ちょっと一言
「重要文化財の中は」12月号編集後記より
「道後温泉本館」が現在の姿になってから今年で百二十年になるそうです。道後温泉本館とは愛媛県松山市の道後温泉にある公営の浴場施設で、国の重要文化財にも 指定されています。その木造三階建ての重厚な佇まいを持つ建物はアニメーション映画「千と千尋の神隠し」に登場する「油屋」のモデルにもなったそうです。(ちなみに「道後温泉」 そのものは地域団体商標登録されています。)先日、松山に転居した義弟家族のもとを家内と共に訪ねた際に、同館を訪れる機会がありました。 道後温泉本館の内部は、一階に複数の浴室、二階に休憩用の大広間、三階には休憩用の個室とで構成されています。個室の一つは夏目漱石がよく利用したことから坊っちゃんの間と呼ばれており、漱石に関する資料が展示されています。また館内には日本で唯一の皇室専用の浴室もあり、ガイドの方の案内で見学することも出来ます。
今回私たちは三階の個室を利用しましたが、入浴後に団子とお茶を頂くことが出来ます。団子は小さく丸めた三色のあんを串で刺したもので、坊っちゃん団子という道後温泉名物とのことですが、御多分に洩れず名物に・・・、いやいや大変美味しく頂いてきました。
私が温泉を選ぶ際の唯一にして最大の基準は、泉質でも景観でもなく「清潔さ」のため、築百二十年と聞いて初めはあまり気乗りがしなかったものの、いざ訪れてみると浴室を含め建物はきちんと手入れが行き届いており、大変気持ち良く過ごすことが出来ました。 後から知ったのですが、浴室では毎日お湯を抜いて湯船を洗うことは勿論のこと、床、壁や洗い場などは機械を使って毎日磨いているそうです。
ところで、道後温泉は兵庫県神戸市の有馬温泉とともに日本三古湯のひとつに数えられることがあるようです。道後温泉の歴史は神話の時代まで遡るほど古いようですが、実際に七世紀頃の地層からも温泉成分が検出されているそうです。
今回は義弟の転勤がきっかけで道後温泉を訪れることになりましたが、義弟の以前の勤務地は有馬温泉のある神戸でした。果たして次の勤務地や何処に...。
(T.C.)