役員談話室
知財協に集う若い人へ
2009年03月10日
6年間の知財協専務理事の仕事を3月末に終えることとなりました。65歳になって定年退職です。多くの方から「とてもそんな歳には見えない」とお世辞を言われますが、もしそれば嘘でないならその理由は、知財協での仕事が遣り甲斐を感じ楽しかったからです。何故遣り甲斐を感じ、楽しかったのかも簡単です。自分は社会に貢献しようとがんばっていると思えて、且つそのために実現に向けて努力していることが少しずつ実現出来てきたからです。
私は2003年に知財協に来るように請われた時に一つだけ条件を付けさせて貰いました。「私に会員企業の若い人を教育させて欲しい」と言いました。人材育成委員会の皆さんや歴代理事長以下の役員の皆さんのお陰でそれがやれました。勿論、教育に100%ということはありませんから、今、考えてみると、もっと色々やるべき事、やりたい事もたくさんありますし、私がやってきた事も反省すべき点も多々あるでしょう。
例えば「知財変革リーダー研修」、「戦略スタッフ研修」は私が企業にいた時から考えていた“経営の進化に影響を与えることのできる知財専門家集団のトップ”と“それを支えながら、将来自分もそのようなトップになることを目指す知財専門家集団のミドル”の育成研修が実現したものです。
石原副理事長が主宰している関西PeCoという若手知財人が視野を広げ、知財の仕事に遣り甲斐を見出すための勉強会も開いていることを聞いて、知財協としても応援することを決め、関西事務所を会場として提供し、富山所長に土曜日に出てきて頂いて面倒を見て貰っています。
口癖のように「読書しなさい。読書ノートをつける習慣を身につけると良いよ。」といい続けていますが、何人かの人から「私も読書ノートをつけ始めました。」と言われました。
私は知財協での研修講師、いくつかの大学や企業での講演、講義、シンポジウムのコーディネーターやパネラーとして次のように主張してきました。「日本は20世紀は成功の世紀だったが、21世紀は難しい。それを乗り越えて豊かで素晴らしい社会を実現するには若い人が頑張る以外にない。私の考える日本の未来の方向は、日本にしかないもの―それを日本の文化という―を世界に通用する普遍的価値に転換して、高い価値、高い価格の財を生み出す事を目指すべきである。私はこの目標を“日本全体のブランド化”と言う。それは知の力がなくては不可能である。」
知財協の専務理事だから与えられた機会に感謝です。
70年の歴史を持つ知財協の活動は世界に誇れる素晴らしいものです。資源のない日本がオイルショックを乗り越えてJapan as No.1とアメリカの学者が誉めそやしたのは知の力です。その一部を知的財産権として確立したのは企業の知財部門の人たちの努力であり、その実務能力の向上と制度としての健全さを維持し、高めてきたのは知財協に集う人達の偉大な成果であり、世界に誇ることが出来ます。官からの独立を保ち、手弁当で活動するのは容易ではなかったと思います。知財協の先輩に感謝の一言です。
困難な時代を迎えて、知財協に集う若い人たちが広い視野で高い志を持って先人たちの築いた伝統に安住することなく、わが国の産業の発展のために知の力を高める企業の中の知の伝道者になることを期待しています。
知的財産権は、知の一部です。広く知について勉強し、人類の文明、文化を知が築いた歴史を知って下さい。知こそ真の価値の源泉であることを信念として、企業経営を説得し、事業や研究の携わる人々に知を鼓舞して欲しいと思います。
宗定 勇(日本知的財産協会 専務理事)