新刊書紹介
新刊書紹介
英文ライセンス契約実務マニュアル[第2版]
編著 | 小高 壽一 著 |
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出版元 | 雄松堂出版 A5判 706p |
発行年月日・価格 | 2007年11月29日発行 定価5700円(税別) |
特許やノウハウ等知的財産は、企業にとって重要な経営資源である。この経営資源を有効活用するための最も典型的な手段がライセンス契約である。本書は、英文特許・ノウハウライセンス契約について、理論と実務の両面を「実務者の視点」から総括した実務マニュアルである。
本書は、「第1部 総論」「第2部 各論−ライセンス契約条項」「第3部 資料編」の3部構成になっている。以下、簡単に紹介する。
まず、「第1部 総論」では、英文ライセンス契約概説、ライセンシングポリシー、ライセンス交渉の3テーマについて述べている。ランセンサーとライセンシーの両方の立場に立って論じており、実務でどちらの立場になった場合でも役立つようになっている。
「第2部 各論−ライセンス契約条項」では、事例を通じて、訳文の紹介や解説、チェックポイント等を考察している。特に、条項のチェックポイントでは、「基本的な考え方」「公正取引委員会の考え方」「実務の考え方」の3つの視点から考察して、理論と実務の両方から論じたものとなっており、実務者にも学識者にも有益である。特に、ランセンサーとライセンシーでは、色々な場面で基本的な姿勢が異なるので、技術供与契約と技術導入契約の両方を例に挙げて、実務の考え方を示している点は嬉しい限りである。
「第3部 資料編」では、書式のサンプルや参考文献を纏めて紹介している。
本書は「第2版」での出版である。初版の出版からこれまでの数年間に改正された国内外の知財関連法等の改正等を補足的に取り入れ、初版の基軸は動かさず、改訂した。これにより、初版からページ数は増加したものの、構成は変えていないので、初版本利用の各位にも違和感無く、第2版を利用できるようになっている。
ここで、本書に織り込んだ改訂の内容について列記しておく。
- 「特定通常実施権登録制度の創設」と「米国破産法」
- 「欧州委員会規則No.722/2004」
- 中国の「技術輸出入管理条例」
- 「新日米租税条約」
- 「公取指針」
- 秘密保持命令について
- UCC規則(2003年) について
- インドの技術移転契約の自動認可条件について
- 訳文の精査について
- その他の改訂について
以上、紹介したように、本書は英文ライセンス契約について、理論と実務の両方を兼ね備えた有用な1冊である。特許が企業活動における重要な経営資源と認められるにつれ、このような契約実務者向けの本は、時宜を得た出版であるといえる。本書を自信をもってお勧めしたい。
(会誌広報委員 M.S)