新刊書紹介

新刊書紹介

「標準特許法 第6版」

編著 高林 龍 著
出版元 有斐閣 A5判 366p
発行年月日・価格 2017年12月発行 2,600円(税別)
 「3年ごとに律儀な改訂を重ねて第6版」。本 書の表紙のデザインと同じ,鮮やかな紫色が特 徴的な帯に白抜きで記載された言葉である。 特許法は,言うまでも無く,特許実務担当者 にとっても最も重要で,熟知を要する法律であ る。知財部に特許実務担当者として配属された 新人は,当然この法律の勉強が不可欠であるし, 経験を重ねた中堅実務担当者や管理職にとって も,知識のメンテナンスも含め,その必要性が 変わることは無い。
 法律の勉強のために,実に様々な書物が出版 されており,特許法もその例外ではない。その 多種多様な書物の中で,本書は以下に説明する 通り,新人からベテランまで幅広い特許実務担 当者にとって大変参考となるため,紹介する。 まず,本書の1つの特徴は,分量にある。 新人にとって必要なのは,「読破し易い分量・ 内容」の基本書であろう。一口に基本書といっ ても様々であり,辞書の様に分厚いものもあれ ば,詳細な学説・判例が記載されているものな ど,必ずしも万人向けでないものも少なくない。 この点,本書は総ページ数366ページと,よ くある教科書と同じような分量でありながら, 初学者が知っておくに必要な制度,重要判例等 が十分に網羅されている。
 留意いただきたいのは,本書は初学者向けに 簡単という訳では無いことである。中にはとて も難しい内容も含まれている。しかしながら, そのコンパクトさゆえ,初学者であっても読み 進めることが出来ると思われ,特許法に対する 理解は十分に深まるであろう。
 そして,このような適度な分量である本書は, 普段あまり時間の無いベテランの担当者が,特 許法を確認する上でも有用である。
 本書をお勧めするもう1つの特徴は,定期的 に版を重ねていることである。
 特許実務担当者はもちろん,多くの知財実務 担当者も十分ご承知のように,特許法をはじめ とする知財法は,頻繁に改正を繰り返す法律で あるため,実務担当者は,折角法律の知識をイ ンプットしても,改正の度にその知識を再イン プットしなければならず,苦労は絶えない。そ して,如何なる本を用いてインプットするかも 多くの実務担当者の関心事項であろう。
 例えば,特許庁からは法律改正毎に解説書が 発行されるが,改正箇所中心の解説となってい るため,改正法を体系的に理解しようとする場 合には適さないかもしれない。また,体系的に 理解するには工業所有権法逐条解説があるが, こちらは分量の課題に加え,そう頻繁に改訂さ れない点が課題となる。
 こうした中で,本書は3年毎に改訂がなされ, かつ前述の通りの適度な分量であることから, 改正法の勉強にも大変参考になろう。
 本書には,「特許法の勉強は本書だけで完結 するものではない」,との記載はあるものの, 特許法を理解するのに最適な1冊であることに 間違いは無い。
 ぜひ,特許法に本書で触れて頂きたい。

(紹介者 会誌広報委員 Y.H.)

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