役員談話室

若い人たちへのアドバイス

2009年02月03日

最近、量子力学を少し勉強しました。
勿論、すべての理論をキチンと学ぶのではなく、手っ取り早くその辺りにある解説書を寝っころがって拾い読みしただけですから自慢するほどの事ではありません。

自分の趣味でおもしろいと思うことを自分の出来る範囲で勉強して自分の仕事や人生にそれを応用することが好きなのです。

△E×△t≧h
△E:エネルギーの不確定さの幅
△t:時間の不確定さの幅
h:プランク定数 6.6×10-34 ジュール・秒

△Eと△tのどちらかを小さくして確定性を高めると相手方は大きくならないとこの不等式が成立しない。普通、時間やエネルギーというものの量はキチンと計れると我々は感じています。しかし、極微の世界ではエネルギーと時間、物質の位置と運動量はこのプランク定数との不等式によって相互に反比例的に影響しあう関係にあり、従って、これら全て要素を絶対的に決定することは不可能なのです。

更に、例えば非常に短い時間10-20秒ならこのプランク定数の値から電子の質量に相当するエネルギー(10-13ジュール)になるから(10-20秒×10-13ジュール=10-33ジュール・秒<プランク定数となる意味)、この程度の時間なら電子が突然生まれてもよいことになる(この不等式の△E×△tがプランク定数より1桁大きいのでこの不等式が成り立つ。つまり電子が生まれて大丈夫という意味)訳です。

宇宙の誕生は時間も空間も存在しない無から生まれたことが量子力学という学問の力で示されているのです。パソコンも携帯電話も半導体によって生まれました。半導体は量子力学が無ければ開発されませんでした。これだけ発達した物理学という学問はすごいと思います。

ひとつエピソードがあります。

このプランク定数を考えたマックス・プランクが若いときに経済学を志したのですが、あまりにも難しすぎてあきらめたということを著名な経済学者のJ.メナード・ケインズに語ったそうです。

人間社会の現象は、事実そのものがあいまいで変数の数が非常に多くて、しかもその変数の計測が不正確であると言われています。しかも時々刻々と変化します。私は人間社会の現象が複雑怪奇で理解することが難しいことの最大の理由は、ある人がある行動なり意思表示をすると他者がそれを見て自分自身の判断でその行動、意思表示に対する自分の行動や意思を決めるが、その選択は人の「心」に依存し、「心」は自由に選択する機能が本質であるために決して確定でないことに由来すると思っています。例えば、相手が好きなときと嫌いなときでは人の反応は大きく違います。

しかも好きか嫌いかはどんどん変化するし、時には自分自身でも好きなのか嫌いなのかがよく分からないこともあります。絶え間なく連続する化学物理反応によって生存している人間が自己を認識し、人格を築き、他者の人格の同一性を認めることが出来るのは心を持っているからであり、人間をして人間らしさを与える根拠です。だから、私は、人間を理解し、社会をどのように運営するかを考えるためには、生物としての人間を自然科学から考え、社会的な存在として社会科学を発展させることが重要ですが、それだけでは不十分だと考えます。人間を人間として考えるためには文学や芸術、歴史を深く学ぶことが非常に重要です。

是非、自分の人生を豊かな充実したものにするためにも芸術や歴史を楽しく学んでください。

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宗定 勇(日本知的財産協会 専務理事)

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