新刊書紹介

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リンク提供行為と著作権法

編著 谷川 和幸 著
出版元 弘文堂 A5判 388p
発行年月日・価格 2024年4月2日発行 5,280円(税込)
 本書は,私たちが日ごろ何気なく行っているリンクを張る行為について,著作権法における規律を深く掘り下げ,新たな視点からの提言を論じるものである。著者の谷川氏は,大学教授として情報通信技術に関わる著作権制度を専門に研究されており,これまでの研究テーマとして海賊版サイト対策やAI規制に関するものなどがある。
 インターネットにおいてリンクは特定の情報に導いてくれる重要な役割を果たしており,リンクがなければ情報にアクセスすることすら不可能になる場合もある。著作権法では,リンクを張ること自体は著作権侵害にならない,という通説があり,私自身これまでリンクを張る行為はあまり意識をせずに行ってきた。
 リンクには,リンク先のURLを記述した通常のリンク(ハイパーリンク)の他,インラインリンクなどの埋め込み表示と呼ばれるものもあり,後者の場合,利用者の画面上にはリンク先のコンテンツが直接表示されることになる。本書のタイトルの「リンク提供行為」とは,ハイパーリンクに留まらない,ということを示し,問題の所在として,リンクの種類,提言に至る背景や前提などが第1章でまとめられている。
 第2章ではWIPO著作権条約に触れ,以降の章では,各国国内法,裁判例を取り上げている。 とりわけ,第3章では,日本の現状について,立法経緯,裁判例,学説を整理し,情報の送信元に着目してきた日本法の現状と課題について,本書の中で一番のページ数を割いて問題意識を述べている。また第4章ではEU法の現状や,デジタル単一市場指令(DSM指令)の導入において「リンク税」と誤解され世論の強い批判をうけた「プレス出版社の権利」を紹介しており,続く第5章では英米法を整理している。
 そして第6章では,本書のまとめとして,日本法と外国法との比較検討,令和2年改正で導入されたリーチサイト規制後の状況と課題,インラインリンク特有の表示規制の可能性を述べ,送信主体は誰か,という「送信元」に着目した日本の規律に問題提起をし,「送信規制から表示規制へ」という提言につなげている。
 本書全体において述べられている綿密で詳細な論拠は,非常に読み応えがあった。リンクはアクセスを容易にするもの,という考え方だけではなく,リンクは何をもたらすのか,どの観点に着目すべきかを改めて考える機会となった。最後に,付録「公衆送信権に関する日本の裁判例」について述べておきたい。各事案の概要と判旨だけではなく,筆者のコメントが書かれていたことに驚いた。実務者にとって有益な付録であり,本文と併せてじっくり読んでほしい。

(紹介者 会誌広報委員 Y.H)

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