新刊書紹介
新刊書紹介
中国知的財産管理実務ハンドブック
編著 | IPトレーディング・ジャパン株式会社編著 |
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出版元 | 中央経済社 A5判 589p |
発行年月日・価格 | 2006年5月20日発行 6,400円(税別) |
私の所属する会社でも、ご多分に漏れず中国への進出と事業依存度は年々高まっている。
特にここ1〜2年のうちに私の所属する部門で中国を訪れることなしに仕事をしているのは筆者だけという状況である。せめて何か、本だけでも読んで情報を仕入れておかなくては・・そんな焦りにも似た気持ちの中で、偶然にも出会ったのが本書である。
タイトルを見てお気づきの読者もいるかもしれないが、同社から一昨年発売された、知的財産管理実務ハンドブックの中国版である。
本書は以下に示す10の章から成り立っており、中国における知的財産権の管理、創造、保護、活用、評価の全てを網羅している。
- 序 章 中国政府の知財戦略
- 第1章 中国事業・経営に活かす知的財産権管理
- 第2章 知的財産管理の対象
- 第3章 知的財産の管理
- 第4章 知的財産の創造
- 第5章 知的財産の保護
- 第6章 知的財産にまつわる攻撃と防御
- 第7章 知的財産の活用
- 第8章 知的財産管理に関する各種規定・契約管理
- 第9章 知的財産の評価
中でも私がお薦めする第4章から第8章について簡単に紹介しておきたい。
第4章では、職務発明の取り扱いに関する問題、R&Dセンターの設立、運営に関する問題、委託・共同開発における成果の取り扱いに関する問題、産学官連携の問題などが、実例も交えながら平易に解説されている。
第5章では知的財産権の出願〜登録のプロセスについて、国内へ出願する場合と外国に向けて出願する場合とにわけて解説されている。
第6章では紛争の種類、予防、解決システム等について実例を挙げながら解説されている。
第7章では、ライセンスに関する基本的な考え方、譲渡、技術の輸出入、担保制度などについて細かく解説されている。
また、所々章末に見られる、各リーディングカンパニー、大学のインタビューも良いアクセントとなっており読むものを飽きさせない。
そして、特にお勧めするのが、第8章である。
技術委託契約書、技術共同開発契約書、技術ライセンス契約書、技術コンサルティング契約書、技術サービス契約書におよぶ5つの契約書について、そのひな形が、左頁に日本語で、それに対応して右頁に中国語訳で掲載されているのである。さらに、技術契約認定登記プロセスについても同様に、日本語に対応した中国語訳が掲載されている。
正に今すぐ使える実務書であり、中国実務の担当にとって必携の書と言えよう。
(紹介者 会誌広報委員 H.Y)
新刊書紹介
「知的財産法の理論と現代的課題」
―中山信弘先生還暦記念論文集―
編著 | 編集代表:相澤 英孝、大渕 哲也、小泉 直樹、田村 義之 |
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出版元 | 弘文堂 A5判 705p |
発行年月日・価格 | 平成17年12月15日発行 9,500円(税別) |
本書は、日本における知的財産法学の第一人者と評されている中山信弘先生の還暦を記念して刊行された論文集である。
本書「あとがき」では、中山先生のこれまでの代表的な作品と研究活動が紹介されており、
これまで幅広い分野で、わが国の知財法学の第一人者として活躍されていることを窺い知ることができる。このような中山先生を慕う研究者による寄稿論文が収められた本書には、特許・実用新案法、著作権法、不正競争防止法、関連分野に関する現代的課題について言及されている。
本書の目次を見ると、
- 第I編 特許法・実用新案法
- 第II編 著作権法
- 第III編 不正競争防止法・意匠法・その他
- 第IV編 関連分野
について、いずれも各界で著名な豪華執筆者による論文が34本も収録されており中山先生の還暦記念に相応しい一冊であると思う。
第I編では、職務発明や均等論、並行輸入につき裁判例に基づく特許法理論の紹介に始まり、今日抱えている課題について述べられている他、全15稿の論文が収められている。
第II編では著作権に関する論文が4稿、第III編では不正競争防止法についての「周知性」や「混同」の概念、「侵害警告と不競法の関係」についての論文の他、EU意匠法の独自性要件といった国際的な課題を含む5稿の論文が収められている。
そして第IV編には、条約による国際的問題や属地主義に関するテーマから、宇宙における特許、その他に判定制度や特許契約についての経済学的考察等、バラエティ豊かな論文が10稿収録されており、個人的にはこの第IV編が興味深く読めた。
本書は、総ページ数が705頁と読み応えあるボリュームであるものの、各テーマについて文頭で問題の所在が明確に指摘されており、論点のポイントがわかり易いため、個々の関心あるテーマから読み始めることが出来るものと思う。そこで、会員企業の皆様も是非一読されてみては如何かと思う。
(紹介者 会誌広報委員 C.K)