新刊書紹介

新刊書紹介

ソフトウェア知的財産−法律から実務まで−

編著 加藤浩一郎 著
出版元 社団法人発明協会 A5判 250p
発行年月日・価格 2006年4月27日発行 2,000円(税別)

ソフトウェアを知的財産権として保護しようとする認識は、近年急速に高まってきており、これにあわせ、ソフトウェアの著作権あるいは特許権を巡る企業間での訴訟事例も増加傾向にある。私の所属する会社でも、ソフトウェアに関する権利関係の相談が日常的に増えてきており、多くの企業の知財部門にとって、ソフトウェアに関する法的な知識は必要不可欠になってきているのが現状である。

本書は、上記背景およびニーズにこたえるため、ソフトウェアはどのように知的財産として法的に保護されるのかについて、その法律的な側面から実務を行うために必要な知識までをまとめたものである。

本書は、次の4章から構成されており、ソフトウェアを通じて知的財産法における基本的事項から最新のものを含めた実務まで順序だてて理解できる構成となっている。

  • 第1章 (総論)ソフトウェアの知的財産法による保護について
  • 第2章 ソフトウェアの特許法による保護
  • 第3章 ソフトウェアの著作権法による保護
  • 第4章 ソフトウェアのその他の知的財産法による保護

各章とも非常にわかりやすく説明されており理解が進むものであるが、個人的には、第2章においてソフトウェア発明とその特許請求の範囲の記載例や権利行使を考慮したクレーム作成例について、丁寧な解説がなされておりソフトウェア発明の権利としての捉え方理解に役立った。

そして、第3章ソフトウェアの著作権法による保護については、プログラムの著作者の権利について、コンピュータ装置の内部の機能やコンピュータ・プログラム技術に関する特有の権利問題や特許権と比較した特徴について解説がなされており、大変興味深い。

また、巻末に「コンピュータ・ソフトウェア関連発明の審査基準」や著作権法の条文のうち、特にソフトウェア(プログラム)に関連の深い条文を抜粋した資料等がまとめられており、本書の有用性を高めている。

本書は、知財部門はもちろんであるが、ソフトウェアのエンジニア・研究者に一読いただければ、身近なソフトウェアを通じて知的財産権の概要理解が進むことから、知的財産権確保に向けた部門間でのより円滑な連携がなされるものと考える。ソフトウェアに関する法的知識理解の基本書として、会社におかれることをおすすめする。

(紹介者 会誌広報委員会 S.K)

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