ちょっと一言

「家宝」4月号編集後記より

  今年の特集号は,いかがでしたでしょうか。我々会誌広報委員会の熱い思い,そして執筆者のみなさまの豊富な知見が詰まった1冊となっておりますので,ご愛読頂けましたら幸いです。
 この4月から幼稚園に通う娘と,1年ほど続いているやり取りがあります。娘の「なんで?」に答えることです。最初の頃は,何度も同じことを聞いていましたが,最近では,私が答える前に,すぐに「〜だから?」と 自分の考えを言ったり,私が間違えると「違うよ,〜だよ」と返されることもしばしばです。日に日に理解力,記憶力がついてきたことを実感します。成長に目を細めるばかりですが,先日こんなことがありました。
 妻がネックレスを失くしてしまいました。どうやら娘と公園で遊んだり,買い物をしている間に運悪く外れ,気づかぬうちに落としてしまったようです。帰宅した私に,妻は落ち込んだ様子で話しながら,堪らず 泣き出しました。半年前に一緒に選んだ誕生日プレゼント。「大きくなったら,私にも同じの買ってね」そう目を輝かせる娘の姿もありました。いつか一緒につける日を夢見ていた,思い出深いネックレス。
 娘は妻の涙を見て,走り去りました。動揺しちゃったかな,と追いかけようとした瞬間,ティッシュを手にして駆け戻り,心配そうに妻の頬を拭っています。「新しいのを買いに行こう」と一緒に慰めていると, 「私の財布に入ってる100円あげるから,使ってね。この前ママにもらった100円だよ。だから,もう泣かないでね」と続けます。「ママ,なんでまた泣くの?」そんな心優しい娘の姿に,妻の涙は,感動の涙へと 変わっていました。私がそう伝えると,娘は照れくさそうな表情を浮かべ,妻に抱きつきました。
 3歳の出来事,きっと数年もしないうちに忘れてしまうことでしょう。でも,決して忘れることのないように…。「リーダーを務めた特集号は,家宝になりますよ」先輩のその言葉を胸に,心血注いだ1年間。 私だけの宝ではなく,文字通り家宝になるように,この特集号の最後のページにしたためておこう。娘が「なんで?」とはもう聞かなくなったその頃,そして,二人がお揃いのネックレスをつけたその頃に, この1年を,家族で振り返ることができますように。

(J.T)


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