ちょっと一言

おまけコレクション

昔から販売促進を意図してか、おまけの添付された食品が数多く存在している。
近年のおまけは、相当凝ったものが多く、消費者の人気も高いようで、おまけ付食品のみを陳列した専用コーナーを設けた食料品店も存在している。
特に、近年、おまけの添付されたペットボトルを目にする機会が増えてきたように思える。
このようなおまけは、アニメのキャラクターだったり、電車や車などの乗り物の精巧な模型だったりして、マニア心をくすぐるものが多い。

昔は、どのような種類のおまけが添付されているのか、外観から分からないようになっており、所望するおまけをゲットできるまで、その商品を買い続ける必要があった。
したがって、複数の商品の詰め込まれたダンボールの上から何番目にどのような種類のおまけが入っているなど、怪しい業界情報が飛び交い、陳列される前段階、つまりダンボール詰めの段階で、商品を購入するようなこともあった。
また、おまけが、袋入りのものである場合、どこで修行をしたのか不明であるが、袋を触り、おまけの形状を確認し、所望のおまけをゲットするという、触覚を研ぎ澄ませた輩も出てきた。こういった一芸に秀でたものは、子供達のヒーローであり、同年代の女子にモテモテであった。

一方で、細々商品を買い集めるのでなく、ダンボールごと買って行くという、所謂、大人買いなるアウトローも登場した。
当時、彼らは、子供だった私にとっては、ほそぼそ田んぼを耕して、ようやく収穫の時期になったかと思うと、作物を根こそぎもっていく悪代官のような存在であった。
子供の頃には、大人買いをするような大人には、絶対なるもんか!と心に決めていた。
しかしながら、就職して給料をもらって、まずしたことが、チョコレートの中に景品が入っている商品を、ダンボールごと買ったことだった。
このように、大人買いをすると、すぐにおまけを揃えることができ、時間のないビジネスマンには、最適なビジネスモデルであるということが、ようやく理解できるようになってきた。

上述のように、従来は、どのようなおまけが添付されているのか判別できない状況で、商品を購入する必要があった。
しかしながら、近年、景品表示法の影響により、どのおまけが添付されているのか、ひと目で識別できるようになっている。
したがって、大人買いという荒業を目にすることも減り、子供たちの夢がつぶされることも少しは減ったのではないだろうか。

一方で、おまけの種類が判別できるようになったからといって、所望のおまけを簡単にゲットできるとは限らない。
コンビニのペットボトル売り場では、冷蔵庫の構成上、ペットボトルを前から順に取り出すようになっている。そして、前の一本を取り出すと、重力により、後ろのペットボトルが前方に移動してくるような仕組みになっている。
このようなコンビニで、所望するおまけの添付されたペットボトルを取得するのには、相当苦労する。
まず、最前列に、所望するおまけの添付されていないペットボトルがある場合、最前列のペットボトルを取り出し、次列の確認作業を行う。
これを、所望するおまけを見出すまで行うのであるが、時間もかかるし、人目もあるし、取り出したペットボトルを両手に抱える必要もあり、相当恥ずかしい。
しかも、全部チェックしたにもかかわらず、所望のおまけを見出せなかった場合には、単にペットボトルを冷蔵庫に戻す作業だけが残り、もっと恥ずかしい。
最近、買い物カゴを手にし、カゴをバッファとして、所望のおまけのついていないペットボトルを退避させ、如何にも買いますという雰囲気を醸し出す、という技を編み出した。これにより、少しは、おまけ確認作業がはかどるようになったと思う。

こんなに苦労してゲットしたおまけの行く末であるが、これがまた悲しい。
私があきっぽい性格であることも原因だが、全種類コンプリートさせると、どうでもよくなってしまうのだ。
集めている最中は、本棚や机上に並べて飾っておくのだが、全種類揃い、別のおまけを集め始めると、既に収集したものの取扱いに困ってしまう。
そこで、ダンボールの中にしまったり、人の形状のおまけなら、ベランダに並べて、ハトよけに使ってみたりしてしまう。
しかし、ハトよけにはあまり役立っていないようだ。ハトに連れ去られてしまったおまけもある。
ベランダでのハトとおまけとの一方的な格闘後、ハトが敗者のおまけを連れ去る瞬間を見た。これは、かなり衝撃的であった。まるで、大きな鳥に連れ去られる人間を映した映画を見ているようであった。
このほかに、会社の後輩の机の上に、人知れず並べておいてあげるのも最近の処理法になっている。
なかなか喜んでもらえていると思うが、どうであろうか?

ところで、おまけに限らず、私の収集癖は、遺伝ではなかろうか、と思い始めてきた。
私の親父は、ゴルフのパターや洋酒を集めていた。
極めつけは、うちの伯父さんである。
清涼飲料水のビンの缶キャップ、たばこのケースなど、戦後の子供のコレクションの王道を極めつつも、さらに、チューインガムを集めていたそうである。
しかも、このコレクション、チューインガムの袋だけでなく、噛み終ったものも含まれている。
自分で噛んだものなのか、落ちていたものをひろってきたものなのかは定かではない。おそろしくて誰も聞けないのである。しかもかなりの量を所有していたそうである。
なぜそのようなものを収集する道に進んでしまったのか、今は不明である。

さて、私には、今後収集してみたいアイテムがある。
それは、観光地で、必ずといってよいほど売られている、地名の印字された提灯である。
あれは、一生かかってもコンプリートするのは困難なものに違いない、と考えている。
全種類揃えるのは相当困難ではあるが、どこに行っても売っているし、部屋に飾ると、旅情までくすぐってくれるというおいしいアイテムだと思う。
しかも、印字されている文字を覚えれば、日本地理の勉強にもなり、更に、地理当てクイズまで出来るという優れものだ。
ただし、我が家では、以前より、提灯収集の稟議をまわしているのであるが、かっこ悪いという一方的な理由で請求却下され続けている状況である。

こうして考えると、人間、誰でも収集欲というものがあり、人それぞれ色々なツボがあることに気付かされる。
自分では普通と思っているコレクションも、他人にとっては相当変なものである可能性がある。
他人のコレクション自慢話を色々聞いてみたいものである。

(T.O)

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