ちょっと一言

ブラジルの自動車事情

2007年11月に国際第一委員会のブラジル調査団で、リオ・デ・ジャネイロに行く機会があった。ブラジル訪問は初めてだったのだが、まず驚かされたのは、自動車事情。

ブラジルの自動車事情といえば、まず思い出されるのが、エタノール燃料。街ではフレキシブル・フューエル・ヴィークル(FFV、あるいはFlex車)を多く見かけた。世界的原油高もあり、2007年にブラジルで販売された乗用車の85%がFFVらしい。ブラジルで売られているガソリンには30%のエタノールが混合されている(E30)。また、ガソリンの他に、エタノール95%程度の燃料も売られている。エタノールはさとうきびから作られたカーボンニュートラルな燃料であり、もちろん地球に優しい。これらの燃料の価格を比較すると、E30ガソリンはR$2.6(約150円)、エタノールはR$1.7(約100円)と1.5倍の差があるが、燃費はガソリンの方がよいので、エタノールの方がお得とは一概には言えない。環境意識の高い人はエタノール燃料を入れるだろうし、給油が面倒な人はガソリンを入れるのかもしれない。エタノール燃料の普及は地球環境のためにもよいことだが、エタノール自体のオクタン価が高いことから、エンジンを専用設計すれば圧縮比を高くすることができるなど、エンジン効率を高めることができるポテンシャルがある。まだまだFFVの改良の余地はあると思われる。

FFV以上に驚かされたのは、ブラジル人の運転マナー。全てのドライバーがレースのスタート直後のように運転する。わずかなスペースがあれば、そこに割り込む。それが当たり前だから、割り込まれても誰も怒らない。クルマ同士が接触することもない。彼らはクルマの間隔を1cm単位で判断しているようだ。また、車速も速い。日本なら40km/h制限であろう道路でも、70km/h制限で、もうちょっと広い道路だと90km/hとなる。とにかくみんな運転が上手い。 ブラジル人の誰もがレーシングドライバーになれる気がしてしまう。考えてみれば、自動車レースの最高峰Formula 1で活躍したドライバーにもブラジル人が多い。これまでにエマーソン・フィッティバルディ(1972、1974年ワールドチャンピオン)、ネルソン・ピケ(1981、1983、1987年ワールドチャンピオン)、アイルトン・セナ(1988、1990、1991年ワールドチャンピオン)と3人で8回ものワールドチャンピオンを獲得しているのである。現役選手でも、ルーベンス・バリチェロ、フェリペ・マッサらが活躍中である。 リオ市街の、とあるレストランでは、店内に故アイルトン・セナがレースで使用したヘルメットが展示してあった。日本だったら、厳重にショーケースの中に保管されるだろうが、そのヘルメットは誰でも触ることができる。持ち上げてみると、思ったよりも軽かった(日本製)。そのレストランに同席したブラジルの弁護士は、「全てのブラジル人が今でもセナを愛しているよ」と言っていた。悪夢の事故から14年、セナはブラジルの神になったのかもしれない。その弁護士の言葉は、今回のブラジル訪問で自分にとって最も印象に残った言葉であった。

国際第1委員会(K..S)

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