役員談話室

野菜シリーズ(秋)

2007年11月06日

皆さん、お待ちどう様でした。知財協エッセイイストの鈴木さんがまた好評の野菜シリーズを投稿してくださいました。
ジンザイという野菜はどんなおそうざいでしょうか?最近流行の外国から入ってきた新野菜でしょうかね。人済という言葉もあるそうですがまさかですよね。
では一挙三連作の秋の旬のおいしいお野菜をどうぞ。

宗定

「だいこん」の台頭

本年4月、「役員談話室」に、「たまねぎ礼賛」を掲載していただいた。
掲載後、本コラムに関し、全国から大きな反響があった(ウソです)。

その中に、必ずしも、「たまねぎが一番」ではないのではないかというご意見をいただいた。それを紹介しておかねばなるまい。

一言でいうと、「だいこん」が、なかなかいい仕事をしているとおっしゃるのである。

昔の知的財産部は、「縁の下の力持ち」「調整役」でよかったが、最近の知的財産部は、そういうことでは不十分である。もっと活動が見えるようにしなければならない。現に、2006年度のJIPAシンポジウムで「見える化」がテーマになっているではないか!

「たまねぎ」は見えない。もう古い。それに比較して、「だいこん」は、スガタ・カタチを見せながら、いい知的財産活動をしている、とおっしゃるのである。

確かに、そうなのである。

「だいこんおろし」の仕事は、広範である。さんまの塩焼きには欠かせないし、ハンバーグにも合う。ドレッシングにも「だいこんおろし」が入っているし、雪鍋でも大活躍。豚肉肩ロースの味を上品なものに変身させている。

銀座や八重洲の伝統のある焼き鳥屋にいくと、「だいこんおろし」が最初に出てくる。そして、客は、「だいこんおろし」を合間に挟みながら、肉を咀嚼し、熱燗で口中処理をする。

煮物関係でも、いい仕事をする。「ブリだいこん」は、だいこん無くして語れないし、「イカ」と煮ても美味しい。豚肉とも相性がいい。少し大きめの三枚肉を醤油とみりんの協力を得て、コトコトやると、すばらしい仕上がりとなる。

いずれも発明者の力を引き出しつつ、だいこん自身も輝くという「見える化」が達成されているではないか!とおっしゃるのである。

ちゃんと付加価値を創造し、料理として売れている。そして高い収益を確保している。だいこんの活動は、「知的財産活動によって収益を増大させる」そのものではないんですか?あん?なんか言うことありますか?とおっしゃられるのである。

単独でも良い仕事をする。漬物関係がそうであり、沢庵、イブリガッコ、カクテキなどを見よ。ゴハンが進むではないか(売上の増大)。それに、切干だいこんに化けるなどという大変身もできる能力があるのである!とおっしゃるのである。

ウ〜ム、説得力あるなあ。強いて反論するなら、「グローバル展開に弱い」と言えるかな。でも、日本では、やっぱり強いですよね。参りました。
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にぎりめし軍団

織田信長が明智光秀に討たれ、これを聞いた秀吉が中国から大急ぎで帰ってくる「中国大返し」。このとき、各宿場で「にぎりめし」を作らせ、移動したまま食事をとり、寝ずに行進したことは有名な話である。

この「にぎりめし」、知的財産部の人材・組織を語るのに、ぴったりな譬えとなる。

知的財産活動を行うには、まず「個」がしっかりとしていなければならない。知的財産部を構成する部員は、それぞれが部の代表であり、時には、会社の代表でもある。

発明者を生かすも殺すも知財部員の力量によるところが多いし、ライセンス交渉では、社長の役割をしなければならない(使い走りでは、足元をみられるだけである)。

知的財産に関する知識を、武具のようにしっかりと身につけ、プロフェッショナルとしての「個」が確保されていなければならない。

そうした「個」を一定の方向を向かせ、ベクトルを合わせて、強力な知的財産活動を行うようにするのが組織の長の役割である。明確な目標を掲げ、行動を哲学でリードできるようになると、大きな組織でも、力強く動き出す。

つまり、米粒ひとつひとつがキラキラと輝き、それらがしっかりとバインディングしている状況が、知的財産活動の理想であり、「にぎりめし」とそっくりなのである。

バインディングがしっかりしていれば、組織として「自立」することができる。自立することができれば、他の組織とも協奏ができる。そうすれば、目的をはっきりさせ、他部署との共同作業で大きな成果を創出する活動が可能となる。

「にぎりめし軍団」の知的財産部は、敵にとって手ごわい相手である。逆に、味方にとっては、とても力強い集団である。せひとも、「にぎりめし軍団」になりたいものである。

この対極は、「おかゆ集団」である。個々の識別が不明確であり、ドンブリがなければ自立することもできない。

(付録)
「おにぎり」と「おむすび」の違いを調べてみた。
結論は同じもの。呼び名が違うだけであった。「おにぎり」の方が歴史が古く、弥生時代の中ごろからあったそうである。一方、「おむすび」は江戸時代から。女房言葉として「おにぎり」を言い換えたのが始まりとされているらしい。秀吉の時代は「にぎりめし」であった。
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4つの「ジンザイ」

我等が人材研究会(呑み会でのムダ話)の研究成果をご紹介しましょう。

横軸に「給料」、縦軸に「成果」をとってプロットし、そのプロットが「どの領域にあるか」によって「ジンザイ」の漢字を使い分ける、新たな定義の提案です。

「人財」:プロットが、45度の線より上にくる人です。財を生む人、これはわかりやすい定義で、皆さんにも納得していただけると思います。こういう人が多い会社は伸びます。また上司は楽です。

「人材」:「人財」に育つまでの「材料としての人」。一般に若手を指す。プロットが、45度の線より下にくる場合が多い。このジンザイが多い会社は、将来が楽しみ。株を買っておくとよろしいでしょう。ただし、育成を間違えると、下記のようになってしまうから要注意。

「人罪」:別名、「第四象限の人」。給料はチャントもらっているのに、働かない人。なにかと理由をつけて仕事を断る人。

その人に仕事を頼むと、あれこれ言われるが結局なにもしてくれない。頼む努力をするだけ無駄になっちまう。だから上司は自分でやるようになる。そうすると、管理費分だけ、成果がマイナスになる。

横軸(給料軸)がプラスで、縦軸(成果軸)がマイナスの領域は、第四象限。だから、そういう人は「第四象限の人」と呼ばれている。

このタイプは、頭がいい。試験を受けると良い点数をとる傾向にある。

「人済」:大企業の子会社に多い。定形業務は淡々とこなすが、新しいこと、チャレンジングなものを頼むと、「いやいや、ワタクシには出来ません。難しすぎます。Xさんがよろしいのでは」と逃げる。このタイプは、45度の線の近傍に位置する場合が多いが、45度の下の場合も多い。また「人材」よりもX軸の数値が大きい傾向にある。

以上の研究成果は、まだ、世の中に普及していません。ですから、使用する場合は、ちゃんと定義を話してからお使いください。

現在の常識では、下記のとおりです。

「人材」を辞書で引いてみると「才能があり、役に立つ人。有能な人物」と書いてあります。ですから、「人材」は、優れた人間のことを言うのです(当たり前ですが)。

日本知的財産協会の「人材育成委員会」は、役に立つ人を育てようという委員会なのであります。この委員会に入ると「人材」が育ちます。100%とは言いませんが、「人材」から「人財」に変わりますので、ぜひ、ご参加ください。

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鈴木 元昭(日本知的財産協会 副理事長)

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