ちょっと一言

「夏休みの過ごし方」8月号編集後記より

 本号が出る頃には、読者のみなさんは有意義な夏休みを過ごされていることと思います。

 私のここ数年の夏休みは、毎年9月に開催される地域のかかし祭りに向けて、作品の制作に費やされています。
各地で開催されたかかし祭りの出品作について、私なりに分類し、参考にしています。テーマは「メッセージもの」「時事もの」「物語風」「伝統的」「キャラクターもの」「動物」などで、タイプは「素材や大きさにこだわり」「オリジナル」「本物そっくり」「からくりもの」などです。 これらのうち、入賞作には「時事もの」や「物語風」に関するものが多いように思います。

 私も「時事もの」や「物語風」にチャレンジしますが、その際、「本物そっくり」の構成を盛り込むように意識しています。参考までに、私のかかし制作のプロセスをご紹介します。

 作品のおおまかなイメージが決まると、参考とする図面や写真などの画像情報を、図書館やインターネット等で探します。例えば、ゴリラやイノシシは動物図鑑、カブトムシやクワガタは子供向けの飼育方法解説書なども参考にします。 動物や昆虫の本体の芯材は、発泡スチロール板を両面粘着テープで積み重ねてブロック状にし、参考画像の輪郭を再現するようにニクロム線カッターで切り出します。

 以前出願を担当した意匠では、六面図のほか、断面図や参考斜視図があって初めて物品の形状が特定されました。ところが、図鑑の多くには、側面か平面のどちらか一方の写真しか掲載されていません。このため、その後は、写真のハイライトやシャドーの部分を参考にして、こんな感じかなと創造しながら削り出します。“本物そっくり”を目指したつもりが、この時点で“○○のようなもの”となってしまいます。 表面の凹凸をサンドペーパーで均したあと両面粘着テープで覆い、それらしい色の布地を外側から貼りつけて本体が完成します。

 腕や脚は、芯材として針金を用い、それを筒状の布で覆って、内側に綿やスポンジを詰め込みます。
本体の適当な位置に腕や脚を縫い付けます。このままでは、どう見ても“作り物”です。
仕上げに、関節と思われる箇所で折り曲げてポーズを作ります。曲げる位置と曲げる向きとがうまく決まると、“生き物”のように感じられることがあります。

 ちなみに、大量生産される工業製品のかかしは、意匠分類では産業機械器具[K]の中の農業用駆除機械器具、防除機械器具及び捕獲用機械器具[K3-130]に属し、物品名「鳥獣威嚇機、かかし、スズメおどし」と例示されています。 みなさんもかかし作りにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

(M.T.)

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