役員談話室

第4回知的財産権法研究会との最近判決例合同研究会を振り返って

 人の心理は微妙であります。個体差にもよりますが環境も大きく作用しそうです。環境に慣れれば、人の考動にゆとりができ持てる力を最大限に発揮するものです。言い換えれば、人を鍛えるためには、その様な体験をする機会を可能な限り多く持てるように工夫することが大切なように思います。

 話し変わりまして、本研究会は2012年度に発足し、今回で4回目を迎えることになりました。 本研究会は、若手弁護士とJIPA参加者による最近判決例のグループディスカッションを主体とするものです。その発足当初は、法律・知財訴訟に長けた超専門家である弁護士の先生方の議論や解説を拝聴するような状況でありました。 ところが、今回は、会を重ねこの種の雰囲気に慣れてきたこともあってか、JIPA参加者も積極的に議論に参加し自主的な発言も相当多くなりました。

 特に今回のテーマは「特許発明の作用効果」であり、実際の裁判例(重量調整オール事件、コネクタ用銅合金事件、薬品貯蔵方法事件)を採りあげて、特許侵害訴訟における特許発明の作用効果がどのような局面で問題になりえるかを議論しました。その議論では、明細書(作用効果)の記載事項が勝敗にどう影響するか、訴訟に耐えるためには明細書に作用効果をどこまで詳しく記載すべきかどうかがポイントとなりました。

 特許侵害訴訟を上手く戦っていくためには、被告が訴える如何なる争点にも対抗できる程度に明細書の記載事項が十分で在ることが望ましいことになります。一方、日常の特許出願業務においては、どこが訴訟の争点になるか予測し難しいこと、先願主義の下では可能な限り早く出願しなければならないこと、書き過ぎによる反論を避けたいこと、営業機密保持との関係より記載を制限することなどから、明細書に作用効果を十分に記載しない/できない事情もあります。これら両者のバランスはなかなか難しい課題であります。

 この課題について、特許訴訟を戦う弁護士の視点、特許出願業務に携わるJIPA参加者の視点から、種々の発言が飛び交い、有意義な意見交換が行われました。 弁護士より、今回の議論を通じて、JIPA会員企業の特許出願業務においては特許訴訟で作用効果がどう影響するかも意識して、訴訟に耐える明細書の作成に心がけて欲しいとのアドバイスがありました。 JIPA参加者にとっては、作用効果が争点となった特許訴訟事件の議論を通じて、明細書の在り方の理解が深まりました。また、通常、弁護士は明細書の作成に携わっていないため、JIPA参加者から、実際の明細書作成への取り組み方や作成上の諸問題等々を聴く機会ともなり、弁護士にとっても参考になりました。その様な意味合いから、双方にとって有意義な研究会でありました。

 本会の終了後、小松先生(知的財産権法研究会代表弁護士)と今後も本研究会を継続する旨確認し合いました。また、JIPA会員の知財実務者にとっては、実際の事例に基づき弁護士とざっくばらんに議論する経験ともなり、且つ参加者の要望にも応えていくため、次年度も引き続き本研究会の段取りを進めることにいたします。 今回の進行を担って頂きました小松先生、伊原先生にこの場をお借りして感謝の意を表します。  

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  1. 日 時:2013年12月20日(金)17:00〜19:30
  2. テーマ: ・・・特許権侵害訴訟における『作用効果』の意義・・・
  3. 会 場:JIPA関西事務所(堂島アバンザ6F)
  4. 参加者:弁護士16名、JIPA会員18名、JIPA事務局1名
  5. 式次第:
 1)開会挨拶17:00〜17:05
   小松陽一郎弁護士(知的財産権法研究会代表、小松法律特許事務所長)

 2)第1部(課題提示)17:05〜17:35(30分)
   伊原友己弁護士(三木・伊原法律特許事務所)

 3)第2部(グループディスカッション)17:35〜18:35(60分)
   各グループにおいて、伊原先生が提示した課題・問題点等について、自由闊達に話し合っていただきます。

 4)第3部(グループ発表)18:35〜18:55(3分/1グループ)
   各グループにおいて、発表者を決めて頂き、グループで話し合った概要を簡潔に発表していただきます。

 5)第4部(解説と全員討議)18:55〜19:30(35分)
   小松先生・伊原先生による解説/総評後、全員で討議していただきます。  

以上


岡崎 秀正(日本知的財産協会 関西事務所長)

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