役員談話室

外国人による日本語弁論大会

2008年08月11日

久しぶりに自分でこのコーヒーブレイクに書きます。ある理由からここ暫く連載したいと思いますのでお付き合いください。

今日は先日、NHKETV特集で放映していた「わたしの見たニッポン」という日本在住外国人による日本語による弁論大会の番組の紹介です。
全部で12人の色々な国から来ている若い外国人が自分の日本での生活で感じたことを数分のスピーチで訴えていました。多分、予選を勝ち抜いてきた人達だったのでしょう。皆さんスムースな日本語で話しており、さわやかな感動を与えてくれました。特に二人の話が素晴らしいなあと感じました。

まず台湾から来ている紅恵芝さん(23歳)の話です。

「飛行機で1時間来ただけなのに沖縄の人は『日本語が上手ですね。』と誉めてくれる。台湾ではそんなことは誰も言ってくれない。これは本音ではない。子供達は正直だから『変な日本語』と言う。しかし、日本の大学で勉強していて日本人の優しさ、親切に触れ、日本人の意識を理解していくにつれて、日本人が外国人である人たちを傷つけないようにして、励ましてくれるという文化は素晴らしいと思うようになった。」

次も女性のイラン人、フェレシテ ナジミさん(28歳)です。

「日本人は誰も『大変だ。大変だ。』と言います。色々な問題を抱えたイランの人間から見ると豊かでテロも民族紛争もない日本は理想の国なのに、何故、日本の人たちは『大変だ。』と文句ばかり言うのでしょうか?イランの子供達は『医者になって病気や怪我を治してあげたい』とか『事業家になって大きなことをしたい』とか皆夢を抱いて輝いています。私も自分のやりたい事にチャレンジしたいと思います。」

日本はまだまだグローバル化対応が出来ていません。ますます加速するグローバリゼーションの状況に対し、果敢に立ち向かい世界で活躍し、その成果で以って、この豊かで人々が絆で結ばれた日本を支える若い人材が決定的に不足していますし、そういう人材を育成することに必死の努力をしているシニアなベテランも極めて乏しいように思われます。

紅さんもナジミさんも自分の国の文化をしっかりと持ちながら日本の良さと問題点を鋭く指摘してくれています。ナジミさんが問いかけるように、何故日本人は夢をもてないのでしょうか?彼女は「自分は自分の意思で自分の意見をはっきり言います。」と語っていました。「それが言えない日本人は自分で自分を抑え、押し殺しているから夢にチャレンジできないのではないか」と言いたかったのではないでしょうか?

逆に紅さんは本音が言えない日本人の優しさの価値を見つけてくれました。私は、もしナジミさんがこれからもっと長く日本にいても、紅さんのように日本人が本音を言えないという文化が人に優しさという美点ももたらすという風には決して考えないのではないかと思います。台湾も大きくは東アジア文化圏に属し、日本との共通点も多い。だから紅さんは日本人の本音と建前の区別の背後にある日本人の心性を理解してくれたのでしょう。
しかしイランはある意味で日本とは対極的な文化の国です。強烈な個の主張によって自己実現に向って突き進んでいく事を正しいと信じており、それ以外の生き方を信じません。世界中で様々な価値観の衝突が続いています。今まで国境がその衝突を防ぐ役割を果たして来ました。しかしグローバリゼーションとは国境の壁を低くして物もお金も人間もどんどん混じり合っていく傾向の現象です。
日本の若者がそのことを認識し、様々なことを学び、自分達がこれからどうすればグローバル化に対応できるのかを考え抜いて、世界が日本を素晴らしいと評価してくれるようにするという夢を追求してくれることを希望します。

多分、日本にしかない日本の文化の持つ世界的な普遍的価値の発見とそれに基づく世界への貢献なのだろうと考えられます。

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宗定 勇(日本知的財産協会 専務理事)

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