新刊書紹介

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新・注解 特許法【別冊】平成23年改正特許法解説

編著 中山 信弘,小泉 直樹 編
出版元 青林書院 A5判 340p
発行年月日・価格 2012年8月8日発行 2,900円(税別)

「新・注解 特許法」の別冊であり,執筆は, 澤井氏,松山氏にて分担され,編集は中山氏, 小泉氏による解説書である。ページ数は300頁 を超え,頁数だけでも今改正の大きさがうかが える。

本書は,序章の概要から始まり,本章で逐条 解説,巻末付録の2章,巻末の構成をとってい る。「序章 平成23年特許法改正の概要」では, 経緯,趣旨を踏まえ,各制度の見直しについて 関連条文が一目でわかるように目次的にまとめ ている。「本章 平成23年特許法改正条項逐条 解説」では,改正条文を条文番号順に掲載し, 細項目として,改正条文,趣旨,内容,経過措 置などが項目別に,判例,特許庁での検討,学 説等を取り入れ,論理的に展開されている。

例えば,30条の発明の新規性喪失の例外の改 正については,「機_正趣旨」で「(1)従来 制度の概要,(2)検討の視点,(3)改正の概 要」を述べた後,「供_正の内容」にて条項 毎に解説され,経過措置や留意点も記載されて いる。「(2)検討の視点」には改正の経緯が記 載されており,これは理解を早め,かつ深める 点で大いに参考になる。巻末付録では,「特許制度に関する法制的な 課題について(抄録)」,「特許法の新旧条文対 照表」,「附則」と多様な内容で,この個所でも 充実した資料となっている。「特許制度に関す る法制的な課題について(抄録)」では,制度 の見直しについて概要,課題,論点などが記載 されている。本改正の経緯である特許庁の資料 の抄録が掲載され,その中には,課題や論点整 理から始まる経緯が掲載されている。ここでは, 諸外国の制度についても簡単に紹介し,比較さ れているため,諸外国での違いも興味深く知る ことができ,視野を広げて改正を俯瞰できる点 もなかなか味わい深いものがある。

レイアウトも細心の配慮が伺え,条文番号が 各ページの最上に記載,条文番号が変わると改 ページ,条文毎に細項目の細目次の掲載等がな され,条文毎に確認する際には,とても使いや すいページレイアウトとなっている。読み通す だけではなく利便性も考慮した解説書をコンセ プトとされたようで,執筆者らの細かい心遣い を感じ得る。

このように,本書は,平成23年特許法改正に ついて,改正内容から,その経緯等を1冊で多 面的に理解できる解説書である。条文の索引な どの利便性を配慮されたレイアウトもあって, 実務書として,デスクの脇に据えたい一冊であ る。

(紹介者 会誌広報委員  H.M.)

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完全対応版 改正特許法Q&A45 −平成23年法律第63号, 平成24年4月1日施行−

編著 栗山 貴行 著
出版元 経済産業調査会 A5版 370p
発行年月日・価格 2012年8月23日発行 3,500円(税別)
平成24年4月1日施行の改正特許法の全体像 を詳しく把握したい方や,改正の趣旨を理解し 易い解説本をお探しの方にお薦めなのが本書で ある。

特許法等の改正は毎年のように行われること もあり,実務者にとって改正内容に追いつくだ けでも大変であるが,本書を読むことでその不 安は解消されるのではないだろうか。

本書の前半部は,改正法をQ&A形式を用い て説明した構成となっている。Q&Aの項目は 下記の通りである。
〔0〕改正の概要
〔1〕通常実施権の対抗制度の見直し
〔2〕冒認出願に対する救済措置の導入
〔3〕再審の訴えにおける主張の制限
〔4〕審判制度の改正
〔5〕新規性喪失の例外規定の改正
〔6〕商標法における博覧会指定制度の廃止
〔7〕出願人・特許権者の救済規定の改正
〔8〕 商標権消滅後1年間の他人の登録を排除する規定の削除
〔9〕特許料金の改正
〔10〕特許料金等の減免制度適用対象の拡大
各項目の基本的な流れは,「改正前の制度,問題点,改正内容」を順に説明したQ&Aで始 まり,次に,特許法での説明の後に他の3法(実 用新案,意匠,商標)での関連改正についての Q&Aが続き(〔6〕や〔8〕の商標法のみ対象 の改正は除く),さらに,経過措置と具体的な 事項についてのQ&Aが続くというものである。

弁護士である著者は,平成22年6月から平成 23年6月までの1年間,任期付公務員として, 法制専門官の立場で改正法の立法作業に従事し ていたこともあり,関係者だったからこそ出来 る説明を随所に窺うことが出来る。例えば,「〔1〕 通常実施権の対抗制度の見直し Q&A 6」で は,商標法の通常使用権で当然対抗制度の導入 が見送られた経緯や理由について,審議会で議 論された内容が説明されている。

また,「〔4〕審判制度の改正」の項では,改 正前の問題点(キャッチボール現象)と改正後 の制度の両方において複雑な審判や訴訟のフロ ーが,図を用い,分かり易く説明されている。

このように,読者に対し法改正の趣旨や改正内 容を理解し易くする工夫がなされているため, 直接審判実務に関わっていないという方も抵抗 なく理解できるのではないだろうか。

また,本書の後半部には,新旧対照条文を対 比させた「新旧対照条文一覧」が掲載されてい るので,前半部の「Q&A」と後半部の「新旧 対照条文一覧」とを交互に読むことで改正法の 理解が一層深まると考える。

以上のように,本書は改正特許法をマスター したい方には是非お薦めの一冊である。

(紹介者 会誌広報委員  K.K.)

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民法でみる知的財産法[第2版]

金井 高志 著
出版元 日本評論社 A5判 324p
発行年月日・価格 2012年9月15日発行 2,700円(税別)
本書は,当誌に掲載されている「知的財産部 員のための民法」の著者が執筆したものである。 当記事では,「今更シリーズ」として理科系出 身の知財実務者向けに執筆されており,法律用 語や,私法・民法の概論,知的財産部員に必要 な契約の知識などがわかりやすく解説されてい る。

一方,今回紹介する本書は,知的財産法は民 法の特別法であるため,民法の法理論と比較し つつ勉強すれば,理解を深められるという考え のもと,「民法の基礎理論からその応用として 知的財産法を解説する」という基本コンセプト で法学部の学生向けにまとめられた第2版であ る。

学生向けに執筆されたものとは言いながら も,民法の知識がない読者でも安心して読み始 めることができるように,第1章で民法の三大 原則などの民法の基礎が解説されている。2章 以降では,要所で民法の解説を加えつつ,民法 と知的財産法を対比しながら解説され,民法と 知的財産法をあわせて学ぶことができる。

また,本書の特徴の一つとして,「ロジカル シンキング」の基礎的手法が随所に用いられて いる点が挙げられる。「ロジカルシンキング」 とは,導き出した結論を相手にわかりやすく伝 えるために用いる論理手法の一つである。この 手法は,実際のビジネスの現場でも使用するため,法学知識のない者でも,ビジネス経験があ れば,本書の内容を理解しやすい構成となって いる。

本書は,巻末の資料が非常に充実しており, 本書の理解を助けてくれる。資料,任蓮にヽ 者にとっては基本である「法的三段論法」や「法 律の解釈方法」を正確に理解させるための解説 がなされている。恥ずかしながら「法学的三段 論法」を知らなかった工学部出身の紹介者にと っては,条文解釈の考え方や様々な解釈手法を 基本から学ぶことができ有益だった。また,様々 な解釈手法の中からどれを選択するべきかの手 順がフローチャートでまとめられており,とて も参考になる。さらに,「資料▲蹈献ルシン キングの手法」が新たに追加されており,本書 の理論展開のベースとなっている「ロジカルシ ンキング」の論理手法を整理することができる。 本書は第2版ということで,平成21年度,平 成23年度の法改正にも対応しており,全体とし て解説を分かりやすくするための加筆修正がな されている。また,新たにコラムが新設され, 各章に関連した内容が過去の判例や話題となっ たニュースなどを織り交ぜながら書かれている ため,本書の理解をさらに深める一助となって いる。

このように本書は,日常生活に関連の深い民 法と実務上必要な知的財産法の両方を,基礎か ら学ぶことができ,なおかつビジネス的な論理 手法をもって理解を深めることができる一冊で ある。理科系出身の知財実務者にもぜひ読んで いただきたい。

(紹介者 会誌広報委員 A.N.)

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