新刊書紹介

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年報知的財産法2012

編著 高林 龍,三村 量一,竹中 俊子 編
出版元 日本評論社 B5判 296p
発行年月日・価格 2012年12月20日発行 4,700円(税別)
実務者にとって,知財分野の動向チェックを 細かく行いながら実務をすすめることは,とて も骨の折れることであり,どうしても「これは あとで・・・」となりがちである。インターネッ ト上でのキーワード検索も,必ずしも有益な情 報が得られる時ばかりではなく,膨大な検索結 果からの見極めも一苦労である。

本書は,2012年の知財動向に関する年報であ り,判例,学説,政策・産業界,諸外国などの 分野ごとに2012年の知財動向が分析・紹介され ていることが一つの特徴である。本書に掲載さ れた知財動向は,単なるリストに留まることな く,それぞれの事柄に対して,各分野の専門家 による綿密な調査,的確な解説・評価が付され ているという利点を活かし,掲載された知財動 向情報について,日々の研究・実務下で安心し て活用することができる。

判例については,1年間の重要判例に関する 詳細がコンパクトにまとめられている。学説に ついては,この1年に発行された知的財産法に 関する書籍や論文が法域毎に紹介されており, 基本書・概説書から学術誌掲載の論説まで多岐 にわたっている。これら判例・学説の記事は, 研究者,実務者など広範囲の読者層にとって有 益であると思われる。

政策・産業界の動向については,個々の情報 の有機的なつながりの確認・理解が本書により実務者にとって,知財分野の動向チェックを 細かく行いながら実務をすすめることは,とて も骨の折れることであり,どうしても「これは あとで・・・」となりがちである。インターネッ ト上でのキーワード検索も,必ずしも有益な情 報が得られる時ばかりではなく,膨大な検索結 果からの見極めも一苦労である。

本書は,2012年の知財動向に関する年報であ り,判例,学説,政策・産業界,諸外国などの 分野ごとに2012年の知財動向が分析・紹介され ていることが一つの特徴である。本書に掲載さ れた知財動向は,単なるリストに留まることな く,それぞれの事柄に対して,各分野の専門家 による綿密な調査,的確な解説・評価が付され ているという利点を活かし,掲載された知財動 向情報について,日々の研究・実務下で安心し て活用することができる。

判例については,1年間の重要判例に関する 詳細がコンパクトにまとめられている。学説に ついては,この1年に発行された知的財産法に 関する書籍や論文が法域毎に紹介されており, 基本書・概説書から学術誌掲載の論説まで多岐 にわたっている。これら判例・学説の記事は, 研究者,実務者など広範囲の読者層にとって有 益であると思われる。

政策・産業界の動向については,個々の情報 の有機的なつながりの確認・理解が本書により

(紹介者 会誌広報委員 T.M.)

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米国ディスカバリの法と実務

編著 土井 悦生,田邊 政裕 著/td>
出版元 発明推進協会 A5判 314p
発行年月日・価格 2013年3月4日発行 3,600円(税別)
本書は,米国における証拠開示手続であるデ ィスカバリについての概説書である。

米国民事訴訟のディスカバリは,日本の民事 訴訟では考えられないような膨大な労力,時間, コストをともない,訴訟の結果を左右する重要 な手続であるが,ディスカバリを正確かつ詳細 に説明した日本語の文献は,比較的短い論稿な どを別にすれば,殆ど見当たらない。このよう な状況に鑑み,ディスカバリの様々な論点につ いて初の日本語での説明による本格的な概説書 として,本書は発刊された。また,米国連邦巡 回区控訴裁判所主席裁判官であるレーダー裁判 官が序文を寄稿されており,レーダー裁判官は その序文において「本書は,・・・日本企業が米 国訴訟において適切な判断をなし得るよう導く ものである。」と述べている。

本書は,各論,すなわち,ディスカバリの総 論,開示範囲,弁護士依頼者間秘匿特権,ワー クプロダクト,保護命令,ディスカバリの手続 の流れ,ディスクロージャ,インターロガトリ ー,事実等承認要請,文書等提出要請,eディ スカバリ,デポジション,ディスカバリ違反に対する制裁,文書管理規定,情報保全義務と訴 訟ホールド等について,体系的に章立され,解 説されている。各論ごとに,制度の概略から各 状況における一般的な帰結まで,根拠(判例, 連邦民事訴訟規則,連邦証拠規則)を示しつつ, 詳細に解説している。

また,日本企業の目線から,日本企業が直面 するであろう特有の問題についての解説がなさ れている。特に,デポジションについて,行う 場所(米国か日本か)について争う際の基本的 知識や,対象者(証人)に対する準備・教育に 関する解説,通訳や通訳チェッカーを含めた準 備が望まれる旨の指摘は,大変参考になると思 われる。また模擬デポジションとして一例が示 され,これについての問題点の指摘・解説も実 務上非常に参考になる。

また,資料として,ディスカバリ計画報告書 の書式例や,インターロガトリーの具体例など, 各手続における書類の具体例が収録されてお り,これまでディスカバリ手続の経験のない企 業にとって非常に有益である。

全体を通読すれば,米国ディスカバリにおけ る実務上必要な知識が一通り得られるであろ う。

本書は,日本企業の米国法務リスクマネジメ ントの担当者にとって必携の書である。

(紹介者 会誌広報委員 K.S.)

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International Handbook on Unfair Competition

編著 Frauke Henning-Bodewig 編
出版元 C.H. Beck,・Hart・Nomos 6.5×9.5inches 689p
発行年月日・価格 2013年発行 €239
広範囲にわたる国や地域の不正競争に関し, 多くの情報を整理し,まとめた英文書籍である。 日米欧はもちろん,中国,インド,南米,南ア フリカに至るまで,21ヶ国の状況が集約されて いる。

本書の冒頭では,不正競争をどう定義するか についての内容が記載されている。国際間取り 決めの嚆矢としては,1900年に導入されたパリ 条約10条の2や10条の3になろう。されど,世 界共通の統一的基準を設定するのは困難であ り,実際には各国事情,法制度に依存するとこ ろが大きい。法典によるもの,コモンローに依 拠するもの等,多様である。一方でWIPOや TRIPSにより,国際調和に向けた取り組みも進 められている。いわば,不正競争に関する国際 的取り組みの歴史が紹介されている。

紹介者は企業の知財部員であるため,また, 日本の不正競争防止法を想定してしまうため, 不正競争行為を行った者に対する,損害賠償請 求や差し止め請求といった対競合他社の視点か ら考えてしまう。しかし,本書ではそのような 企業視点,競争相手企業への対応手段のみなら ず,常に消費者保護の視点にも注意が払われて いる。究極的には消費者が安全,安心して製品, サービスを購入することが求められるのであ る。

本書の核をなすのは,具体的に各地域,国の 法体系,事例が不正競争行為を類別し紹介されている点であろう。地域別,国別に解説がなさ れ,それぞれの特徴がまとめられている。 少し例を挙げてみると,欧州に関しては,域 内でハーモナイズは進んでいないが,欧州連合 の機能に関する条約(TFEU),欧州連合司法 裁判所(CJEU)等が当面は中心的役割を果た すことになろう。

ブラジルでは不正競争行為の抑制は知財法の 枠組みに含まれる。欧米の関連法の種々の要素 を取り込んでいる。

中国では経済法の一部として,反不正当競争 法が制定されており,さらに地域ごとの規則, 取り決めが存在し,行政機関によるエンフォー スメントが盛んに行われる。

ドイツでは不法行為に対する法から由来し, 1909年から既に不正競争防止法(UWG)が存 在する。2004年に,新UWGが制定された。 インドでは不正競争防止法のような1つの法 は無い。多くの法により,不正競争行為が禁止 されている。また,コモンローの国であり,最 高裁判決により拘束されるといった特徴もある。 わが日本の解説もなされ,代表事例がわかり やすく挙げられ説明されている。海外の著者か らどのように見られているか,といった観点か ら読んでもおもしろいだろう。

企業実務上は管轄部門がわかりにくいところ である。いざ問題が生じた際には組織横断的な 対応が必要となろう。特に昨今のグローバル展 開においては避けて通れない点である。本書は 国際ビジネスを展開する上では必要不可欠な内 容である。少なくとも,法務部門,知財部門の 方々には是非お読みいただきたい。

(紹介者 会誌広報委員 A.N.)

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知的財産法判例六法

編著 大渕 哲也 編
出版元 有斐閣 A5判 462p
発行年月日・価格 2013年3月8日発行 定価 2,800円(税別)
この表題を見て皆さんはどんな本だと思われ るだろう。難解な判決文でびっしり埋め尽くさ れた本?そんな警戒心で恐る恐る開いてみると ・・・,体裁は条文集。産業財産権法や著作権法 は勿論のこと,中には「映画の盗撮の防止に関 する法律」まである。そして条文を順々に掲載 し,各条文の後に関連する判例がコンパクトに 掲載されている。つまり条文から見て判例を整 理し直した本だと言えよう。

条文集といえば他にもあるが,分量の点では この判例六法は,知的財産権法文集と工業所有 権法令集の中間ぐらい。1冊で扱い易いという 点で知的財産権法文集並みのコンパクトさ。参 照条文を明示した点で工業所有権法令集並みの 便利さが備わっている。また重要な改正条文は 新旧ともに掲載している。更に準用する条文に は,読み替えた規定を書いている。商標法56条 なら,特許法の条文をあちこち開いて頭の中で 読み替える必要がない。その上条約まで収録し ている。

次に条文の解説という点で見てみれば,工業 所有権法逐条解説との違いに気が付く。この逐 条解説は立法の背景を解説する。つまり立法前 の話である。一方この判例六法は立法後,条文 の語句や文脈がどのような事情で今日の解釈に 至ったのかを示している。例えば意匠法3条で は「1項第3号が一般需要者の立場から見た美 観の類否を問題にするのに対し,・・・2項は当業者の立場から見た意匠の着想の新しさないし 独創性を問題にする」と示している。どんな事 件でこの相違に至ったのか思い出せるだろう。 専門書を紐解かなくて済むので便利だ。なお号 数の多い条文である不競法2条1項では128例, 著作権法2条なら45例も掲載している。 掲載された判例は500件近くあり,大半は判 例百選の掲載番号を示している。判例百選の読 者を意識し,利便性に配慮したためであろう。 確かに調べ事の最中に「この事件,どの本に載 っていたのだろう」と思うことがある。そんな 時に参照記事を探さずに済むので学習に役立つ であろう。とはいえ判例百選に固執しているわ けではなく,平成24年8月8日の判決(釣り★ スタ事件)までフォローしている。

条文と判例の関係を見ると面白い点がある。 まず国際裁判管轄や準拠法に触れている点。知 財の法令にはこれに対応する条文がない。そこ で法律の「権利侵害」欄の冒頭(特許法なら 100条の前)に載せている。BBS事件では特許 独立の原則に言及した重要判決であるが,パリ 条約4条の2には載っていない。それも特許法 68条に権利消尽と並行輸入で2回も載せている のに。リパーゼ事件も特許法70条に載っている と思いきや36条に載せてある。改正したら70条 には用無しということか。これらに編者の工夫 が感じられる。

最後にこの判例六法は,まず知財の法令を学 習しようとする方に薦めたい。あわせて今一度 法令を復習したい方や実務で条文をよく参照さ れる方にもお薦めする。

(紹介者 会誌広報委員 村上)

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