新刊書紹介

新刊書紹介

新・特許異議申立制度の解説〔増補・改訂版〕−平成26年特許法改正−

編著 髙畑 豪太郎 著
出版元 経済産業調査会 A5判 380p
発行年月日・価格 2015年11月27日発行 4,000円(税別)
 約12年ぶりに特許異議申立制度の復活となったが,旧特許異議申立制度時代に異議申立を行 った実務者も現場に少なくなったという知財部 門も多いと思われる。また,無効審判, 訴訟となると敷居も高くなるが,先ずは異議申立を行い他者特許の有効性を問うてみたいという若手の知財部員もいるのではないだろうか。

 本書は 特許異議申立制度の初学者から,今般の新特許異議申立制度をマスターしたい中堅,ベテランの知財部員にも重宝されるであろう一冊となっている。 本書は増補・改訂版につき, 初版の発行後に改正・施行された関係政省令等が網羅されるとともに,「実務上の留意点」やケース・スタデ ィ(第Ⅷ章)が記載され,より充実した内容となっている。

 第Ⅰ章は,制度概要について,本制度の趣旨と導入の背景から説明され,続いて,手続きの流れに沿って制度が解説されているが,特許庁で法改正に従事した著者ならではの丁寧な解説に加え, 「実務上の留意点」は制度に沿って実務上のポイントを理解する上で有用である。

 第Ⅱ章は,特許異議申立制度,特許無効制度,特許無効の抗弁,情報提供制度,の変遷を改正時期ごとに説明したものであるが,特許異議申立制度は歴史が古く(大正10年に導入), 様々なニーズや制度調整を経て今日に至ることから,制度の変遷を概観しておくことは,各条文を理解する一助となると言えるだろう。

 第Ⅲ章から第Ⅴ章,第Ⅶ章は新特許異議申立制度を旧制度,他制度(無効審判),他国制度(米国,ドイツ,欧州,韓国,中国)等と簡潔に比較することにより,読者が第Ⅰ章, 第Ⅵ章で頭 に入れた知識を整理しやすいように配慮されており,他の改正法解説書等にはない有益な内容となっている。

 第Ⅷ章のケース・スタディでは論点を簡潔に纏めた12ケースが 検討されており,実際の事例に当てはめ易い内容となっている。

 また,資料編では関連条文に加え,施行規則や様式作成見本も網羅されている。
 以上のとおり,本書は新特許異議申立制度について,制度理解から始めたい初学者から,実際に異議申立を行う実務者まで,幅広く活用できる必携の書といえるだろう。

(紹介者 会誌広報委員 T.A.)

新刊書紹介

企業のための弁護士活用術

編著 弁護士活用術研究会 著
出版元 日本加除出版 A5判 288p
発行年月日・価格 2015年11月16日発行 2,700円(税別)
「弁護士をどう活用するか?」
 難しい問題である。そもそも弁護士を必要とする局面に陥らないのが一番,少なくとも一個人としてはそう考える。なぜなら弁護士を必要とするのは典型的には訴訟であり,すなわち離婚や金銭等の民事上のトラブル,または痴漢や 暴力等の刑事事件に巻き込まれたという,決して望ましくない状況にある事を意味するからである。

 一方,企業にとって弁護士はどのような存在であろうか?企業は,知的財産に限らず多種多様なリスクの中で事業活動を行っており,その中でリスクを上手にコントロールし,適切にリスクテイクして事業成長させる事が求められ,プロアクティブに法的リスクに向き合いコントロールする上で弁護士を必要とするという点が,個人とは決定的に異なると考える。

 本書は,企業が弁護士を,法的リスク管理を主導する専門人材としてより積極的かつ戦略的に活用することを提唱するもので,企業法務分野の最前線で活躍する法律事務所や民間企業,行政組織等に所属の総勢12名の弁護士が共同執筆しているユニークかつ実務的なものとなっている。

 1999年から始まった司法制度改革により2000年に約1万7千人だった弁護士数は,2014年には約3万5千人にまで倍増,それに伴い活動態様も多様化している。法律事務所に所属する外部弁護士,企業内で日々の業務に従事する企業内弁護士,取締役など経営陣の一員であるジェネラル・カウンセルやチーフ・リーガル・オフィサー,更には社外取締役や監査役などコーポレートガバナンスの領域でも弁護士が活躍している。

 それぞれに求められる役割も活用の仕方も異なってくるのは当然で,本書では弁護士の活動形態ごとに,その特徴や役割をQ&A方式で概説しつつ,外部弁護士への依頼方法や企業内弁護士の採用方法といった,実践的な活用のヒン トを紹介している。また豊富な事例を通じて,弁護士による法的リスク管理への関与の特徴や具体的なメリットも紹介しており,知財担当者はもとより,様々な法的リスクに向き合う企業経営者から事業部門の担当者まで幅広い層の方々にとって有益な内容が多いと感じる。

 まず第1章「総論」で,企業によるリスク管理の枠組みをベースに,法的リスク管理の主たる担い手となる弁護士の活用方法を概観し,第2章「外部弁護士」3章「企業内弁護士」4章 「ジェネラル・カウンセル/チーフ・リーガ ル・オフィサー」5章「社外取締役・監査役」に分けて,それぞれの特徴と弁護士活用のポイントを具体的に説明するという構成をとるため,例えば外部弁護士を早急に決めなければならない場合は第2章を読むなど,すぐに実務に役立てられるものとなっている。

 大小問わず,あらゆる業界の企業に対してお薦めできる一冊である。

(紹介者 会誌広報委員 S.M)

Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.