ちょっと一言

「人生、ニャーにが起こるかわからない! −私が愛猫家になったわけ−」
9月号編集後記より

 私はずっと猫が大嫌いでした。子供の頃小さな捨て猫をかわいがろうとして出した手を,爪で思いっきり引っかかれて以来,猫は私の敵となりました。

 当時,実家では犬を飼っていたのですが,実家は田園地帯のど真ん中でしたので,飼い犬の散歩は専ら田畑のあぜ道でした。散歩中に時々野良猫と遭遇すると,私は飼い犬と一緒にその野良猫を姿が見えなくなるまで追っかけまわすのが常でした。

 また,その当時野良猫が家の中まで来て,食べ物をあさることがあったのですが,サザエさんの主題歌よろしく,私は魚を盗んだ野良猫を追いかけたことが2,3回あります。 母親の悲鳴を聞いて咄嗟に家を飛び出すのですが,毎回裸足で野良猫を追いかけました。当日の夕食を盗まれているのですから,サザエさんでなくても,誰でも裸足で追いかけると思います。

 大人になっても猫を見かけると本能的に追いかけたくなる習性は治ることがなく,家の窓から庭に野良猫が侵入してくる姿が見えると,食事中でも突然庭に出て追いかけます。 小さい頃は一緒に面白がって追いかけてくれた子供達も,大きくなると完全に横目で呆れていました。

 そんな猫ストーカーのような私でしたが,2年前の秋の雨の日に,家の軒先に赤ちゃん猫が4匹雨宿りしていたのを見つけました。母猫が迎えにくると思い,そのままにしておきましたが,母猫は一向に姿を見せません。1日たってもまだ軒先にいる赤ちゃん猫に,可愛そうなのでミルクを与えてやりました。

 1週間もすると,赤ちゃん猫は私の顔を見ると近づいてくるようになり,1カ月もすると勝手に家の中に入ってくるようになり,そして2年経った今ではソファーや床でお腹を出して仰向けになって昼寝をしています。

 さすがに,子供の頃のように猫に爪で引っかかれることはありませんが,猫の機嫌を見ながら,距離を計りながら,猫とコミュニケーションを取るのは,どこか思春期の子供達とコミュニケーションを取るのに似ているような気がします。気持ちがわかったかなと思える瞬間は,とてもうれしいものです。

 何十年も猫嫌いだった私が,今では寝る前に猫の肉球をなでながら声をかけるのが日課で,幸せそうに寝ている猫の顔を見て,毎日癒されています。

 そして,私は今猫が大好きです。  

(Y.U)

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