ちょっと一言

「地元の味」3月号編集後記より

 皆様それぞれにお気に入りの「地元の味」というものがあるのではないでしょうか。
 私は愛知県岡崎市に住んでいます。岡崎市と聞くと徳川家康生誕の地を思い浮かべられる方も多いかと思いますが,八丁味噌でも有名です。この地の八丁味噌は,大豆と塩のみを原料に山のように積み上げた重石をのせた大きな木桶に二夏二冬(2年以上)熟成させて作る赤味噌の一種です。その名称は,岡崎城から西へ八丁(約870m)離れた土地で製造されていたことに由来し,ここには江戸時代から続く,「カクキュー」と「まるや八丁味噌」という2社の味噌醸造所があります。
 皆様も馴染みの味噌があると思いますが,私は子供のころから赤味噌です。実家は三重県ですが,愛知県に近い土地でもあることから,赤味噌文化が浸透しており,実家では大豆を原料に自家製のいわゆる手前味噌を作っていました。子供のころ朝起きると,母親が鰹節を削り,その削り節で出汁を取った後に具材と自家製味噌を加えてお味噌汁を作っていたのを思い出します。
 また,赤味噌といえば,味噌おでんをご存じでしょうか。おでんの具材を鰹だしベースの甘い赤味噌で煮込んだ料理で,名古屋のおでんとして有名です。味噌おでんと一口に言っても,実家のおでんは少し違っていて,煮込む時には味噌は使わず,食べる時に甘く味付けをした赤味噌を具材の上にのせて食べていました。田楽の上にのせる味噌を想像していただくとそれに近いと思います。当時私はこれがおでんだと思っていましたので,上京しておでん(関東煮)を食べた時は物足りなく感じ,自分のアパートでおでんを作るときはいつもこの「のせる味噌」を作っていました。
 さて,昨年の暮れに,自分でも大豆を原料に赤味噌を仕込んでみました。1年後に食べるのを楽しみにしています。味噌作り教室などもありますし、材料の麹も意外と簡単に手に入りますので,皆様もお好みの味噌を作ってみてはいかがでしょうか。
  • 味噌玉
  • 仕込みが終わった豆味噌

(H.H.)

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