新刊書紹介

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中国特許復審委員会審決選集 創造性

編著 中国国家知識産権局特許復審委員会 編著
出版元 東洋法規出版 A5判 645p
発行年月日・価格 2008年9月発行 定価6,000円(税別)

本書は、「特許復権委員会審決選集−従来技 術と新規性」に続く、中国知識産権局特許復権 委員会が編集した第二冊目となる案例解釈書である。

日本企業から中国への特許出願件数は毎年20 〜30%増加しているといわれており、日本企業 にとって中国における権利取得の重要性は増大 しているといえる。一方で、中国に特許出願し て権利化する際に、中国における創造性、すな わち日本でいう進歩性に関する要件について は、実務担当者にとっていつも頭を悩ます問題 となる。創造性(進歩性)の問題は、特に中国の実務に限ったことではないが、判断基準が極 めて抽象的であり、分野ごとに異なる判断がなされることも少なくない。

本書では、特許復権委員会が実際に携わった 案例から、創造性(進歩性)に係わる審決につ いて、約100件を精選して紹介している。これ らは、以下に示すように法律問題別に分類して いるだけではなく、技術分野別にも分類されて おり、さらにそれぞれの審決については、簡単 な事案の紹介、評論・分析、という形で紹介さ れている。評論・分析の部分は非常に明確に記 載されているものが多く、実務担当者にとって 非常に読みやすい構成となっている。

  • 第1章 創造性の基本概念
  • 第2章 創造性の判断における請求項の保護範囲の決定
  • 第3章 創造性判断基準
  • 第4章 従来技術の啓発
  • 第5章 異なる類型の発明の創造性判断
  • 第6章 異なる分野における創造性の判断
  • 第7章 創造性を判断する時の挙証責任

本書では審決の索引は収載されていないが、 目次の分類を見ながら、実務上知りたい部分に 関連する審決を探すことが可能であるので、そ の内容を読むだけでも、充分に実務に役に立て ることができるだろう。紹介されているこれら の審決から、中国における創造性(進歩性)が どのような基準で運用されているのかを理解す る上で、非常に参考となる情報を得ることがで きる。

中国における手続などの専門用語が、注釈な くそのまま使用されているため、中国の実務が 全く初めての方にとっては、若干の読みにくさを感じるかもしれないが、中国実務の担当者にとっては、創造性(進歩性)を理解する大きな助けとなる一冊であることは間違いないだろう。

(会誌広報委員 S.I)

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