役員談話室

技術アライアンス戦略研修の意義

2007年06月08日

06年度の知財協の臨時研修として実施した「技術アライアンス戦略」研修の意義について私の考えを紹介します。

中央研究所時代の終焉と言われています。アメリカで急成長したインテル、デルはいわゆる研究所を持っていません。しかし、この現象は技術革新がなくなったとか、技術開発が不要になったと言うことではありません。図を見てください。

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これはアステラス製薬の竹中登一共同会長が或るシンポジウムでお使いになっていた資料ですが、アメリカのFDA(日本の厚生労働省のように新しい医薬を承認する国家機関)が新規化合物医薬品を承認した件数の中、大企業による案件が(big pharma NMW approvals)が急減し、ベンチャーによる案件(biotech NMW approvals)が増加傾向にある事、並びにそれにも拘わらず大企業の研究開発費はうなぎ登りに増えていることを示しています。

この資料は2つのことを意味していると思います。まず第1に大企業における知的創造力の低下であり、第2には、それを補うベンチャーの知的創造の成果を大企業が買い取って、臨床試験等の大量の資金を要する事業化開発に資金を投入していることです。1970年代から始まった先進資本主義国での必需品飽和をトリガーとする経済の変質の中で資本効率、特に研究開発の投資効率の急速な悪化が自己完結型の技術開発から他者の技術資源とのコンビネーションによる技術優位戦略への転換を迫っているのです。技術アライアンスの成否がメーカーにとっては競争優位のキーポイントになってきた訳です。

未だ世の中に存在しない魅力ある商品を作り、市場に送り出して市場で歓迎されるためには誰と、どのような技術要素の組み合わせを、どのような契約条件のもとに、どうやって相互にプラスサムの世界を形成するのか!が問われる時代です。契約交渉を単なる口先や手先の作業と捉えるのではなく、新しいビジネスを形成するための優れて人間的な知的創造と考えるべきです。

本研修は、その事を伝える研修にしたいと考えています。

宗定 勇(日本知的財産協会 専務理事)

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