ちょっと一言

インド紀行(リスク・マネジメント編)

2008年9月1日から3日にかけて、インドはゴア州の首都パナジ(とは言え、ゴア空港から南方へ車で走ること約1時間)にあるリゾートホテル“Taj Exotica”にて、WIPO主催、インド商工省、インド商工会議所共催で国際会議が開催され、スピーカーとして参加した。

会議そのものについては、別途JIPAホームページで報告しているので、ここではリスク・マネジメントの観点から、今回の経験を基にいくつかのアドバイスを述べ、これからインドに行く(行きたい)人のご参考になれば、と思う。「木を見て森を見ず!」という諺もあるが、インドという大国を全て見てから、ということは現実的に不可能なので、インドの一地方を訪問した感想ということで、受け止めてもらえば良い。

今回は、はからずも、いろんな点で個人的には訪問したくない国の一つであったインド訪問ということになってしまい、先ずは情報収集を行い、万全の備えで臨んだ(つもり)が、………。

なお、以下は、あくまでも個人的且つ年輩者の経験、感想をベースにしたものであり、インドは発展途上にあり、非常に活気のある国であるし、特に若い人にとっては魅力のある国の一つであることに間違いはなく、是非とも一度は訪問されたら、と思う(本心から?)。

  1. タクシー事情について
    • まず、ムンバイ空港の国際線ターミナルと国内線ターミナルが約7km離れていることにびっくり。この間の移動は、Air Indiaを利用しない者は、タクシー利用が唯一の手段となる。
    • ムンバイ国際線ターミナルからはプリペイド・タクシー(プリペイド券はターミナル内のカウウンターで購入)を利用することになるが、雑然と並んでいる小型のタクシーは汚く、総じて運転手のマナーは良くない(タクシーの乗車に当たってトランクにスーツケースを入れる際にスッと近寄ってきた風体のよくない男が、乗車の際、「100ルピーをよこせ!」と。ドライバーもグルのようで、支払わないと、スタートする気配がなく、こちらは1人なので、已む無く支払った)。
    • 今回は、フライト・スケジュールの関係で、ムンバイ空港の近くのホテル(国際線ターミナルから2km強)で一泊する羽目になったが、ホテルに向かう途中でドライバーが「もっと良いホテルを紹介してやるから、そちらにしろ!」「ホテルが近すぎて、今日はまったく商売にもならない!」等々、御託を述べ、その挙句は、ホテル到着後に追加料金を要求する始末。ホテルに到着すればこっちのもので、全く無視。さっさとホテルに入った。
    • また、ホテルへ行く途中にタクシーが止まると、すぐに子供、風采の良くない女性がタクシーに近づき、窓を叩いてお金をせびる始末。もし、エアコン付きでないタクシーであれば、開いた窓から手を入れてくることも十分あり得た。
    • なお、翌朝、ホテルから国内線ターミナルまで(約5km)は、用心のため、ホテル・リムジンを利用したが、ドライバーは非常に応対もよく、親切であったので、余計にその差が目立った(ホテルを利用する場合は、出来ればホテル・リムジンの利用をお奨めする)。
      ⇒インドでは、極力、タクシーに1人では乗らないこと!(女性は、特に! ものの本には必ずといっていいくらい書いてある)また、エアコン付きのタクシーに乗ること!
  2. ムンバイ空港(国際線ターミナル)事情について
    • 9月4日にゴア空港からムンバイの国内線ターミナル経由(タクシー利用で)国際線ターミナルに着いたのが、午後3時前(日本での情報では、国内線のフライト状況が極めて悪いということで、余裕を見て早めの便を予約していたため、相当早く国際線ターミナルに到着した)。当然のこととは言え、乗る航空会社のカウンターは開いておらず、チェック・イン時間までの2時間余りを空港内で待つことに。但し、空港内には、スナック類を売る小さな売店が2つあるのみで、椅子もロビーに並んであるだけ(これも2ヶ所のみ)で、ここで待ち時間を潰すのは結構大変(同行者はこのロビーで約5時間待つ羽目になった)。
      ⇒チェックイ・インまでに時間がある場合は、空港以外(例えば、空港近くのホテル等)で時間を過ごすことを考えた方がベター!
    • 当初、WIPO指定の旅行業者が示してきたフライト・スケジュールでは、クアラルンプール経由ムンバイ行きで、ムンバイ着22時頃、ムンバイからゴアまでは翌朝の便で移動、ということであり、ムンバイでどうするのかと問い合わせたところ、空港ターミナルで一夜を明かす人もいるとのつれない返事、今回は若者のヒッチハイクでもあるまいし、早速招聘先のWIPOに掛け合ってムンバイ空港近くのホテルで一泊することの了解(WIPOが費用の一部負担)を取りつけたが、正解であった(業者の勧めるまま、このターミナル・ロビ一で一夜を明かすことにしていたら、なんて考えると、ゾッとする)。
    • ターミナル内に両替所は数ヶ所あるが、いずれもインド・ルピーから日本円への両替はできないので、注意。チェック・イン、出国審査、セキュリティ・チェック(インドでは、機内持ち込み鞄等にセキュリティ・チェック済みの印をもらってないと、搭乗口でセキュリティ・チェックを受けて来いといわれるので、要注意)を済ませた後に日本円への両替ができる両替所が1ヶ所のみあったが、この両替所では日本円同様ここでしか両替できない通貨への両替をする人で長蛇の列。然らばデューティ・フリー・ショップで使いきろうかと覗いてみたが、パッとしたものはなく、しかもインド・ルピーは受け付ない始末。結局、余ったインド・ルピーは日本まで持ち帰ってきた(JIPAインド訪問代表団のメンバーにでも売るしかないか?)。
  3. 電力事情について
    • 今回の国際会議の会場は一流ホテルであったが、1日のうち何度もちょっとした停電があり、電力事情の悪さが目に付いた。部屋の中で携帯電話の充電をしていたが、どうも停電後の復帰(過)電力のせいか、全く機能しなくなった(帰国後、修理に出す前に念のため充電してみると、どういうわけか正常に機能し出したが??)。特に、パソコン等の充電を行う場合は、細心の注意を払う必要があろう。
    • 会議の途中でも何度もちょっとした停電があり、照明が切れることもあったが、流石に一流ホテルだけあって、自家発電で、プロジェクター、音響設備をバックアップしていた。
  4. 食べ物について
    • ここ4年間のうちにJIPA代表団が2度インドを訪問しているが、団員の多くがお腹を壊しているという実態から、水、食事については細心の注意を払うこととした。それでも、用心のため、掛かりつけの医者から抗生物質と胃腸薬を入手したが、これが保険対象外ということで、大枚を要した(結局、今回は服用することもなかったので、JIPAインド訪問代表団のメンバーにお譲りするか?)。
    • 国際会議での食事(昼食、夕食)はバイキング形式であったため、香辛料のあまり効いてないような料理を選択して食べるようにしたが、やはりインドでカレーを食べない手はないと考え、いくつかの種類のカレーを少しずつトライした(味については、特に不味いといった感はなかった)。朝食もバイキングのため、上に同じ。ともかく、一番の料理が果物(スイカ、、バナナ、メロン類)であったとは、寂しい限り。
    • ムンバイ、ゴア間のフライトは約1時間であるが、この短時間で食事が出てくる。じっくりと味わう時間的な余裕はないが、この食事は、全くのインド料理。とにかく何かわからないが、日本にはない香辛料が入っており、結構スパイシー!機内で配られるペットボトルの水であれば大丈夫であろうと、ガブ飲みし辛味を薄めるという無意味な努力をする。
    • なお、多くのレストランでは、メニューの各料理欄に赤丸と緑丸が付してあるが、インドでは菜食主義者が多い(2006年度の調査では国民の36%)ため、緑色の料理はお肉を(ダシも)使用してないものを一目で判るようにしているそうな。
  5. 蚊について
    • ちょうど、インド訪問した時期が、雨季の終わり頃(気温は日本と同様30℃強であるが、湿度が70%以上で、蒸し風呂状態)であり、ハマダラ蚊(マナリアを媒介))を始めとする蚊に注意するようにとの情報から、日本から蚊取り線香を持参。特に、ゴアでのホテルはロッジ風で、周りが自然一杯という感じであったため、1日中、部屋の中で蚊取り線香を焚いた(部屋には、電気式の蚊取りのようなものがあったが、効果の程が不明で、やはり蚊取り線香が一番か?)。
    • ホテル敷地内を散策する際も、蚊が寄ってくるので、このような場所ではスプレー式の蚊除けが必須か。空港チェックイン・カウンターでの荷物預けの際に、日本から持参したこのスプレーの持込みが駄目と言われるかと思っていたが、どの空港でも特に問題はなかった(但し、担当官によって対応が変わる可能性が高いので要注意)。
    • そう言えば、最初にムンバイで乗車した印象の良くないタクシー(エアコン付き)内で、蚊が飛び回っていたのも、結構気にはなった。インドではマナリア以外に、デング熱の発生も多いが、いずれも蚊に刺されないことが重要であるそうな。
  6. 牛と犬について
    • インドにおいては、牛は、ヒンドゥー教の中で聖なる牛がシバの乗り物であり、クリシュナ神が牛飼いであった等の理由により、神聖視され大切に扱われているが、一方、狂犬病で多くの人が亡くなっていることもあり、野良犬には近寄らないようにとの情報を基に、周りを良く見てみると、流石に牛は多く、道路を悠然と歩いており、車が遠慮がちにクラクションを鳴らしながら走行(因みに、牛を撥ねて殺したら、ドライバーはどうなるのだろうか?)。また、犬も結構見かけるので、犬好きの人であれば、可愛がりたくなると思うが、野良犬と思しき犬も多く、ここはやはり触れないのが賢明と言えよう。因みに、インドでは、ヒンドゥー教徒の多くが牛肉を食べないが、乳製品(牛乳、チーズ等)を採ることに問題はなく、また、スイギュウ(水牛)は神聖視されていないので、その肉を食べてもOKらしい(但し、美味かどうかは不明)。

これ以上書いてインド嫌いの人が多くなっては、インド関係者(と愛好家)から叱られそうだし、本意ではないので、インドに限らず、「海外でのリスク・マネジネントは自分でやるしかない!」、という言葉で締めたい。

お蔭様で、お腹を壊すこともなく、またハマラダ蚊等に刺されることもなく(潜伏期間は過ぎたので、もう大丈夫?)無事帰国したが、残念ながら、今回の訪問でインドが行きたい国の仲間入りをすることはできなかった、ということも付け加えておきたい。なお、今回の訪問では、楽しいこと、ためになることも多々あったが、それは別に機会に、ということにしましょう。

追って、今回の国際会議の会場は、生まれて初めて見たアラビア海に面し、日没が非常に綺麗なところということではあったが、残念ながら、天候の加減でその素晴らしい光景を拝むことは出来なかった。が、その片鱗を以下の写真でご覧を!

(HUGO記)

  • 写真1

  • 写真2

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