新刊書紹介

新刊書紹介

改訂版 日中特許翻訳仕様 技術系の中国語学習書 中国語特許明細書を読む。書く。

編著 雙田飛鳥,安秋順,沈海泊 著
出版元 アイ・エル・エス出版 B5判 480p
発行年月日・価格 2015年8月1日発行 6,000円(税別)
 近年,日本企業による中国特許出願は約4万件とここ10年で大幅に増加しており,中国では年間9万件に及ぶ知財訴訟が起きていることも あり,知財の世界では中国の重要性が高まってきている。そのため読者の中には中国関係の実 務に携わっておられる方も多いかもしれない。 私自身は模倣品対策を除き,中国の出願にも知財訴訟にも直接関わった経験は無かったのだ が,もし今後,そうした状況に直面したら,本書が必ずや役に立つだろう。そのような確信を 持つに至った理由を中心に本書を紹介しようと 思う。

 まず前提として,私は業務レベルの中国語を 習得している。一方で,本書タイトルでもある 「中国語特許明細書を読む。書く。」という経験は皆無である。このように中国語の下地はある が,中国特許明細書には初めて触れるという方 には,本書は参考書であり辞書にもなる非常に便利な存在となるだろう。

 本書は,431個の特許クレーム例文の解説を 通じて,中国特許クレーム読解に必要な知識を習得できるものとなっている。まず通読し実践的知識を一通り身につけた上で,1章から8章 までのテーマ毎に,必要部分を都度参照・学習 するという参考書的な使い方が出来る。更に,頻出する日本語表現や中国語の単語毎に整理さ れた12ページの目次があるので,単語から意味や用法を調べる辞書的な使用も可能である。

 では中国語初心者にとってはどうだろうか。 正直に言えば,本書だけで中国語の基礎を理解し,更に「中国特許明細書を読む。書く。」のは,極めて困難だろう。本書には「はじめて中国語を学習される方のための基礎知識」という,わずか2ページが用意されているだけなので,他の部分を読むのにも非常に苦労するだろう。

 やはりある程度中国語の基礎を学習した上 で,本書を利用するのが好ましいが,例えば係 争に直面するなど急を要する場合もあるだろう。そのような場合にも本書は応えてくれる。本書では,説明の中で『Why?にこたえる はじめての中国語の文法書』,『中国語文法用例辞 典』,『誤用から学ぶ中国語』の3冊の書籍を引用する構成となっており,これらの書籍を参照 しつつ,必要部分を精読すれば十分に対応でき るだろう。

 また,なぜか本書中には全く触れられていな いのだが,著者所属の特許事務所HPでは,例文の音声データのダウンロードや,本書を用いた無料通信講座も紹介されている。従って,中国語初心者でも,こうしたサポート体制もあわ せて活用すれば,本書により必ずや実務に役立つレベルの知識を習得できるものと思う。

(紹介者 会誌広報委員 S.M)

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