新刊書紹介

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知的財産権侵害訴訟実務ハンドブック

編著 日本弁理士会 編著
出版元 (財)経済産業調査会A5判 462p
発行年月日・価格 2007年2月28日発行 4,300円(税別)

知的財産権に関する訴訟を早期に解決するため、弁理士の専門知識を今まで以上に活用することが検討され、平成15年から弁理士を対象とした能力担保研修が始まった。
能力担保研修とは、民法や民事訴訟法の基礎知識があることを前提に、民事訴訟の実践的な知識を、講義や演習により習得するものである。
そして、この研修を受けた弁理士は、特定侵害訴訟代理業務試験に合格することにより、弁護士が訴訟代理人となっている特定侵害訴訟事件に限って弁理士に代理権を付与する、いわゆる付記弁理士の資格が与えられる。
本書は、能力担保研修の受講生が使用する基本教材を、一般にも利用できるように編纂したものである。A5判で462ページというコンパクトな外見、理論と実務がわかりやすく体系的にまとめられた内容、さらに巻末には各種書面の書式集も用意されており、全体として取り扱いやすい、まさにハンドブックとよぶにふさわしいものとなっている。
以下、本書の構成を簡単に紹介する。

  • 第1章 侵害訴訟の実務
    導入部分であり、弁理士に向けた心構えや、訴訟手続の概略がまとめられている。
  • 第2章 訴訟の受任から終結まで
    受任から終結までの流れに沿って、各段階での注意事項が解説されている。
  • 第3章 訴状
    訴状における各種の記載事項が、豊富な文例とともに解説されている。
  • 第4章 答弁書及び反訴状
    答弁書の形式、内容、提出、効果、被告主張について、また、反訴の意義、要件、手続について解説されている。
  • 第5章 準備書面
    準備書面の意義、記載事項、提出時期、効果、類型が解説されている。
  • 第6章 知的財産権侵害訴訟における立証
    侵害論や損害論の立証、文書提出命令、証拠保全について解説されている。
  • 第7章 知的財産権侵害訴訟における和解
    和解の意義、注意点について解説されている。
  • 第8章 無効審判及び訂正審判と侵害訴訟との関係
    審判事件や審決取消訴訟との関係、無効審判の進行との関係について解説されている。
  • 第9章 上訴
    上訴、控訴、上告について解説されている。
  • 第10章 仮処分
    手続の概要、管轄、当事者、保全、書面、審理、担保、不服申立てについて解説されている。

本書は、前述の能力担保研修のテキストがベースとなっているため、受講生を意識した内容も窺えるものの、訴訟に関わる機会のある一般の知的財産関係者として知っておきたい知識が多々記載されており、手元においておきたい一冊としておすすめする。

(紹介者 会誌広報委員 A.H)

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Q&AでスッキリわかるIT社会の法律相談

編著 外国共同事業ジョーンズ・デイ法律事務所 編
出版元 発行者:小泉 定裕
清文社 A5判 368p
発行年月日・価格 2007年2月15日発行 2,520円(税込)

IT(情報技術)の急速な発達に伴い、企業活動において、電子メールやインターネットは日常的なツールとなっており、使用できない状況が起こるとたちまち業務が滞るほど必須のものになっている。
電子メールやインターネットは、紙文書ではなく電子データによるやりとりを日常化するため、ビジネスの効率性は格段に上がる一方、法律的な有効性に照らして大丈夫だろうかと不安に感ずる場面も少なからずあるのではなかろうか。
本書はこうした不安に感ずる場面のうち76ケースを取上げ、QA方式でわかりやすくまとめたものである

本書の構成は次のとおりとなっている。

  • 第1章 会社法
    株主総会におけるIT化、電子公告制度の活用における法律上の留意点について解説している。
  • 第2章 証券取引法
    IT化の進展により、大きな変化をもたらした証券取引における実務的な問題を解説している。世間の注目を浴びたToSTNeT取引について詳しく取上げられており興味深い。
  • 第3章 個人情報保護法
    企業の信用に関わる重大な問題として、業務上の関心が高まっている個人情報保護の問題について、顧客情報の委託先に対する措置に関する留意点や業務上誤ってメールを誤送信した場合の問題点等、普段よく疑問に感じるケースがセレクトされ、分かりやすく解説している。
  • 第4章 電子署名・電子認証
    電子商取引等における電子署名・電子認証が果たす役割について解説している。普段利用する機会も増えたインターネットショップ等における認証の仕組みが理解できる。
  • 第5章 インターネットビジネス
    近年、問題となっているファイル交換ソフトウェアの提供事業者が直接の著作権侵害行為者として責任を負うかなど、インターネットビジネスにおける著作権法上の問題を中心に知財面での興味深いケースが取上げられている。
  • 第6章 ITと危機管理
    掲示板に不利益な情報が書き込まれた場合の対応等、インターネットの情報伝達力を踏まえた企業の危機管理のあり方について解説している。
  • 第7章 労働法
    従業員に貸与しているパソコンの使用方法にかかわる問題、職務著作の問題等使用者と被雇用者に関わる問題について解説している。
  • 第8章 ITと税務
    特にソフトウェア取引の課税関係の留意点について解説されている。

76ケース全てにおいて、初心者のことも強く意識し、かつそれぞれの実務者にも役立つよう、解説が的を射たものとなっており、好感のもてるQA式解説集である。コンプライアンス重視の現代社会において、実用的な1冊としておすすめしたい。

(紹介者 会誌広報委員  S.K)

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