新刊書紹介
新刊書紹介
侵害予防調査と無効資料調査のノウハウ 〜特許調査のセオリー〜
編著 | 角渕 由英 著 |
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出版元 | 経済産業調査会 A5判 200p |
発行年月日・価格 | 2020年11月11日発行 2,420円(税込) |
また,巻末には,調査業務を行う上で有用な知識となる参考文献のリストが掲載されており,読者にとっては有用な情報となり得るもの,と感じられた。
先ず,「第1章 特許調査のセオリー」では,特許調査を含む情報調査の基本と調査設計について確認をし,特許調査の基本的な考え方(セオリー)について解説されている。特に,調査戦略の重要性,6W2Hでの調査観点の明確化,調査種別(先行技術調査,技術動向調査,無効資料調査,侵害予防調査)毎の調査の進め方や検索式の作成方法等が,細かく丁寧に解説されている。また,著者のご意見として,サーチャーとしての成長に当たっては,他の知財業務(出願権利化業務,無効化業務,侵害検討業務等)にも携わることが望ましく,これら業務を併せて行うことで調査業務における相乗効果が発揮されるという点は,大いに共感が得られた。
次に,「第2章 侵害予防調査」では,侵害予防調査自体の考え方とポイント,課題・目的と意識すべき6W2H,仮想事例を踏まえたクレーム文言解釈の手法と均等論などについて解説されている。特に,対象製品等(「イ号」)に対してリスクとなる特許を漏れなく効率的に抽出して,リスクを最小限に抑える行動につなげるための考え方,調査の進め方や検索式の作成方法等が,理解し易く解説されている。
最後に,「第3章 無効資料調査」では,無効資料調査自体の考え方とポイント,課題・目的と意識すべき6W2H,実例を踏まえた進歩性の判断手法と論理付けなどについて解説されている。特に,無効資料になり得る国内外特許文献検索,非特許文献検索に加え,製品による公然実施の有用性にも実例に基づいて触れられている。単に特許調査を行うのではなく,使える証拠はどのような形態で,どこに存在するのかを調査計画の段階で十分に検討することが,重要な留意点として挙げられている。また,進歩性を意識した調査に当たっては,著者のご経験が窺える細かく丁寧な解説になっている。
総じて,本書には,膨大な情報量の中から,必要な情報を効率的かつ効果的に収集して活用する上で重要な考え方やポイント,調査種別に応じた調査手順等が解説されており,企業や特許事務所等の特許調査に携わるご担当者にとって大変有用な情報源であると考えられる。
(紹介者 会誌広報委員 K.S)