ちょっと一言
「日本の柿」10月号編集後記より
7月の長雨の影響であまり実を付けなかったが,我が家の庭の猫の額ほどの家庭菜園には,キュウリ(夏すずみ)とミニトマト(千果)が,お疲れ様な様子をみせている。 剪定と追肥をしたナス(千両)は,これから秋ナスをつけようと頼もしい姿。そして,近くの古民家にある柿の木には,柿の実がなっている。苗を買うときに記載されている品種名を記載してみたが,スーパーに並ぶ野菜にはこれらの名前はほとんどお見掛けしない。イチゴなどは品種名が強調され書いてあることも多いが,キュウリは,キュウリである。読者の方で,これらの品種名を見たことのある人は,どれほどいるだろうか。
10年ほど前から,日本国内の品種,技術,退職者など多種多様なものが,海外に流出するようになった。ついには,会社さえも買われるまでになった。
そして田舎でも,手間暇かけて育てた畑の果実を収穫するためには,イノシシやカラスを含む自然の災いからだけでなく,ヒトから果実を守らなければならなくなったという。
自然相手ならば諦めもつくが,ヒトの場合は怒りが湧く。それなのに,果実を盗られて収穫できなくなっても,警察に届けることもせず,泣き寝入りしている人が多いという。
それが,盗られる可能性と疎遠な日本人の通常であり,その対応に仕方ないと思ってしまう自分がいる。争いを避け,他者を悪く言うことを嫌い,お天道様が見ていて悪人には天罰が下ると信じている。
ずる賢いサルを懲らしめてくれる栗と臼と蜂が,この世界にもいるというのだろうか。
田舎に帰ったときに,近所で被害にあった家が,畑に監視カメラを付けることを検討しているといった話を聞いた。品種の登録を含め,守りたいものは,手を尽くして自衛するしかないということであろうか。玄関に鍵をかけなくても安心な,古き良き風景が残っていると思っていた田舎にさえ,何とも世知辛い状況が生じているようである。
我が家の小さな小さな家庭菜園にも,カメラを付けるべきなのだろうか。
(蟹家族)