新刊書紹介
新刊書紹介
ライブ講義 知的財産法
| 編著 | 田村 善之 著 |
|---|---|
| 出版元 | 弘文堂 Ａ５判 608ｐ |
| 発行年月日・価格 | 2012年６月15日発行 4,200円（税別） |
本書の“ライブ講義 知的財産法”という書 籍名から，田村先生が北海道大学で講義されて いる内容をまとめたものかと思っていたが，外 部で多数の講演をされている田村先生の講演内 容を録音されたもののうちから，理論上，実務 上重要と思われるものを選択し，また最新の法 改正や裁判例を反映したものが１冊にまとめら れたものである。
本書の構成は，以下のとおりである。
なお「意匠法」に関しての記載はないが，「不 正競争防止法」に関連付けて記載されている。
全体をとおして言えることは，一般的な知財 関連の書籍とは異なり，各章にて多くの判例を ベースに田村先生の考え方も含め，いろいろな 切り口から分析，評価されており，これらの内 容が話し口調（講演で話をされているように）でまとめられていることが大きな特徴である。
具体的に説明すると，第１章の知的財産法総 論では，「知財立国の動向と将来像」を，歴史 や法律の制度設計のあり方，また知的創作物の 考え方を俯瞰して，理論的に解説されている。
第２章の不正競争防止法では，主にデッド・ コピーの動向を踏まえ，法改正の経緯やそれに 伴う判例を多角的に検討，評価をしている。
第３章の商標法では，そもそも商標法で保護 される機能とは何なのかを判例を中心に解説さ れている。また普通名称と記述的表示のアプロ ーチのあり方を多くの判例を用いて分析，また 最近の動向でもあるインターネット上での商標 のあり方についての考え方が述べられている。
第４章の特許法では，特許制度のあり方とは 何か，均等論や間接侵害等について，いろいろ な考え方や判例を用いて言及している。
第５章の著作権法では，著作権制度の動向や 今後のあるべき姿，また間接侵害やフェア・ユ ースの導入の課題や限界について述べられてい る。
第６章のその他では，民法での一般不法行為 で著作権がどのように補完できるのか，またパ ブリシティ権での侵害行為に対しどうあるべき なのかが詳しく説明されている。
講演録形式で纏められているので，とても分 かりやすく好感がもてる内容である。
また多角的な切り口から，いろいろな考え方 が掲載されており，学生から知財実務者までと ても参考になる実務書と言えよう。
（紹介者 会誌広報委員 Ｈ．Ｍ．)
新刊書紹介
現代知的財産法講座�機｜療�財産法の理論的探究
| 編著 | 高林 龍・三村 量一・ 竹中 俊子 編集代表 |
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| 出版元 | 日本評論社 Ａ５判 480ｐ |
| 発行年月日・価格 | 2012年５月20日発行 5,000円（税別） |
そのような時に考察のきっかけを本書が与え てくれるのではなかろうか。紹介者はそのよう な思いから本書を手に取った。
10人を超える錚々たる著者の論文が詰め込ま れた一冊である。特許法，著作権法，商標法・ 不正競争法の大きく３つのカテゴリーに分か れ，それぞれの論者が各カテゴリーにおける重 要な法律・制度上の現代的課題を取り挙げら れ，最新の研究成果が収録されている。
各論文の構成は大体以下のようになってい る。初めに課題をあげ，その課題に関する法律 改正等の歴史的背景や判例をまずは紹介し，そ のうちから主流となる学説を複数抽出する。その学説について各論客が意見を付す形で進み， 最後にそれぞれの意見，今後の展望について述 べる形式で進む。国内のみならず，海外事情と の比較も行われており，各論文は決して長文で はないのだが，それぞれ内容が凝縮されている。
本文中の用語を補足説明するため各ページに 脚注の掲載もあるが，中には脚注の方が本文よ り紙面を占めている場合もある。説明の省略で きない補足が多く，その脚注を読み理解するの みでも参考になる。
紹介者は普段，特許出願，中間対応業務に携 わることが多く，著作権法に関わることは少な いのだが，意外に著作権法のカテゴリーの論説 が腑に落ちる部分も多く，わかりやすく感じた。 著作権法に対しての先入観がなく，また，著作 権の対象も一般的に想像しやすいものであるせ いかもしれない。
法律条文の基礎にある考え方や，時代変遷と ともに変化してきた条文内容やその解釈につい てあらためて学ぶ良い機会となった。本来その ような根底を理解して実務にあたるべきかもし れない。
実務から発展し，さらに一歩，まさにタイト ルのとおり，知財の「理論的探求」をしたい方 にはもってこいの一冊だろう。最先端の研究や 議論に接することで，新たな視点が開けるかも しれない。
（紹介者 会誌広報委員 A．N．）
新刊書紹介
米国発明法とその背景 19世紀以来の特許制度改革
| 編著 | 澤井 智毅 著 |
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| 出版元 | 経済産業調査会 Ａ５判 280ｐ |
| 発行年月日・価格 | 2012年７月６日発行 2,800円（税別） |
- 発明者先願主義の採用（先願主義，発明由 来手続き，ヒルマー・ドクトリン，先発表 主義，先使用権）
- 付与後異議申立制度の採用（付与後レビュ ー制度，当事者系レビュー制度，情報提供 制度）
- 訴訟時の無効抗弁の制限（補充審査制度， ベストモード要件の抗弁制限）
- 米国特許商標庁の組織運営（手数料，サテ ライトオフィスの設置，優先審査制度）
そのうえで，今回の改正の発端となった事柄 に言及し，今回の改正にあたってもロビー活動 や関連組織からの報告書など，様々な内外的要 因の影響を受けている事に触れている。また， 著者は，米国駐在中に公聴会に参加するなどし て，この法案の審議過程をつぶさに見ており， 取り上げている条項それぞれについて，内容に 影響を与えた団体およびその団体の主張，関連 する最高裁判決などを取り上げ，なぜこのよう な改正内容となったのかという背景をふまえた 上で条項の内容を見る事が出来るように記載さ れている。今回の改正内容の中には，改正条項 の背後に存在している，そういった諸々の要因 を知っていないと理解しづらいものも含まれて おり，本書の構成はそれに十分答えるものとな っている。
なお，本文中では，解説対象となっている条 項は基本的に日本語に翻訳されたものが記載さ れているが，巻末に改正法の原文が掲載されて おり，本書のみで原文の記載を確認する事が出 来るようになっている。
このように，本書は米国における特許制度改 革の基本的かつ重要な部分を理解するのに必要 な情報をまとめている事から，初学者が米国特 許法の成り立ちからおさらいしながら勉強する ための一冊として，あるいは実務経験者が各条 項の成り立ちを理解して解釈の一助とするため の情報源としてお薦めできるものである。
（紹介者 会誌広報委員 Ｙ．Ｏ．）
新刊書紹介
特許がよくわかるシリーズ 最新版 要点早わかり 米国特許入門
| 編著 | 木梨 貞男 著 |
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| 出版元 | 技術評論社 Ａ５判 304ｐ |
| 発行年月日・価格 | 2012年６月８日発行 2,880円（税別） |
第�局堯（胴馥探�審査入門
第�敬堯（胴馥探�訴訟入門
に大きく分けて，更に章・節（合計88節）に分 けて各段階での手続きや注意点をまとめたもの である。各節は２ないし４ページで区切りがつ いているため，まとまった時間が取れなくとも， ちょっと時間があるときに切りの良い所まで少 しずつ読み進めることができるので，時間のな い人でもさほど苦痛なく読み進められるだろ う。また，随所に重要判決などを取り上げたコ ラムが挟まれており，気楽に米国特許法の知識 が身に付く構成となっている。尚，デザイン特 許（日本でいう登録意匠），植物特許（日本で いう種苗法の品種登録）についても１節を割い て説明している。
周知の通り，2011年の米国特許法改正により 米国も先発明主義から「先願主義」（正確には 先発表主義）に移行しつつあるので（出願につ いては2013年３月16日以後の有効出願日を有す る出願から施行），これまで米国特許法をかじ った人でも今一度，今回の改正の内容を踏まえ て復習することが必要であるかと思われる。本 書は，米国特許出願実務上の必要性に応えるために実戦的な内容に絞ってあるため，これまで 米国特許法をかじった人は勿論，米国の代理人 と日本の発明者との間に立つ特許実務者にとっ て非常に役立つノウハウ本である。
米国の特許制度は日本の特許法と比べると複 雑であり，その上，今回の改正が段階的に施行 されるため，初学者は非常に混乱させられる。 しかし，本書は改正内容を簡潔かつ分かりやす く説明しており，また，初学者でも理解できる ように基礎から書いているため，改正内容も理 解しやすいのではないかと思われる。また，料 金・手数料についても，2012年段階の数値では あるが掲載されており，フェーズ毎にどのくら いの予算が必要かこの本一冊で分かる。ただ， 米国特許制度についてさらに詳しい論説を求め る読者は本書を基に他書も参考にされればと思 う。
米国特許の実務に詳しくなれば，米国代理人 との意思疎通が容易になるメリットがあり，ま た，場合によっては，日本代理人を通さず直接 米国代理人とやり取りすることにより，知財コ ストの低減に役立つものと期待される。
巻末資料の中には，改正米国特許法の重要条 文が日米対訳で載っており，改正法の条文のニ ュアンスが分かるようになっている。
まとめると，米国特許の出願時から権利行使 時に至るまで，どのような手続きで何をしなけ ればならないかが簡潔にまとめられており，ま た，ページ数も少ないため必要な箇所にすぐに アクセスでき，実用書として非常に優れている。 よって，一読を勧めるものである。
（紹介者 会誌広報委員 Ｎ．Ｉ．）
