ちょっと一言
Apple vs. SAMSUNG
−その1:東京地裁判決−
8月31日、東京地裁で判決言い渡しが行われました。アップルとサムスンが争っているスマートフォンとタブレットに関する特許係争の判決でした。さっそく、判決文を読んでみました。
アップルが侵害を主張した知的財産は「特許権」で、1件だけでした。2002年に出願されたもので、2008年に特許登録となっています。 その特許の請求項は23ありましたが、請求項11、13、14に関して争われました。請求項11だけ記しておきます。右の文章のとおりです。 iPODのiTunesの機能に関するもののように思えます(あまり詳しくないので自信ありません)。発明の名称は「メディアプレーヤーのためのインテリジェントなシンクロ操作」となっています。 構成要件E1、F1、G1の充足性、つまり技術的範囲に入るか否かが争われました。 |
G1の解釈で争われたのは、「メディア情報とは何か」ということでした。
被告製品は、コンテンツの「総時間」と「ファイルサイズ」を用い、プレーヤ情報とホスト情報の一致・不一致を判定します。なので、「総時間」と「ファイルサイズ」が「メディア情報」に含まれるか否かが争点になりました。
原告のアップル側は、特許明細書に「メディア情報は、対応するメディアアイテムの属性または特徴に関する」などの記載があり、「総時間」と「ファイルサイズ」が「メディア情報」に含まれると主張しました。
被告のサムスン側は、「総時間」の情報は使用していない。音楽ファイルの一致・不一致は、「ファイル名」と「ファイルサイズ」を用いて判断している。
また、本件発明での「メディア情報」というのは、「タイトル、アルバム、トラック、アーチスト及び作家」「ビットレート、サンプルレート、イコライゼーション設定、ボリューム設定、スタート/ストップ及び総時間」が挙げられており、ワードファイルやエクセルファイルなどの通常のデータファルイが備えることのない「メディア」に特有の情報のことを指している。「ファイルサイズ」という一般の情報は、「メディア情報」に含まれないと主張しました。
東京地裁は、被告サムスンの主張を採用、被告製品は、構成要件G1を充足しないとしました。
明細書に忠実な、ごくオーソドックスな判断のように思えました。
−その2:アメリカでの裁判との違い−
日本の裁判で、判決がでたのは、上記の東京地裁の1件だけです。判決文に記載してある原告の損害賠償の主張を見てみましたが、被告製品の売上高2,086億円と記載されているだけで、詳しいことは書かれてありません。「被告らが受ける利益が1億円を下回ることは考え難い」とだけ述べて、「一部請求として1億円を請求する」となっています。裁判費用は、損害賠償請求額に比例して高くなります。勝算が高くないと、アップル側は読んでいたのかも知れません。とても低い損害賠償請求額になっています。
一方、アメリカでは、830億円(10億5千万ドル)の陪審評決が出ました。侵害品の売上高がどれくらいなのか不明ですが、かなり高額の賠償金であることは間違いありません。
アップルとサムスン関連で、日本の裁判とアメリカの裁判の大きな違いは、侵害されたとする「特許権」「意匠権」の内容です。東京地裁での裁判は、iPODのシンクロに関するものだけでしたが、アメリカで争われた知的財産権は、下記のような7件の特許権と3件の意匠権で、基本的で権利範囲の広いものです。
賠償額が異なるのも、知的財産権の「量と質」の違いに起因することも、わかると思います。
直接、アメリカ・カルフォルニア北部地区連邦地方裁判所の判決文を見ることができなかったので、確たることは言えませんが、ネットで調べると、タッチ画面の操作方法などが侵害対象として認められたというものが多くありますので、東京地裁の判決とは対象が、まったく異なると思います。
なので、「アメリカでは、アップルが勝ち、日本ではアップルが負けた」などというのは、ナンセンスです。
アップルの各国知財戦術がどうなっていたかを確かめるのが先です。
ちなみに、権利行使の本命と小生が考えている日本での特許出願は、下の写真のものです。
全部で316ページあります。
日本では、まだ登録になっていません。
(M.S.)