新刊書紹介

新刊書紹介

商標法 <第2次改訂版>

編著 平尾 正樹 著
出版元 学陽書房 A5判 688p
発行年月日・価格 2015年7月17日発行 6,500円(税別)
 これまでも実務家等から評価の高かった平尾先生の「商標法」が,第1次改訂版から実に9 年半の歳月を経て,待望の第2次改訂版が出版されたので,ここに紹介したい。

 この9年半の間に,商標法において重要な法律改正がいくつもなされているのはご承知のと おりであり,直近では,特許法等の一部を改正する法律(平成26年5月14日法律第36号)により,商標法が改正され,色彩のみからなる商標,音商標などの商標が,新たに登録をすることができるようになった。もちろん本書では,この新しい商標も盛り込んで解説されている。

 法律学は,憲法を頂点とし,民法,刑法,行政法,訴訟法等の基本法があり,更にその枝分れの先に商標法等の知的財産法がある。本書の著者は,これら基本法の理解がなければ,商標法も理解しにくいと述べており,本書では民法, 民訴法などの基本法の理論から商標法を説き起こして解説している。また,特許法や実用新案 法,意匠法の他,不正競争防止法や,著作権法とも有機的に関連した解説もなされている。し かも,これら解説は,簡易平明,具体的な記載 がされているため,初学者にも理解し易い体系書となっている。

 また本書では,非常に多くの判例・審決例を取り上げて詳細に解説している。これにより,抽象的な理論のみならず,実際の紛争事例において,どのように解釈され,運用されているか,具体的に理解し易いような構成となっている。 第1次改訂版から282件の新規判決例が追加され,掲載されている判例・審決例は785件にのぼり,巻末には索引も用意されている。はしがきによれば,最初の改訂作業では,全体で700ページを超えるページ数となってしまったため,出版社と相談して,判例の説明の一部を著者の事務所のホームページに掲載することにしたそうである。

 以上のように,初学者にとって最適な体系書であり,弁理士試験の基本書としてはもちろん, 商標法をじっくり理解したい実務家にも一読をおすすめする一冊である。

(紹介者 会誌広報委員 S.I.)

実務詳説 商標関係訴訟

編著 髙部 眞規子 著
出版元 金融財政事情研究会 A5判 332p
発行年月日・価格 2015年9月28日発行 3,600円(税別)
 特許関係業務を長年続けてきたが,最近商標も担当することになった。知識も経験も不足しており,さて困ったと思っていたところに本書を手にする機会をいただいた。本来なら法律の基本的なところから勉強となるところ,いきなり訴訟関連書籍を手にすることになり,ハードルが上がってしまった感が否めないが,初学者なりにその内容について紹介したい。

 著者は,平成23年に「実務詳説 特許関係訴訟」,平成24年に「実務詳説 著作権訴訟」を 刊行しており,第三弾として本書が刊行された。 特許業務経験ありの商標初学者としては,やはり商標特有の内容についてどのような内容が 記載されているか,を説明すべきであろう。 まずは章立てであるが,第1章 商標権侵害訴訟,第2章 国際化と商標関係訴訟,第3章 審決取消訴訟,第4章 契約関係訴訟及び登録関係訴訟に分かれている。

 第1章では「商標権侵害の成否」に関する内容が類否判断,商標の使用について判例の解説を記載しながらわかりやすく説明しており,現時点での考え方を把握するのに役立つ。

 第2章で取り扱う国際化の記載では,国境を 跨る侵害があった場合を取り上げ,裁判管轄権, 準拠法,並行輸入について判例とともに詳しく解説している。国際的なブランド展開をする企業は少なくなく,参考になる内容である。

 第3章で最も重要なのは取消事由に関するところであり,3条,4条関係の拒絶理由,無効理由と不使用取消審判に係る取消理由について厚く記載されている。

 全般を通して,基本的な法内容について触れつつ,すべてにおいて関連する判例の解説をしながら,論点部分の裁判上の現在の見解を述べているため,この一冊で十分商標全体を把握することができるのではないかと思う。

 しかし全く初心者が読むには少し難しい感が あり,一度は商標法を勉強した方が読むのが相応しいのではないかと感じた。タイトルからは厳つい感じを受け,一歩引いてしまいそうになるが,読んでみると意外とわかりやすく,お薦めできる一冊である。

(紹介者 会誌広報委員 Y.О)

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