新刊書紹介

新刊書紹介

MPEPの要点が解る 米国特許制度解説(第3版)

編著 石井 正 監修  丸島 敏一 著
出版元 エイバックズーム A5判 319p
発行年月日・価格 2015年7月10日発行 3,300円(税別)
 各企業における事業活動のグローバル化が加速化する中で,製造拠点や販売先など外国で強く安定した特許権を適切なタイミングで取得す る必要性が高まっている。そのような状況にお いても米国は重要な経済大国の一つであり,米国における特許取得は外せない。

 米国においては,特許制度がここ数年で大きく変化している。2011年9月16日にこれまでの先発明主義から先願主義への変更をはじめとす る法改正(Leahy-Smith America Invents Act: AIA)が成立し,その後,2013年3月にAIA修正法が成立,さらに2013年12月には特許法条約 (PLT)批准に伴う規則改正が行われるなど,今後の実務に大きく影響を与える制度改革が続いている。

 今回紹介する本書は,昨今の改正内容を盛り込んで7年ぶりに発行された第3版であり,読者が米国特許制度の概観を理解することを重視 して書かれていることを特徴としている。
 米国特許制度における手続は,特許商標庁から発行されている審査便覧(MPEP)に解説されているが,MPEPは記載量が大変多く,また必要な記載が分散している。そのため,普段外国出願を担当していない実務者にとっては,い きなりMPEPの内容を読んで理解し,適切に対応することは難しい。

 そこで,本書では,米国特許制度の特徴をはじめ,出願から審査,登録,侵害までの各段階のキーワードや各種手続など87項目を取り上げている。

 各項目は,読みやすさを重視し,2ページ以 内にポイントがまとめられている。ただし,重要な内容についてはページを割いてしっかり解説されており,物足りなさは感じられない。例えば,第4章 特許要件の「新規性」では,22 ページを割いて,法改正前後の102条を比較しながら丁寧に説明されている。

また,各ポイントにはMPEPの番号が記載さ れているので,詳細を確認したい場合は,本書をMPEPのインデックスとして使用することも可能である。

 また本書は,最新の法改正の内容が反映されている。期限付きの試行プログラムであった QPIDS(Quick Path Information Disclosure Statement)などの情報などもしっかり触れら れている。

 初学者には,是非序章から読んでもらいたい。 序章には,アンチ・パテント時代とプロ・パテント時代を経て現在に至る米国特許制度の変遷が著者の視点でコンパクトにかつ,わかりやすい言葉でまとめられており,転換期に至った米 国特許制度の歴史と今後の方向性の一端を感じ ることができる。

 本書は,最新のMPEP情報を確認する際の補助資料として活用できる一冊であるため,初学者はもちろんのこと,実務家も是非机に置いておいて欲しいところである。

(紹介者 会誌広報委員 A.N.

Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.