ちょっと一言

「ラストワンマイル」9月号編集後記より

 横になって文字を追いかけると寝つきが良いことを発見したときから,枕元に幾つか本を置くようにしている。いつものように速攻で眠るつもりで横になり,ページを捲り始めるも,何故かその日は心地良く文字を追いかけ始めた。
 それは,ある作家が日本からドイツに移住して,その土地での何気ない生活をつづったエッセイ。その中で印象に残ったものの1つは,ドイツにおける宅配事情。何でも,ドイツでは日本のように再配達のシステムが整っていないようで, 宅配業者は届け先が不在の時はご近所さんに預けるらしい。昔ながらのご近所付き合いが根強く残っていて,ある意味うらやましさを感じ始めた矢先にそれは間違いであることに気づく。どこまでが真実かは不明だが,重い荷物のときは,上の階まで行かず,下の階の住人に預けてしまうこともあるという。日本の集合住宅でこれをやられると,全く接点のない人の所に,自分宛の荷物を受け取りに行くこととなる。自分であれば何とも不合理さを感じてしまうだろう。 あのドイツであってもラストワンマイル対策には苦労している。

 そういえば,日本では人手不足もあり,不在時の再配達の問題が頻繁にニュースで報道された時期があった。時期を同じくして,自宅に宅配ボックスを設置してみることにした。インターネットで商品を購入する機会が増えていたこともあり, 宅配業者に再配達のお願いをする手間が減り,効果あり。業者さんにも僅かばかりだがメリットがあったはずだと信じたい。しかし,よくよく考えると,この宅配ボックスの手法は,治安が良い日本特有のシステムなのかもしれない。 宅配ボックスを狙った盗難だけでなく,食料品には異物を混入されるおそれがあるから,治安の悪い地域や国では不用意に宅配ボックスの利用はできないかもしれない。安心して宅配ボックスを利用できる,今の日本の状況が1日でも 長く続くことを願ってやまない。

 宅配業者のラストワンマイル問題は根が深い。きっとそこには顧客が抱える課題を解決すべく多くのビジネスチャンスがあるだろう。翻って知財業界のラストワンマイル,そして我々知財管理誌のラストワンマイルとはどんな課題だろう。あれっ?速攻で眠れるはずだったのに。

(E.H.)    

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