新刊書紹介
新刊書紹介
学びあうオープンイノベーション 新しいビジネスを導く「テクノロジー・コラボ術」
編著 | 古庄 宏臣,川崎 真一 著 |
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出版元 | 日本経済新聞出版 四六判 200p |
発行年月日・価格 | 2024年3月19日発行 2,090円(税込) |
オープンイノベーションをテーマにした書籍は数多い。それだけ我が国においてもオープンイノベーションの重要性が認知されていることの表れであろう。それにもかかわらず,著者によると,オープンイノベーションの成功例はその取り組みに比例するほど出せていないという。
本書は日本におけるオープンイノベーションがうまくいかない理由を掘り下げ,「学びあう」ことの大切さに焦点を当てた点において他の類書とは一線を画している。
オープンイノベーションは外部の力を活用する取り組みなのだから相手から「学ぶ」ことは当然ではないかと考える向きもあろう。しかし,本書では「学ぶ」ではなく,「学びあう」と表現している。この点に著者の思いを汲み取ることができる。
すなわち,自分達だけが一方的に相手から「学ぶ」ことだけを考えていてはうまくいかず,自分達が相手から学びつつも,相手が自分達からも学ぶことができるような関係性を作ることが重要なのである。この事が本書の中で繰り返し述べられている。
そして,そのような関係性を作るためには「自分を知る事」が大切である。自分達の強みを把握すると同時に自分達の弱みを知ることで,自前でできる事と,外部の知見を借りるべき事との切り分けができるようになる。この切り分けができて初めて自分達が相手に学びを提供できる事と,相手から自分達が学ぶべき事が明確になり,「学びあう」関係性を実現できることが本書を通じて理解できた。
言い方を変えれば,上記の切り分けができていないまま,一方的に相手から学ぼうとし,相手には何も提供しない秘密主義に陥っていては,形だけのオープンイノベーションになってしまう。これではうまくいくはずがない。
「彼を知り己を知れば百戦殆からず」は,戦いにおいて敵と自分を知ることの重要性を説いた孫子の名言だが,さしずめ「彼を知り己を知ればオープンイノベーション殆からず」というのが本書を通じて著者が伝えたいメッセージと理解した。
本書は200ページとコンパクトで,平易な文体で記述されており,短時間で読み終えることができるものの,著者の一人が代表取締役であるKRI社の「研究開発の受託で生まれた知的財産権を顧客企業にすべて帰属させる」考え方,ビジネスモデルなど,知財担当者が驚くような事例も盛り込まれており,読みごたえのあるものとなっている。
これからの時代,知財関係者もオープンイノベーションと無関係ではいられない。全ての知財関係者にお読みいただきたい一冊である。
本書は日本におけるオープンイノベーションがうまくいかない理由を掘り下げ,「学びあう」ことの大切さに焦点を当てた点において他の類書とは一線を画している。
オープンイノベーションは外部の力を活用する取り組みなのだから相手から「学ぶ」ことは当然ではないかと考える向きもあろう。しかし,本書では「学ぶ」ではなく,「学びあう」と表現している。この点に著者の思いを汲み取ることができる。
すなわち,自分達だけが一方的に相手から「学ぶ」ことだけを考えていてはうまくいかず,自分達が相手から学びつつも,相手が自分達からも学ぶことができるような関係性を作ることが重要なのである。この事が本書の中で繰り返し述べられている。
そして,そのような関係性を作るためには「自分を知る事」が大切である。自分達の強みを把握すると同時に自分達の弱みを知ることで,自前でできる事と,外部の知見を借りるべき事との切り分けができるようになる。この切り分けができて初めて自分達が相手に学びを提供できる事と,相手から自分達が学ぶべき事が明確になり,「学びあう」関係性を実現できることが本書を通じて理解できた。
言い方を変えれば,上記の切り分けができていないまま,一方的に相手から学ぼうとし,相手には何も提供しない秘密主義に陥っていては,形だけのオープンイノベーションになってしまう。これではうまくいくはずがない。
「彼を知り己を知れば百戦殆からず」は,戦いにおいて敵と自分を知ることの重要性を説いた孫子の名言だが,さしずめ「彼を知り己を知ればオープンイノベーション殆からず」というのが本書を通じて著者が伝えたいメッセージと理解した。
本書は200ページとコンパクトで,平易な文体で記述されており,短時間で読み終えることができるものの,著者の一人が代表取締役であるKRI社の「研究開発の受託で生まれた知的財産権を顧客企業にすべて帰属させる」考え方,ビジネスモデルなど,知財担当者が驚くような事例も盛り込まれており,読みごたえのあるものとなっている。
これからの時代,知財関係者もオープンイノベーションと無関係ではいられない。全ての知財関係者にお読みいただきたい一冊である。
(紹介者 会誌広報委員 H.O.)