新刊書紹介

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法務担当者のための民事訴訟対応マニュアル〔第2版〕

編著 田路 至弘 編著
出版元 商事法務 A5判 362p
発行年月日・価格 2014年2月22日発行 3,400円(税別)
 本書は,改訂版(第2版)で初版は8年前に 発行されている。企業が訴訟の矢面に立たされ たことを想定して,訴訟がどのように進んでい くのか,訴訟の一場面一場面における訴訟行為, 裁判官の一挙手一投足がいったいどのような意 味を持つのか,その他,訴訟に関して,企業の 担当者の方々に知っておいていただきたいこと を解説したものである。

 本書は,11の章から構成されている。左頁に 解説と右頁に軽い読み物風のコラムから構成さ れており,読みやすく構成されている。提訴前 夜から判決,控訴に至るまで細かく書かれてい るため,訴訟を経験したことのない担当者のみ ならず,訴訟の経験者にとってもなるほどと実 感することができる内容となっている。第1章 は紛争前の準備態勢について述べ、また,訴訟 と他の紛争に解決手段とで,どのような違いが あるのか,訴えが提起されるまでにいかなる事 象が生起するのか解説されている。第2章は裁 判所の事件について,訴状書面を詳細に解説す る。第3章は訴状の送達,呼出状についての確 認,被告として行うべき作業の詳細を解説して いる。第4章から8章では本格審理の段階につ いて述べており,訴訟経験者はこの記載が実に よく書かれていると感じるであろう。第4章は 第1回期日における訴訟行為の内容についての 説明,第5章は訴訟を有利に進める上での肝要 となる「口頭弁論の準備と争点整理」および「証 拠調べ手続」,第6章は証人尋問に関して解説 している。第7章からは審理終焉に伴う対応に ついて述べており,第7章は和解手続について, 第8章は最終準備書面を陳述し弁論の終結が宣 言されてからの判決言い渡し前後に準備し実行 すべき事項について述べている。第9章から11 章では第1審での主張・立証が、その判決中で 十分に認められなかった場合の対応について述 べており,第9章は控訴審,第10章は上告審に かかる手続について述べている。最終章では判 決や和解によって確認された請求権を実行する 段階、紛争解決の最終段階として重要な分野で ある強制執行を解説している。

 「訴訟はしばしばゲームに擬せられる。訴訟 当事者と訴訟代理人たる弁護士がタッグを組ん で,訴訟法というルールと裁判官というジャッ ジの下で,死力を尽くして戦うのが訴訟である。 弁護士任せにしていて勝てるほど,訴訟は甘く ない。もちろん優秀な弁護士は必要である。し かし,訴訟の構造を理解し,効果的に訴訟代理 人をバックアップする企業の担当者がいるとい ないとでは,雲泥の差である。」
 まさにその通りである。この本を読むことで 訴訟当事者と訴訟代理人たる弁護士がしっかり タッグを組むこと,企業の担当者の役割の重要 性を感じることができる。

 訴訟は企業を防衛する時代から防衛のみなら ず攻めの道具として定着しつつあるように思わ れる。本書はこうした企業活動を支える上で法 務担当者のみならず,企業の知的財産部担当者 も読んでみてはいかがであろうか。  

(紹介者 会誌広報委員 MK)

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実務に効く 知的財産判例精選

編著 小泉 直樹 末吉 亙 編
出版元 有斐閣 B5判 248p
発行年月日・価格 2014年4月25日発行 2,667円(税別)
   知財実務において何を参照するか。法律,審 査基準,技術専門書などが挙げられるが,過去 の知財判例が重要であることは言うまでもな い。

 しかしながら,知財部員の中には,判例を読 むこと自体躊躇する者が多いかもしれないし, 読んだとしてもその判例の実務的意義やその射 程について理解することが困難な場合もあるか もしれない。また,判例解説書は,ともすれば 学術的価値に比重が置かれがちである。
そのため,実務的観点から,均等論や間接侵 害といった重要論点についてテーマ毎に書かれ た分かりやすい判例解説書が,知財部員等に望 まれていた。

 本書は,膨大な数にのぼる知的財産関連訴訟 群から,特許法・不正競争防止法・著作権法を 中心に最重要判例を厳選し,知財争訟のエキス パートである弁護士26名が「実務に効く」ポイ ントを解説。判例理論の核心をつかみ,先進高 度化する知財争訟への応用をはかる本である。
 本書の特徴は,実務の第一線で活躍している 実務家が経験も踏まえ,精選した判例の解説を 通じ,実務に重要な25の論点それぞれに踏み込 んでいるところにある。また,各判例の事案の 「事実」に着目した解説がなされており,どの 事実がどのように裁判所の心証に効いたのか, どういった間接事実が結論の分かれ目になった のか,といったように,「事実」の分析と解説 から,今後の実務対応の方向性が明示されてい る点にもある。
 さらに,類似事案の紹介・比較にも目が配ら れている点も有難い。

 ここで,本書で取り上げられている25の論点 についていくつか挙げると,特許法では,近年 判例の蓄積の多い「クレーム解釈」,「プロダク ト・バイ・プロセス・クレームと機能的クレー ム」,「均等論」,「間接侵害」やホットな論点で ある「損害論」,「職務発明関連訴訟」などがあ る。また,不正競争防止法では,今年に入って 新聞等でも広くニュースになった「営業秘密侵 害行為」などがあり,著作権法では,「依拠性」, 「類似性」等の避けては通れない多くの論点が 幅広く取り上げられている。

以上,紹介したように,本書では,判例が実 務的観点から第一線の実務家が分かりやすく解 説されていることから,知財部員(実際に訴訟 実務を行うかどうかは問わない)にとって,大 変便利な判例解説書であると思われる。会員企 業の書籍棚に,一冊置いておくことをお勧めし たい。

(紹介者 会誌広報委員 Y.D)

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