からグローバルにそのコンセプトを発信し始めている。CE時代では世界市場に新たなルールが作られつつあり,大きなビジネスチャンスになり得るもので,グローバル知財戦略フォーラムでも取り挙げられていたテーマであり注目されている。

 このようなビジネスの変化をいち早く捉える,あるいは自ら変化を起こすような行動をしないと,日本企業は益々世界から取り残されていく状況にある。知財人はもっとビジネスに関する動きに注力して,自らの知財活動をしていく必要性に迫られていると思われる。本書は,ルールとビジネスの関係について,とてもわかりやすく書かれており,これからそのような目を養う必要性を感じている知財人は,是非読んでみてはいかがであろうか。

(紹介者 会誌広報委員 Y.О)

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