ちょっと一言

「桃の節句」2月号編集後記より

 春とは名ばかりの厳しい寒気の日が続いていますが,桃の節句(雛祭り)も間近となり,春の訪れを待ち望む人も多いのではないでしょうか。

 雛祭りといえば,雛人形を飾り,ちらし寿司を食べて女の子の健やかな成長を願う日本の伝統行事ですが,この雛祭り,元は今とは少し違う行事だったのをご存知でしょうか。雛祭りの起源は,季節の節目や変わり目に災難や厄から身を守り,よりよい幕開けを願うための 節句が始まりとされています。また,雛祭りに欠かせない雛人形も,今のように飾るのではなく,昔は川に流していたということですから驚きです。日本には数多くの伝統行事がありますが,起源を調べてみるのも,おもしろいかもしれません。

 さて,我が家も,もうすぐ4歳になる娘がいるため,今年も雛人形を飾る予定ですが,思い返せば3年前の今頃,まだ小さかった娘を抱えながら,雛人形の産地として有名な埼玉県の岩槻を訪れました。 この町には,いたるところに雛人形の販売店が建ち並び,寒い中でも,多くのお客様で賑わいをみせていました。

 我々も数多くのお店に入り,様々な雛人形を見た結果,もはや何が欲しいのか分からなくなるまでに疲れ果てていました。そんな中,人里離れた場所にぽつんとある小さな個人店を見つけ,恐る恐る店の中に入っていきました。お店のご夫婦に迎えられ,店内を一回りすると,他の店では感じなかった私の心を惹きつける雛人形がありました。

 その雛人形について聞いてみると,最近,ご夫婦にもお孫さんができたそうで,娘さんが子供のためにお選びになった予約済みの雛人形であると伝えられました。その事情を聞いて,1度は諦めてお店を出ましたが,諦めがつかず,改めて店を訪れ,譲ってもらいたい旨を伝えました。ご主人いわく,娘さんは,「欲しいお客様がいれば, お客様を優先しても良いよ」と言われたそうで,購入させてもらうに至りました。

 当初予定していた予算を超えることとなりましたが,娘のためと言い聞かせ,結果的には親のこだわりを全面に押し出した雛人形となりました。しかし,昨年までの娘でいうと,この雛人形を出しても,特に喜ぶ気配もなく,寂しい限りでしたが,4歳を手前に今年は,興味をもってくれるのではと淡い期待をしています。

(T.M.)    

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