ちょっと一言
生物の進化と知的財産の不思議な関係
さて、今日は生物の進化と知的財産について考えてみましょう。生物の進化といえばダーウィン先生の進化論が有名ですよね。自然環境の変化に適応した種が生き残り、あるいは、環境の変化に適合した突然変異種が生き残り、「サルはよりサルらしく、ヒトはよりヒトらしく」進化してきたわけです。
カメレオンってご存知ですよね。筆者は学生時代、生物の時間といえば内職をして過ごしていたのでかなり怪しげな話ですが、あの変色する形態も進化の一つですよね、たぶん。天敵から身を守り、獲物に気づかれず待ち構える、まさに環境に適応していると言えます。カメレオンを檻の中に寿司詰めにして真ん中に赤いボールを入れると、ボールの側だけ赤いカメレオンになるのでしょうか。そのままポックリ逝ってしまうと赤いままなのでしょうか。赤いとやっぱり違和感がありますから、天敵(カメレオンに天敵っているの?)にも気づかれそうなものですが、カメレオン君はそんなことこれっぽっちも考えないのでしょうね。
でも、元から赤い生き物もいますよね。鯉とか金魚とか。同じ種なのに、赤い鯉と黒い鯉じゃあ、えらい違いですよね。赤いのなんかすぐ人間に見つかって捕まってしまいそうです。元々は赤い花がたくさん咲いている川とか、赤っぽい石が多い川に棲んでいたのでしょうか。それとも自然の進化ではなく、人間が交配を重ねてどんどん赤くしていったのでしょうか。なんとなく後者のような気がしますね。何しろ黒いバラを作ろうとして心血を注いでいる人がいるぐらいですから。せっかく赤やピンクの綺麗なバラがあるのに、何を好き好んで黒いバラを作るのでしょう。言っときますけど大して売れませんよ。黒いバラなんか作っても。物好きなお金持ちが希少価値を見込んで少しは買ってくれるかもしれませんけど。
そんなこんなで前置きが長くなりましたが、ここからが本題の知的財産です。よーく考えてみると、知的財産権も生物と同様に進化しています。ただし、自然環境ではなく社会環境の変化に適応して進化しているようです。最近は下火ですが、一時ビジネスモデル特許なんぞというものが大流行しましたよね。あれなんかも進化の一つなのでしょう。それまでは数学的手法や人為的取り決めはダメと言っていたのに、突然変異ですよね。不正競争防止法あたりで保護を強化すればよかったのに(知財協のHPにこんなこと書いたら偉い人に怒られそうですが、あくまでも個人的な見解ということで、ご勘弁を)。まあ、卵から生まれるカモノハシ君が哺乳類というのですから、それも有りなのでしょう。
「サルはよりサルらしく、ヒトはよりヒトらしく」という点では、特許自体も変わってきていますよね。たとえばPCTが出来て、世界統一特許が叫ばれ、米国も先発明主義から先願主義へと移行しそうな雲行きですし、いろんな種がビジネスのグローバル化という社会環境の変化によって淘汰されつつあるように感じます。
著作権関係も随分進化しましたね。著作権そのものよりも、著作隣接権の進化が著しいようです。子供の頃には著作隣接権という言葉自体聞いたこともなかったのですが、昔からありましたっけ。いつの頃からあったのか、不勉強な筆者はよく知りませんが、人格権に由来する氏名表示権、同一性保持権のほか、法定の権利として、録音権・録画権、放送権・有線放送権、送信可能化権、譲渡権、貸与権、放送二次使用料を受ける権利、貸しレコードについて報酬を受ける権利などが法制化され、保護されるようになってきたのは、アメーバのような単細胞生物がどんどん進化し、細分化し、「サルはよりサルらしく、ヒトはよりヒトらしく」なってきたのと何処か似ている気がします。また、ここまで細分化してくると、人格権(基を辿れば基本的人権?)に由来するというよりも、人工交配で出来た生物のような権利も混ざっているような気がします。これらの権利は随分と人気のようなので、黒いバラもひょっとしたら、たくさん売れるかもしれませんね。
ところで、著作権は人格権などに由来するので、著作した時点で発生しており、申請や登録の必要もなければ、権利を維持するために費用を支払う必要もありませんが、特許権は公開の代償として独占的あるいは排他的な権利が得られるという人為的な取り決めに基づく権利であるため、申請して審査を受け、維持年金を支払う必要があります。この違いは、哺乳類と爬虫類との違いというよりは、動物と植物ぐらい違う、と思っていたのですが、最近は生物と機械ぐらいの差があるように感じます。自動車や電車、船や飛行機も生物のようにどんどん進化していますが、人為的な進化という点で著作権よりも特許権に似ています。また、自動車を例にあげると、国毎に異なる安全基準や環境基準が開発の負担となっているため、基準や規格の統一が望まれていますが、この点でも、世界統一が検討されている特許と何となく似ていますよね。コンピュータ関係もまたしかりです。ということは、著作権はこれからも生物的に進化し、特許権は機械のように進化していくのでしょうか。興味深いですね。
何だかとりとめもない話になってしまったので、このへんでお開きにしましょう。世の中はどんどん進化しているのに、こんな訳の分からないことを考えている筆者は、全く進化していないどころか、年と共に退化している様です。まるで、カエルになったら無くなってしまうオタマジャクシの尻尾のような気分です。まあ、進化しなくても皆に愛されるカブトガニ君もいるので、せめてそれぐらいにはなりたいですね。
(S.MO)