第12章 最後のオフィスアクション時における検討事項

  • クレームの状況を確認(許可、条件付許可、拒絶)する。
  • オフィスアクションの最終性について確認する。
  • 対応策(応答書、補正書、継続的出願、RCE、審査請求、審判請求、放棄、発明登録制度、応答期間の延長)を選定し、それを実行する。

12.1 最後のオフィスアクションとは

(1)最初のオフィスアクションへの対応で拒絶理由が解消しない場合、審査官は二度目のオフィスアクション(second office action)を発する。

(2)二度目のオフィスアクションは、通常は最終拒絶(final rejection)であり(通知書に明記される)、この後は出願人の手続は様々な制限を受ける。

12.2 通知書受領時の確認事項

12.2.1 クレームの状況確認

 最後のオフィスアクションにおいては、係属中のクレームが、

@そのまま許可されるクレーム(allowed claim)

A形式的な欠陥が解消されれば許可されるクレーム(objected claim)

B実体的な理由で拒絶されるクレーム(rejected claim)

のいずれの状態であるかが通知書中で示される。許可クレームの内容の再確認や、拒絶クレームでの審査官の誤認有無等の検討を行うことが重要である。

12.2.2 オフィスアクションの最終性の確認

 オフィスアクションが最終であるとの審査官の認定に対して、その妥当性を検討し、必要であれば審査官に再考(reconsideration)を請求する。

最後のオフィスアクションの適用事例(MPEP706.07(a)

適用事例

適用の正当性

前回のオフィスアクション時にクレームを補正せずに応答し、前回と同じ理由により拒絶される場合

最後のオフィスアクションは正当

前回のオフィスアクション時にクレームを補正せずに応答し、引例との差異を審査官が認め、新たな引例により拒絶される場合

最後のオフィスアクションは不当

前回のオフィスアクション時にクレームを補正すると共に、引例との差異を主張して応答した。審査官が補正クレームを新たな引例により拒絶する場合

最後のオフィスアクションは正当

親出願において最後のオフィスアクションを受けており、継続出願においてクレーム補正していない場合

最後のオフィスアクションは正当

親出願において最後のオフィスアクションを受け、アドバイザリーアクションにて補正クレームが受け付けられず、継続出願にて受け付けられなかったクレームが審査される場合

最後のオフィスアクションは不当

12.3 最後のオフィスアクションへの対応策

 最後のオフィスアクションへ対応するにあたっては、早期対応をすることが非常に重要である。最後のオフィスアクションの日付から2ケ月以内に応答書(response)を提出すれば、特許許可通知(notice of allowance)またはアドバイザリーアクション(advisory action)を早く受領することができる。

12.3.1 応答書/証拠資料の提出

(1)新たな主張を行う応答書を提出することや、新たな証拠を提出することを検討すべきである。新たな証拠の提出は、規則1.132の宣言書の形態をとる場合が多い。また、インタビューの活用も検討すべきである。

(2)アドバイザリーアクションを受けた場合には、その内容に応じて、継続出願またはRCEを行って出願の係属を確保するか、審判請求をすることを選択できる。

12.3.2 補正によるクレームの減縮や削除

 拒絶されたクレームを減縮して権利化しても良い場合は、補正することを検討する。下記のいずれかの補正が認められる(規則1.116(a))。

・クレームの削除

・過去のオフィスアクションで通知された方式(form)的な補正

・審判の審理のためにより良い形(better form)にする補正

・一見して許可されうる(prima facie allowance)クレームの提出

下記のような補正は一般的に認められない(MPEP714.12)。

・新たなサーチを必要とする補正

・クレームの数を増加する補正

・カテゴリ(方法と物)を変更する補正

12.3.3 継続的出願

(1)アドバイザリーアクションを受けた場合や対応のため時間稼ぎが必要な場合の手続として多用されてきた規則1.53(d)の継続出願(CPA)は、次項の継続審査請求(RCE)の新設により2000年5月28日以前の特許出願にのみ適用されることとなった。さらに、2003年7月14日付けで、特許に関するCPAは廃止された(デザイン特許のCPAは可能)。

(2)非選択クレーム(non-elected claim)について、分割出願をおこなうこともできる。また、許可クレームと拒絶クレームが混在する場合について、拒絶クレームを分割または規則1.53(b)(1)の継続出願でクレームすることもできる。

(3)アドバイザリーアクションによって、補正が新規事項(new matter)を理由に受理されないという通知を受けた場合等、当初明細書で開示されている内容では先行技術との差異が有効に主張できないような場合には、規則1.53(b)(2)のCIP出願をすることができる。

12.3.4 RCE

 132条(b)及び規則1.114のRCEは、CPAに代わる制度として導入された制度であり、新たな特許出願を行うことなく、出願人の申請によって最後のオフィスアクションが取下げられた状態で審査が継続されるものである。1995年6月8日以降の特許出願に適用される。

12.3.5 審判請求 ( notice of appeal )

 審判請求とはUSPTOの審判部(BPAI: Board of Patent Appeal and Interferences)に対して、審査官の拒絶の適否の再検討を請求することである(134条)。審判請求は、拒絶された、現状のクレームそのものを権利化することが必要で、かつ実験成績証明書などによる特許性主張の議論を審査段階で出し尽くした場合に用いるのが普通である。

12.3.6 出願の放棄

 最後のオフィスアクションに応答することなく放置しておけば、出願を放棄することができるが、出願放棄書を提出することでも可(規則1.138)。

12.3.7 発明登録制度の利用 ( Statutory Invention Registration ; SIR )

 発明登録制度とは、特許を受ける権利を放棄する代わりに実質的に同一の発明につき他人による特許取得を阻止することを認める制度である(157条規則1.293)。特許が非公開である場合に検討をすればよい。

12.3.8 応答期間の延長

 最後のオフィスアクションの応答期間は3ヶ月+3ヶ月(延長可能期間)であるが、規則 1.132の宣言書を提出したいが、その準備に時間がかかる場合や、慎重な対応が要求される場合には応答期間が不足する場合もある。このような場合の対処方法として、審判請求を行うことで、さらに対応するための期間を得ることができる(2ヶ月+5ヶ月)。また、継続出願を繰り返し行うことでも時間を稼ぐことができる。但し、費用がかかるため考慮すべきである。

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