新刊書紹介
新刊書紹介
意匠のQ&A
編著 | 吉田 親司 著 |
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出版元 | 経済産業調査会 A5判 620p |
発行年月日・価格 | 2023年3月27日発行 6,600円(税込) |
著者によると,令和元年の多岐に亘る意匠法改正の内容を反映し,新しい意匠法の全体像を分かり易く理解してもらうため,Q & A形式で本書を執筆されたとのことである。実際に読んでみると,Q & Aの形式は採られているものの,目次及び索引が詳細に記載され,調べたい項目があれば,目次及び索引から該当のQ & Aにたどり着けるようになっており,基本書としても読める構成になっている。
Q & Aは144もあり,意匠法改正の年次も逐一記載され,改正の内容や趣旨が詳細に説明されているので,改正の経緯を踏まえながら,各Q & Aの理解を深めることができるようになっている。また,回答の後ろに解説があり,回答を読んだだけでは完全に内容を理解できなくても,解説も読めば各Q & Aの内容を正確に理解できる構成になっている。 特に,令和元年改正の内容については,第4章「画像」,第5章「建築物」,第6章「内装の意匠」と章を分けQ & Aを配置し,様々な種類の登録例が紹介され,解説は手厚い。例えば,令和元年改正の関連意匠制度について,Q & A69.では,製品デザインを長期的に進化させていく企業のデザイン戦略に対応して,令和元年の改正がなされた背景の説明,また,「基礎意匠」が導入され,基礎意匠の関連意匠を本意匠とみなして,本意匠に類似する意匠を新たな関連意匠として連鎖的に保護する制度であることが分かり易く説明され,関連意匠の登録要件についても,図を用いて詳しく解説されている。本書を読む前は,正直,基礎意匠,本意匠及び関連意匠について正確に理解していなかったので,Q & Aを一つ読むだけでも理解できたのは非常に良かったと思う。関連するQ & Aも読めば,さらに理解が深まるであろう。
もちろん,意匠実務担当者向けのQ & Aも充実している。特に,第8章「意匠登録出願」では,願書への記載事項について詳細の解説がされており,複数意匠一括出願制度も含め令和元年改正の内容を反映した解説になっている。また,意匠図面については第9章「意匠図面」で,様々な意匠表現例が,具体例を挙げて解説されており,意匠の図面作成において,様々な形状の物品の表現方法があることを理解できる。
本書は意匠登録出願の実務担当者を念頭に執筆されているが,Q & A形式を採るがゆえに,実務担当者でなくても,意匠法及び意匠登録制度の全体を理解できる内容になっている。興味のある設問から読んでいくと,読み進め易いと思う。実務者必携の一冊である。
(紹介者 会誌広報委員 T.O.)