新刊書紹介

新刊書紹介

米国特許実務 −米国実務家による解説−

編著 山下 弘綱 著
出版元 経済産業調査会 A5判 440p
発行年月日・価格 2017年2月9日発行 4,000円(税別)
 米国ではなぜこんなに苦戦するのだろう。」 米国特許の実務家であれば,一度は感じたことがある疑問ではないだろうか。本書は,そのような疑問をお持ちの方に特にお勧めの一冊で ある。

 これまでも米国特許実務を題材とした書籍は多く出版されているが,米国特許法の解説の域を出ないものもあり,実務の参考書として使えるものは必ずしも多くなかった。本書は,「はじめに」にあるように,著者の山下弘綱米国弁護士が,これまでの実務経験で得られたノウハウを分かりやすくまとめた良書である。著者は,1978年に特許庁入庁後,審査官,WIPOコンサルタント,審査長,審判長等を歴任,米国の法律事務所勤務を経て現職に至る。日本での長年の審査実務と米国での8年強の実務経験が生かされているので,内容に説得力があるのは言う までもない。

 本書のおもな構成は,以下のとおりである。 第1章:米国特許法の基本/考え方,第2章:特許出願,第3章:実質的内容に関するオフィ スアクションへの対応,第4章:クレーム解釈およびクレーム作成の考え方,第5章:オフィ スアクションの種類と対応,第6章:審判,第7章:特許発行後の手続き,第8章:情報開示義務制度および限定要求,第9章:特許期間の調整および放棄,第10章:その他。

 特に第3,5章のオフィスアクション関連の解説が非常に手厚く,米国実務の経験が少ない方にとっても,経験が豊富な方にとっても読みごたえのある内容となっている。

 そして各章で取り上げられているそれぞれの項目は,条文や制度の解説にとどまらず,日本の特許法との違いや判例を用いての解説,実際に取りうる複数の対応策が,多くの事例を交えて記載されており,読んでいくうちに最初に書 いたような疑問は自然と解消されていく。

 また,本書の価値が高いのは,各条文やMPEP,規則が,適宜原文を引いて解説されているところにもある。このため,本書を1冊用意しておけば,追加で何か検索する,という時間が削減できるのだ。そして,知財管理誌の「今更聞けない」シリーズに出てきそうな基本的な用語などについても,第1章やその後の本文中で分かりやすくまとめられている。本書の便利なところは,索引にも表れており,387ページから約20ページに亘って続く索引には,特許法,規則,MPEP,判例,審決,英文が含まれる。
 是非とも机の上に常備しておきたい一冊であ る。

(紹介者 会誌広報委員 K.S.)

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