新刊書紹介

新刊書紹介

米国での特許訴訟防衛マニュアル―ストーリーでわかる警告状対応の心得

編著 岸本 芳也 著
出版元 中央経済社 A5判 256p
発行年月日・価格 2007年12月20日発行 2,800円(税別)

日本における裁判制度とは異なる米国において特許紛争に巻き込まれた場合、いかなる対策を講じればリスクを低減できるかということを的確に理解しておくことは、米国で事業を展開する日本企業の知財法務担当者等にとって、もはや必須事項である。それ程、現在の米国におけるビジネス活動は知財リスクと隣り合わせの状況にあるように思う。

本書は、米国での特許訴訟実務に精通した著者が、なかなか理解することが難しいその全容を日本の裁判実務との比較等を交えながら出来るだけ分かりやすく解説を試みたものである。また、知識というものは現実に実践して初めて自分のものになるという事を実感することが多々あるが、本書は米国特許訴訟に関する仮想ストーリーを読者に提供することによってそれを実現しようとしている。

本書の構成は次のとおりとなっている。

I 米国での特許訴訟実務

  • 第1章 訴訟に至る前の対応・準備
    警告書を受理した場合の内容分析や分析結果等に基づく回答の注意点および特に警告先がパテント・トロールと考えられる場合の対策等、訴訟に至る前のリスク低減に資する対策が解説されている。なお、全章にわたって実際の対応におけるアドバイスが各解説の最後に簡潔に書かれており理解促進に有効である。
  • 第2章 米国における特許侵害訴訟
    英米法における判例法体系に関する解説を振り出しに、米国の裁判システムから特許侵害訴訟の特徴や現状について解説している。訴訟フロー図等適所に理解が図られるよう図表が掲載されている。
  • 第3章 訴訟に至った場合の対応・実務
    訴訟に至った場合における公判段階へ進むまでの各局面の様々な手続き、対応について解説されている。特にディスカバリーは読者にとって最も関心のあるパートであると考えられ、本章で一番頁を割いて解説を行っている。
  • 第4章 陪審裁判
    米国裁判で特徴的な陪審裁判について、公判前会議の内容、陪審員の選定から評決および判決までの審理の流れ等について解説されている。

II 米国特許訴訟ストーリー

  • 第1章 警告状の受理からライセンス交渉
  • 第2章 訴状提出から公判前
  • 第3章 公判

日本企業のシンガイ・スポーツ社へ1通のレターがまい込んだことをきっかけとして展開する特許権者(原告)と侵害被疑者(被告)との特許侵害訴訟ドラマが主に被告であるシンガイ・スポーツ社の視点から語られる。これまで本書で解説された特許訴訟実務に関するポイントがドラマの随所にちりばめられ、仮想の体験を通じて本書の理解が進む。

実践に活用できる知識を身に付けるには、「それでは具体的にどうなるのか?」ということをしっかり自分で考えることが肝要である。解説編と仮想ストーリー編からなる本書は、米国特許訴訟を具体的にイメージできる待望の書として、知財訴訟に関心のある方に是非おすすめしたい。

(会誌広報委員  S.K)

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