新刊書紹介

新刊書紹介

データ利活用のビジネスと法務

編著 大井 哲也・岡辺 公志 編著
出版元 中央経済社 A5判 444p
発行年月日・価格 2024年5月21日発行 5,280円(税込)
 本書は,様々な企業が取り組んでいるもしくは取り組もうとしているデータ利活用ビジネスについて,データの活用方法などのビジネス的観点とそのデータを取り扱う際に必要不可欠な法的観点が執筆された内容となっている。データを活用する際に注意しなければならない法律はビジネス毎に異なっているため,特にオンライン広告,コネクティッドカー,医療分野を中心にTMI総合法律事務所協力のもと30名以上の弁護士による具体例を用いて解説されている。本紹介では,それぞれの章が充実しているため各章について簡単に説明するので,読者の関心が高い章から読み進めて頂くことをお勧めする。
 第1章は,データビジネスの潮流に関して代表的な事例を取り上げながらデータ利活用の必要性が説明されている。また,私達が普段何気なく利用しているオンラインサービスのデータを組み合わせることで顧客の趣味嗜好を推察し,新製品の開発に利用されている現状が詳細に記載されており,どのようなデータも活用用途があると考えさせられる内容となっている。もしデータ活用不十分と考える企業にとっては,データの活用方法を探る良い機会になると思われる。
 第2章はデータ利活用に関する法規制について,データを扱う上で避けては通れない個人情報の基礎的な部分からデータの輸出管理規制について幅広く紹介されている。特に個人情報の各施行規則の要求を満たす為の加工事例や加工方法など具体的に紹介されており,データを管理する実務家にとって大変参考になると思われる。
 第3章は,著作権による保護,不正競争防止法上の規制,不法行為による保護において,曖昧になりがちなデータに関する権利について解説されており,第4章は,データを使った生成AIの学習段階や利用段階での著作権等に関する問題,第5章はデータ提供を受け活用する際の契約上の留意点(契約書の記載例などもあり),第6章はデータの囲い込み行為に関する日本・海外の規制について実例が紹介されている。それぞれ企業内で問題となりそうなテーマについて取り上げられており,多くの読者に参考になる章となっている。
 第7章〜第9章は,オンライン広告,コネクティッドカー,医療分野においての規制内容とその対応について書かれている。個人的には,第7章のオーディエンスデータ(ウェブからのユーザの行動履歴情報や属性情報)の利用における各国の法規制や,第9章の医療ビッグデータにおける医療情報取得時のルールから加工する際のガイドライン,またデータを第三者へ提供する際の注意点については,業界が近いことから何度も読み返したい内容となっている。本書は全体を通じて,データ利活用ビジネスを進めるうえで起こりうる問題点の解決方法が実務家の目線で記載されており,ぜひお薦めしたい一冊である。

(紹介者 会誌広報委員 I.J)

コーポレートガバナンスの法務と実務 会社法・コード・善管注意義務・開示

編著 TMI総合法律事務所 コーポレートガバナンス プラクティス・グループ
出版元 商事法務 A5判 472p
発行年月日・価格 2024年6月発行 5,720円(税込)
 コーポレートガバナンスとは,企業の健全な経営のために,組織での不正や不祥事を未然に防ぎ,公正な判断や運営が行えるように監視・統制する仕組みのことである。日本語では「企業統治」という。古くから存在する概念であるにもかかわらず近年ますます重要性を増しているが,各企業のコーポレートガバナンスは一般的に必ずしも明確ではなく,実務にあたって戸惑う場面も多いと思われる。
 このような状況を受けて本書は,担当者が実務に迷いなくあたれることを目的として,「機関構成の選択」から「公正な情報開示」に至る,コーポレートガバナンスで取り扱う見出し項目について, 「法令上の取扱い」「善管注意義務の関係」「情報開示」「コーポレートガバナンス・コード等」「機関投資家等のスタンス」,等の観点のうち,これら見出し項目ごとに,それぞれに該当する観点を取り上げて説明している。 そして本文を読めば当面実務に迷いなくあたれるのに十分な記載を行ったうえで,記載の根拠となる文献を豊富に脚注として示し,さらに詳細を知りたい者が深く学べるようにしている。
 例えば最初の見出し項目「機関構成の選択」については,「法令上の取扱い」にあたる観点として機関構成の選択に関する会社法上の定め,「コーポレートガバナンス・コード等」の観点として機関構成の選択にかかるコーポレートガバナンス・コードなどについて丁寧に説明している。また表形式に整理できる内容については表として整えている。以降の見出し項目についても同様に分かりやすく記載している。
 本書の読み方・使い方であるが,参考書・実用書といった類の書籍であるから,斜め読みで全体像を把握したり疑問点を辞書的に参照したりとニーズに合わせた読み方ができる。また必要に応じて豊富な脚注に挙げられている参考文献にあたってみてより理解を深めていくような使い方ができる。
 なお本書の中には知財に特化した記載は見られない。ただ,近年知財関連部門においてもコーポレートガバナンスへの理解,関わり方が議論されることは多いと推測される。そういった意味で,コーポレートガバナンスとは何ぞやということについて知ろうとする知財担当が手に取るに好適な一冊となろう。

(紹介者 会誌広報委員 I.N.)

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