ちょっと一言

知財管理6月号編集後記より

 6月に入り、いよいよ梅雨の季節になりました。梅雨といえば、雨が多い、蒸し暑い、洗濯物が乾かない、食中毒が増えるなど、あまり過ごしやすい季節ではありませんが、そんな中、6月ならではのものとして、「梅雨」の文字にも含まれている、「梅」があります。

 私が小さい頃、ちょうどこの季節になると、祖母が梅干作りを始めました。大量の梅を買ってきて、晴れた日に家の外で梅を広げ、梅が熟すのをしばらく待つのですが、その時の梅の香りが甘酸っぱくて、とても爽やかな良い香りだったのをよく覚えています。祖母お手製の梅干はかなりしょっぱくて、小さい頃は苦手だったのですが、梅が熟すまでの香りはとても好きで、香りに誘われて、何度もその梅をそのまま食べたいなあと思ったものです。

 香り、においというのは、人間の五感の中でも特に記憶に残りやすく、香りを嗅ぐと、その香りを嗅いだ季節、情景がすぐ思い出される、といった経験は皆様もよくあるのではないでしょうか。

 最近は、香りを利用して企業のブランドイメージを顧客に印象付けるというブランド戦略が注目されており、これをブランドセント(Brand Scent)と呼んでいます。たとえば、企業の店舗などに香りを漂わせることで、その香りを嗅ぐと、その企業の店舗、商品が思い出され、ブランドイメージを強く印象付けることができるといった効果が期待されています。

 現在、日本においても、においを商標法の保護対象とすることが検討されています。知財実務に携わる者としては、実際の審査はどうするのか、類似の範囲はどこまでなのか、など気になる点は様々ありますが、人間の記憶と直結しやすい嗅覚を利用したブランドセントというのは、確かに効果的なブランド戦略の一つなのかもしれません。

 さて、今月の「知財管理」誌はいかがでしたでしょうか。今月号では、冒頭にミニ特集「中国」として、中国関連の記事を4本取り上げました。中国における知財実務は、皆様にとっても注目のテーマではないかと思います。これらの記事が皆様の中国での企業活動の一助になれば幸いです。今後も、皆様にとって有益な記事を提供できるように努めていきますので、ご愛読のほどよろしくお願いいたします。

(Y.A.)

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