ちょっと一言
「恵方巻き」 知財管理誌2月号編集後記より
私が小学生の頃、太巻きは運動会など特別な時に食べるご馳走でした。しかし食の多様化が進み、太巻きのハレの日のご馳走としての存在価値は低下し続けているように思います。実際、私も今では節分の恵方巻き以外に太巻きを食べることはほとんどありません。
一地方の習慣だった恵方巻きは瞬く間に全国区に広がり、最近では豆まきをする人より恵方巻きを食べる人のほうが多いとのデータもあるようです。
私も流行に乗っかって毎年恵方巻きを食べていますが、差し歯の前歯が折れたら・・と思うと恐ろしくて作法どおりのまるかじりはできず、普通に切って食べています。幸せが舞い込むといっても、差し歯にかかった経費以上の幸運がやってくるとは確信できずにいます。
この時期、色々な太巻きが売られるので、気に入った太巻きを買って食べるのを楽しみにしています。さくらでんぶやかんぴょうなどが巻かれた通常の太巻きのほか、海鮮巻き、エビフライ巻き、キムパプ(韓国海苔巻き)などなど百花繚乱です。更に、「巻き」つながりで恵方ロールケーキ、恵方トルティーヤまで売られていたりと、便乗っぷりには目を見張ります。
去年はトンカツ巻きが売り切れで涙を呑みました。このトンカツ巻きにも、特許で見られるような改良・工夫が得意な日本人の特性が現れているように思います。よく考えたら天むすやカツ丼という既存商品があるので、トンカツを巻き寿司の具として採択することに発想の飛躍はそれ程ないのかもしれませんが、初めて見た時は、酢飯にトンカツ、ソース、マヨネーズというその組み合わせに衝撃を受けたものです。去年の教訓を生かし、今年は早く帰ってお目当ての恵方巻きを買いたいと思います。
このようにすっかり流行に乗せられてしまっているのは我ながらいかがなものかと思わなくもないのですが、お寿司業界や海苔業界、ひいては日本の産業振興に一役買っていると思うことにしています。
会誌広報委員会(U.E.)