役員談話室

”知的感動を奮い起こす論理の展開”―弁理士会110周年式典の特別講演から―

2009年08月17日

 昔は、米国で受け入れられている理論を日本の裁判所で展開しても、外国は外国、日本は日本という考え方であったが、今日は違う。“裁判官の知的感動を奮い起こす論理の展開”を期待するとは、特別講演をされた知財高裁の塚原所長のお話の一節である。発明のすばらしさをSecondary Meaning, Commercial Successなどにより立証すれば、受け入れる素地はあるということ。裁判官は、知財部門に限らず海外へでかけ海外の裁判官と意見交換する機会が増えてきていると聞いていたが、裁判官の国際化により、判断基準も変わってきたようである。国際水準の高い議論を望むとのことである。

 商標においては、独占適応性という−法律用語にない−考え方を導入していると話された。建国の父の名前とか国際的に保護しなければならぬものは保護する。国際信義の観点を加味しなければならない。当該国で許されないものを認めるべきでない、人の共有財産と見るべきではないかという姿勢である。中国において青森などがりんごの商標として登録されているが、このようなロジックで排除してもらいたいものである。また商標管理の不始末で更新を忘れた場合など無主物先占的扱いになっていたが、果たしてそれでいいのかとの疑問も投げかけられている。

 裁判官から目新しいお話を聞くことができ、久々に知的感動を覚えた。

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中山 喬志(日本知的財産協会 専務理事)

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