新刊書紹介

新刊書紹介

ビジネスパーソンのための法律を変える教科書

編著 別所 直哉 著
出版元 ディスカヴァー・トゥエンティワン 四六判 360p
発行年月日・価格 2017年12月14日発行 2,000円(税別)
 平穏な日常の社会生活を営んでいると,ルー ルは守るものであり,変えるという発想が生まれることはほぼないと思われる。しかし, JIPAの専門委員会,プロジェクトの活動は,現在の法律上の問題点をあげ,場合によっては国に対して法改正を働きかける活動を行う。

 本書は,法律であっても,それが適切でなけ れば変えていくことができる方法を教えてくれている。著者はヤフー蠅涼甘者として同社の事業に関連して必要であった法律改正に携わった経験をもとに本書をまとめており,その一つ 一つの言葉には納得性がある。法学部や法科大学院では法律の解釈について学ぶことが多く,立法論を正面から学ぶ機会は少ない。そういった意味で本書は貴重な知識を得ることができるものであり,JIPAの活動をする上で参考にな る一冊である。

 本書は,著者が経験した事例がたくさん掲載されているが,はじめに法律を変えることに取り組むための基本的は考え方を解説している。例えば,どのように課題に取り組むかに応じて働きかける省庁を組み合わせる,ルールを変え る前に今あるルールを使い切る,企業の視点を 超えて世の中の視点であり方を考える,といったことが説明されている。この基礎知識を頭に入れて具体例を読むと,著者の取り組みにおける根底がわかっているので理解がしやすい。

 3章から11章で9つの事例が紹介されている。先ず1990年代初めに登場した検索エンジンが著作権侵害に触れてしまうために法改正に動いた話から始まる。検索結果にはスニペットと呼ばれる説明文が表示されており,これが元ペ ージの複製になっていることからきている。技術の進歩に法律を合わせるような働きかけであるが,要望書を提出したり,文化庁のワーキングチームに参加したりして2010年にやっと改正法が施行されている。その他に最近の話題とし て民泊の話が記載されている。ヤフーが東北で行ったイベントにおいて,地方では人を集めるためにはホテルが足りず,そのため民泊の活用が考えられたが,旅館業法があり,ビジネスがうまく進まなかった。様々な壁に当たりつつ問 題を解決している模様が解説されており,臨場感があり,大変興味深く記載されている。

 著者の行動は,一企業人の枠を超えた取り組みであり,異次元の話に聞こえる。しかし,JIPAのプロジェクトや専門委員会の活動は,まさしくこのような取り組みを数多く行っているものであり,本書で述べられている事例が実際のJIPA 活動の参考となるものと考える。是非ご一読を。

(紹介者 会誌広報委員 Y.О)

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ブランド戦略論

編著 田中 洋 著
出版元 有斐閣 A5判 536p
発行年月日・価格 2017年12月発行 4,000円(税別)
 筆者は1990年代から本書のもともとの構想を 練っていたとのことである。当時,ブランドを 流行のひとつと考えたり,特定の業界にだけ関係するものと捉えられたりすることも多かったそうだが,筆者は真正面からこれを否定する。 ブランドの問題は決して単なる流行のテーマではないのだ。

 ブランドには長い歴史がある。古くは石器時代から存在したと推定できる状況証拠があるそうだ。そこまで遡らなくとも室町時代に日本で本格的なブランドが成立していたとのこと(京都の「柳酒」)。現代のブランドを考えるにあた って,歴史的考察をすることには意味があるだろう。

 世の中の変化に伴ってブランドも変化している。他の場面でもよく聞く言葉だが,「モノか らコトへ」がブランドにも当てはまりそうだ。 本書においても,現代ではモノだけでなく,サービス,技術,さらには観光地や都市などにまでブランド化される対象が広がっていることが指摘されている。さらに商品カテゴリーを意味するものから,ライフスタイルや社会的理念などの幅広い意味を持つよう拡大されてきていることも現代の特徴のひとつだろう。共通した価値観や理念に裏打ちされたブランドが出現してきているのである。

 そのような現代においてブランド戦略とは何か。戦略というからには短期的・局所的なものではなく長期的・全体的展望に立たなければならない。本書によると,ブランド戦略とは企業全体としてそのブランド価値を高める活動,その戦略のことを指す。別の言い方をすると,ブ ランド価値を高めることを意識した,経営戦略やマーケティング戦略がブランド戦略なのだ。

 私を含む知財部員がそのような戦略を立案したり実践したりする主担当となることは少ないだろう。しかしマーケティング部門・コミュニ ケーション部門との連携が必要な場面はありそ うだ。そう思いながら本書に目を通す中で私は「カスタマー・ジャーニー」という言葉に興味を持った。知財部員には耳慣れない言葉だが,マーケティングの世界では一般的なようだ。顧客が購買に至る過程,サービスを受容する過程を,ジャーニーという言葉で表しているのだろ う。このジャーニーを視覚化することによって,顧客がどのような状況において何をどうしよう としているのかが見えてくる。そこから顧客とのどの接点を改善すればビジネスのチャンスが生まれるか,アイデアを出すことにつながっていく。

 ここで気づいた。本書で学んだことを活かせる場面のひとつとしてネーミングがあるではないか。私は今ある新商品のネーミングに関わっている。まさに今,役立つではないか。ブラン ド戦略について,マーケティングについて考えるのが面白くなってきそうだ。

(紹介者 会誌広報委員 H.T.)

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