新刊書紹介
新刊書紹介
特許法の理論
編著 | 田村 善之 著 |
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出版元 | 有斐閣 A5判 532p |
発行年月日・価格 | 2009年3月25日発行 6,900円(税別) |
以下,構成と内容について簡単に紹介する。
第1編「特許法総論」
第1章:知財法の政策理論を特許制度に当てはめた場合について概観する。
第2章:創薬分野において,市場でベンチャー企業と大手企業の分業体制が進行している場合のバイオ特許制度のあり方。
第2編「特許権の技術的範囲」
第1章:ボールスプライン軸受事件における均等成立の第一要件(本質的部分の要件)の意義と解釈。第2章:特許法101条2号,5号で
規定される,いわゆる多機能型間接侵害制度の目的と適用要件。第3章:キルビー事件最高裁判決を基に,侵害訴訟における特許無効の抗弁
について論じる。第4章:包袋禁反言の法理の根拠と適用の要件。
第3編「消尽理論」
第1章:消尽理論の根拠,方法特許への適用可能性。第2章:キヤノンインクカートリッジ事件の最高裁判決を基に,消尽理論の法理につ
いて論じる。
第4編「特許権の救済手段」
第1章:特許権侵害時の差止請求に関し,請求対象,訴えの利益,被告適格の各論点について論じる。第2章:特許法102条に定める損害
賠償額の推定規定の要件の分析,最近の関連裁判例の紹介。第3章:侵害製品の流通過程において複数の侵害者が関与した場合の損害賠償額
の算定のあり方。
第5編「職務発明制度」
第1章:特許法35条の意義と要件,職務発明制度のあり方。
第2章:青色発光ダイオード事件控訴審和解勧告を基に,職務発明に対する補償金額算定のあり方について論じる。
第3章:
職務発明が他企業との包括的クロスライセンス契約の対象に含まれている場合の,従業者に対する補償金額算定のあり方。
第4章:職務発明
に関する準拠法選択に属地主義を適用すべきか否か,について論じる。
上記のように,対象とする論点は,いずれも特許制度の根幹に係る重要な課題や,近年注目を集めているトピックばかりである。これらに 対し著者は,豊富な判例や学説を参照しながら緻密に論考を進め,鋭い一人称の見解を与えている。500ページを超える大部の書であるが, いずれの論文も質が高く退屈させる部分がないため,特許法に興味がある者であれば一気に読めてしまうだろう。
ただ個別テーマの論文集ということもあり,本書が取り上げていない重要な論点もまだまだあると思う。これらについては,冒頭記した特 許法の体系書が一日も早く出版され,その中で論じられることを願わずにはいられない。
(会誌広報委員会 T.Y.)