新刊書紹介

新刊書紹介

営業秘密防衛Q&A
内部不正による情報漏洩リスクへの実践的アプローチ

編著 田中 勇気 著
出版元 経団連出版 A5判 116p
発行年月日・価格 2017年1月30日発行 1,300円(税別)
 近年「オープン&クローズ戦略」のもと,社 内で秘匿すべき機密情報が増え,併せて人材の 流動化の高まりにより,情報漏洩のリスクが増 大しつつある。また情報漏洩事件が一般のニュ ースにも登場するほどに,世間の関心も深まっ ている。このような中,経済産業省から「秘密 情報の保護ハンドブック」が平成28年2月に公 表されている。このハンドブックは経済産業省 のホームページ上で公表されており,誰でもア クセスできるようになっている。仮にあなたが 会社の秘密情報管理の責任者であれば,このハ ンドブックをよく読んでおくべきであろう。

 しかし,秘密情報防衛の重要なカギとなる 個々の現場の担当者にもこのハンドブックを読 んでもらうには分量(本体141頁,参考資料87頁) がある。

 そこで,このハンドブックの作成にもかかわ った田中弁護士による本書の出番である。本書 の「はしがき」の表現を借りると,「法律の専 門家ではない方々が」「実際に現場で無理なく 落とし込めるよう,実務の勘所に絞って解説」 されている。ハンドブックでは「企業が保有す る情報の評価」「社内体制構築」といった営業 秘密防衛に関係する広範な事項までもが解説さ れているのに対して,本書では「退職者による 情報漏洩対策」に絞り,全部で37個のQ&Aに より解説されている。例えば「転職元における 事前対応策としては何がポイントになるのでし ょうか」,「中途採用者から転職元の営業秘密等 を含んだ記録媒体を受け取ってしまった場合, 転職先はどう対応したらいいのでしょうか」と いった具合に極めて具体的である。しかも1つ 1つのQ&Aは殆どが2〜3頁,長くても4頁 以内にまとまっている。一方で詳しく知りたい 内容については,ハンドブックの該当箇所の記 載もあるため,必要に応じて直ぐにハンドブッ クを参照することも可能である。巻末にはハン ドブックの参考資料の中でも,実務に直結する であろう,各種契約書等の参考例も添付されて いる。

 この為,多忙で秘密情報管理の専門家とまで は言えない現場の担当者でも,本書が1冊手元 にあれば,必要に応じて参照することで直ちに 対策がとれるようになっている。

 もし私が会社の秘密情報管理の責任者に任命 され,1から社内体制作りを任された場合,本 書は手頃な価格でありコンパクトでもあるの で,各部署に本書を配布し,責任者の私もハン ドブックを詳細に読み込んで現場からの問い合 わせに備えるという使い方を検討したい。価値 のある1冊であるとお薦めする次第である。

(紹介者 会誌広報委員 S.Y.)

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